暗石の絶望1-2
決戦の朝。ライトの力強い号令と共に、ついに「聖剣奪回計画」が始動しました。「みんな、準備はいいか? 聖剣を取り戻しに行くぞ!」ライトたちが地下基地を後にした直後、司令室に残ったカイラは、モニターに映る異常な波形に目を見開きました。「待って、この信号は……まさか。……しまっ、筒抜けだったなんて!」次の瞬間、地下基地の分厚い扉が音を立てて崩れ去りました。土煙の中から現れたのは、霞忍者と、もう一人の恐るべき腹心、不死忍者でした。「……どうやってここを突き止めたの!?」「くく、抜けているな。音のエレメントメイジウを連れ戻せば、彼女に仕込んだ追跡術式で場所が割れることくらい、予想できたはずだ」霞忍者の言葉にカイラは唇を噛みました。そこへ通信が入ります。「カイラさん! 異変を察知したわ、加勢が必要?」リンヤとヤオヤオの焦った声に対し、カイラは冷静に答えました。「いいえ、あなたたちは本来の任務を続けて。この基地は……もう放棄するわ!」カイラは霞忍者の猛攻を素手で鮮やかに受け流すと、あらかじめ仕掛けておいたトラップを起動しました。シュウウウッ!充満する濃霧。視界がゼロになった隙に、カイラは霞忍者の背後へ回り込み、その肩に手をかけました。「捕まえたわ……!」しかし、その瞬間、無数の青白い手が霧の中から伸び、カイラの動きを封じました。「……捕まったのは、貴様の方だ。大人しく投降しろ」不死忍者の冷徹な声が響きます。「……投降? ふざけないで。みんなが命がけで戦っているのに、私が諦める理由なんてどこにもないわ!」「……死ねと命じられれば即座に命が尽きる身で、恐怖はないのか?」「怖くないわ。私たちはエレメントの継承者であり、それ以前に……心を持った人間だもの」一瞬、不死忍者の動きが止まりました。その言葉に、わずかな動揺が走ったようです。「……今よ!」カイラはその隙を逃さず、瞬時にテレポートでその場から脱出しました。「姉さん……」霞忍者が不死忍者を見やると、彼女はすぐに冷徹な表情を取り戻しました。「……追うわよ。逃がしはしない」ライトたちが核雷の本拠地へと足を踏み入れると、そこには異様なまでの静寂が広がっていました。昨日までの喧騒が嘘のように、人っ子一人いないゴーストタウンと化した都市。しかし、城の正門には、洗脳されたままのチーランたちが、冷たい瞳で侵入者を待ち構えていました。「……あいつらは私に任せて」メイジウが聖剣を握りしめ、前へ出ます。「メイジウ、一人で大丈夫か?」ライトが案じると、彼女は力強く頷きました。「平気よ。私には、心強いバックアップがいるもの」その時、ヤオヤオがおずおずと口を開きました。「あ……あの、みんな……一つ伝えておくことが……」「ああもう、まどろっこしいな! 俺が言うよ。カイラさんが敵に狙われて、地下基地が潰された。今は支援を受けられない状態だ」リンヤがヤオヤオの言葉を遮って、衝撃の事実を告げました。「なんですって!? 誰に狙われたの?」ライヤの問いに、リンヤは肩をすくめます。「霞と不死だ。カイラさんは『自分のことはいいから任務を続けろ』ってさ」メイジウは一瞬表情を曇らせましたが、すぐに決意を固めました。「……分かったわ。なら、ヤオヤオ、リンヤ、私と一緒に正面から突撃しましょう。説得を試みるけれど、もし無理なら力ずくで押し通るわよ」「了解、愛しのメイジウさんの仰せのままに∼!」「……気色悪い」リンヤの軽口を無情に切り捨て、メイジウは門へと歩き出します。ヤオヤオも小さな声で「……頑張る」と後に続きました。「……お兄ちゃん、私たちは裏道から回り込みましょう」ライヤの提案に、ライトは頷きました。「ああ、行こう」メイジウは、かつての仲間であるチーランの前に歩み寄り、必死の面持ちで語りかけました。「チーラン、聞いて! 私は裏切ったわけじゃないの。ただ……」「裏切りでなければ何だというの? 人殺しの悪魔ライトに加担するなんて!」「違うわ、みんな! 誤解しているの。私もライトのことを誤解していた。……私たちの記憶は書き換えられている。真犯人は彼じゃない!」しかし、チーランの瞳には冷ややかな蔑みしかありませんでした。「ふん、あなたまで彼に感化されたというの? 失望したわ、メイジウ」「そんな……そういう意味じゃなくて……!」業を煮やしたリンヤが、メイジウの言葉を遮って前に出ました。「ああもう! こいつらに理屈をこねても無駄だって。言葉より先に手を出した方が早いぜ!」「リンヤ、待って!」ヤオヤオが止める間もなく、リンヤは煙幕を撒き散らしながら突撃しました。「煙霧!」「風!」アーランが鋭く風を操り、リンヤを地面へと吹き飛ばします。「……へっ、面白くなってきたじゃねえか。どっちが上か、はっきりさせてやるよ!」チーランたちも武器を構え、一斉に襲いかかってきます。「……説明は無理みたいね。やるしかないわ!」メイジウも覚悟を決めました。乱戦の中、ヤオヤオはビンチェンとチーディの二人を同時に相手取ることになりました。メイジウと視線を交わしたヤオヤオは、静かに精神を集中させます。「……ごめんなさい。でも、通らせてもらうね。時間停止!」カチリ、と世界の歯車が止まりました。色を失った世界の中で、動けるのはヤオヤオと、その加護を受けた仲間たちだけ。ヤオヤオはその隙にチーディとビンチェンの懐へ飛び込み、無力化のための打撃を打ち込みます。一方、メイジウは静止した世界の中で、因縁のチーランと対峙しました。ライトとライヤは、静まり返った城内をひた走っていました。しかし、玉座の間へと続く巨大な廊下の突き当たりで、一人の男が二人の前に立ちはだかりました。「アンガン……!」ライヤはその姿を見て、ライトの前に立ちはだかりました。「お兄ちゃん、ここは私に任せて先に行って! 奪われた聖剣を取り戻して!」「……分かった。頼んだぞ!」ライトが走り去るのを横目に、アンガンは冷徹な瞳でライヤを見つめました。「……久しぶりだな、ライヤ。さあ、始めようか」「ふん、受けて立つわ! あの日の借りを返してあげる!」ライヤが黄金の聖剣を構え、アンガンと対峙します。光と闇のエレメントが、激しくぶつかり合おうとしていました。




