炎の名を騙る者1-2
――場面は道場へ。「師匠?」ライトが静かに声をかける。「ウーミエのことを教えてほしい」「彼は一体何者なんだ?」「どうして元素を吸収できる?」師匠の表情が、はっきりと曇った。「……ウーミエか」一瞬、言葉を探すように視線を逸らす。「それは……話せば長い」「どこから話せばいいのか……」ライトが身を乗り出す。「じゃあ、要点だけでいい!」「核心だけ教えてくれればいいんだ!」師匠は口を開く。「私は……」そのとき。「何の話?」ジェンシャンが歩いてくる。ライトは振り返る。「ウーミエのことだ」「なぜ元素を吸収できるのか」「それに“世界を創り直す”ってどういう意味なのか」「奴の計画は絶対に単純じゃない」「きっとまた街を狙う」ジェンシャンは腕を組む。「でもさ」「ウーミエは今まで一度も姿を見せなかった」「それなのに、ライトの聖剣が覚醒した直後に現れた」「偶然かな?」ライトは眉をひそめる。「分からない」「でも、放っておけない」「俺はこの街の忍者だ」「必ず止める」ジェンシャンは少し冷静な声で言う。「ライト、今は証拠がない」「君の推測だけじゃ、動けないよ」ライトの瞳が鋭く光る。「……なら、俺が調べる」「ウーミエの正体も、計画も」「全部、突き止める」空気が張り詰める。師匠はその様子を静かに見つめていた。「……分かったよ」ジェンシャンが肩をすくめる。
そのとき、部屋の扉が開く。チーランが出てきた。「どうしたの?」「またその話?」ライトが振り返る。「ウーミエのことだ」チーランは頭をかく。「まだ言ってるの?」「もう一週間経ったよ?」「焦らないで。まずはその短気をどうにかしなさい」「短気って何だよ」ライトは眉をひそめる。「俺は街を守る忍者だ」「真剣になるのは当然だろ」チーランはため息をつく。「真剣っていうのはね」「がむしゃらに動くことじゃない」「待つべきときに待つ」「真実が浮かび上がるのを見逃さない」「それが本当の真剣さ」ライトは唇を噛む。「……分かったよ」「俺、訓練行く」苛立った(いらだった)様子で部屋を出る。「待って」チーランが後を追う。「私も行く」「なんでだよ」「一緒に鍛えるの」ライトは少し黙り込み、やがて観念する。「……分かったよ」――訓練場。乾いた地面に風が吹き抜ける。チーランが構える。「準備はいい? ライト」「ああ」空気が張り詰める。「――刀下無眼、水!(すい)」水が刃のように走る。ライトは横へ滑るように回避。反転しながら叫ぶ。
「源力!」緑の光が放たれる。チーランは即座に水を球状に形成。源力を包み込み、回転させる。「そのまま――返す!」水の盾が弾け、包まれた源力がそのままライトへ跳ね返る。ライトは慌てない。後方へ宙返りし、水弾を回避。そのまま跳び上がり、チーランへ向けて源力を放つ。しかし―― 爆発音。水煙が立ちこめたかと思うと、チーランの姿が消えている。「……っ」ライトは周囲を見渡す。警戒を強めた瞬間―― 遠方から、圧倒的な水圧が迫る。「水砲……!?」「まずい!」だが、そのとき気づく。足が動かない。腕も、引けない。視線を落とすと―― 水鎖が手足を絡め取っていた。「しまっ……!」次の瞬間。巨大な水砲が直撃。全身を叩きつけられ、ライトは地面に転がる。「……くっ」びしょ濡れのまま、空を仰ぐ。「参った」「もう一回だ」チーランが歩み寄る。「前よりはいい」「前みたいに力任せじゃない」「ちゃんと観察してた」ライトは起き上がる。「でも遅かっただろ」「そうね」チーランは頷く。「考える時間が増えた分、動きが鈍った」
「でも焦らないで」「何かを身につけるって、すぐには馴染まないもの」ライトは小さく笑う。「……分かってる」そのとき。チーランがふと思い出したように言う。「そうだ、時間だ」「何の?」「波のイルカを出す時間」ライトが目を丸くする。「え?」「毎日ちゃんと外に出してるの」「ずっと閉じ込めてたら可哀想でしょ?」水面が揺らぎ、青い光が集まり始める。「……ところで、どうやって出すんだ?」ライトが首をかしげる。チーランは当然のように答える。「簡単よ」「核心に、対応する元素を流し込むだけ」「そうすれば、核心は擬態化する」「へえ……」ライトは頷く。「俺もやってみる」掌に源力核心を乗せる。静かに目を閉じ、源力を流し込む。――次の瞬間。核心がふわりと浮かび上がる。光が形を成し、小さな龍へと変わった。「……え?」ライトが目を丸くする。「かわいい……!」チーランが勢いよく抱きつく。「ちょ、ちょっと待て!」「それ、俺の核心だぞ!」「核心って呼び方、雑すぎ」「ちゃんと名前つけなさいよ」ライトは腕を組む。「名前か……」少し考え、「……源力の龍」
チーランがじっと見る。「そのまんまじゃない」「いいだろ別に!」そのとき。「ライト!」息を切らした声。ジェンシャンが駆け込んでくる。「どうした?」ライトが振り向く。ジェンシャンの顔は青ざめていた。「街が襲われてる」空気が凍りつく。「……何だって?」「さっき通報が入った」ジェンシャンが険しい顔で言う。「街のあちこちが破壊されてるらしい」ライトが振り返る。「元素か?」「分からない」短い沈黙。チーランが一歩前に出る。「元素かどうかは関係ない」「守る。それだけ」「行くよ、ライト」「ああ」――現場。到着した瞬間、視界に広がったのは―― 燃え盛る街。炎が空を染め、黒煙が立ち上る。「……なんでこんなことに」ライトが息を呑む。チーランは即座に判断する。「ライト、生存者を探して!」「私は消火する!」「分かった!」チーランは両手を合わせ、深く息を吸う。「……水」空が曇る。次の瞬間、豪雨が降り始めた。激しい雨が炎を押し潰し、次々と火を消していく。やがて火は鎮まり、煙だけが残った。
その中心に立っていたのは―― 赤い忍装束の男。チーランの瞳が大きく揺れる。「……兄さん?」信じられないという表情。それでも走り寄る。「兄さん、どうして……?」赤い忍者――チ一ディが振り向く。「……あれ?」「チーラン?」困惑した目。「俺……どうしてここにいる?」チーランが肩を掴む。「街が燃えてたのよ!」「兄さんがやったの?」チ一ディは頭を押さえる。「分からない……」「意識が、途切れていて……」「制御を失ったのかもしれない」「……誰かに、操られていた気がする」まだ地面には、かすかな熱が残っていた。「暴走……?」チーランは一瞬言葉を失うが、すぐに首を振った。「……無事ならよかった」「それより、修行はどうだったの?」「炎の聖剣は手に入れた?」




