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21本の聖剣の物語  作者: ジャスティン
第1期
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第四章:炎の名を騙る者1-1

乾ききった砂漠。ここでは水を得ることさえ困難で、普通の人間が足を踏み入れることなどまずない。そんな不毛の地に―― ボロボロの忍者服をまとった一人の男が、古びた喫茶店の扉を押し開けた。ギィ……と軋む音(きしむおと)。店内に入った瞬間、彼は違和感を覚える。――静かすぎる。人の気配が、まるでない。だが。「いらっしゃいませ、お客様」奥から声がした。「こんな暑い日です。冷たい飲み物でもいかがですか?」男はゆっくりと視線を向ける。「いらない」短く答え、続けた。「それより……ここに“怪しい奴”が来なかったか?」店主はわずかに間を置く。「怪しい人? さあ……どこでそんな話を?」男の目が鋭く光る。「俺はそいつを追っている」「各地で人を襲い、破壊を繰り返している」「警告はした。だが聞かなかった」「なら――容赦はしない」店主は興味深そうに笑う。「へえ……その相手、強いんですか?」男は鼻で笑った。「大したことはない」「本当に強ければ、こんな鳥も寄りつかない場所に逃げ込まないだろう?」「随分と自信家ですね」「何だ?」男の声が低くなる。「まさか民を傷つける者をかばうつもりか?」店主は肩をすくめる。「いえいえ、ただの世間話です」一拍の沈黙。そして店主は静かに問い返した。

「あなたが言う“それ”は……」「元素力のことですか?」「そうだ」チ一ディは低く答えた。「奴は、見た者の姿なら誰にでも化けられる」「一度でも視界に入った人間なら、完璧に再現する」店主は微笑む。「ですが、この店にはあなたの探している人物はいませんよ。他を当たってみては?」チ一ディの瞳が鋭く光る。「探す必要はない」空気が張り詰める。「もう見つけた」「……どういう意味です?」一歩、踏み出す。「遠くにいると思わせておいて――」「実は、目の前にいる」沈黙。そして、店主の口元がゆっくり歪む。「はは……」声色が変わる。「さすが炎の師だね。気づくのが早い」チ一ディは言い放つ。「無駄話は終わりだ」「姿を現せ―― 変貌元素(へんぼう)」店主の身体がぐにゃりと歪む。皮膚が波打ち、輪郭が崩れ、別の姿へと溶けていく。「いやぁ、露見(ろけん)しちゃったか」「どうやって気づいた?」チ一ディの拳が震える。「この周辺の気配が消えている」「お前が……皆殺しにしたな」変貌元素は楽しげに笑う。「だって面白いじゃないか」「新鮮な血液」「悲鳴」「命が消える瞬間の顔」「何度見ても飽きない」「……狂っている」次の瞬間。

変貌元素の蹴りが炸裂。チ一ディは店の外へ吹き飛ばされ、砂漠に叩きつけられる。変貌元素は扉の前に立ち、肩を鳴らす。「勘違いするなよ?」「逃げていたのは怖いからじゃない」冷たい笑み。「お前が、俺が本気を出す価値もないだけだ」「……ちっ、よく喋る」チ一ディはゆっくりと立ち上がる。掌に現れる、赤く脈動する核。「目を覚ませ――烈火の獅子」「抜剣!!」炎が爆ぜ、砂漠の空気が震える。変貌元素は楽しげに首を傾げた。「お、やっと本気?」チ一ディは踏み込む。「炎ノ斬撃!」炎を纏った一閃が走る。だが―― 変貌元素の身体が瞬時に崩れ、蛇へと変貌。「なにっ!?」赤い鱗がチ一ディの身体に巻きつく。「はは、締め上げてやるよ」「息、できるかな?」チ一ディは歯を食いしばる。「炎ノ噴射!」至近距離で炎を噴き上げる。「熱っ!? 熱い熱い!」蛇が弾け飛び、地面に落ちる。だが次の瞬間―― 巨大なゴリラへと変貌。「今度はこれだ!」拳が振り下ろされる。「炎ノ爆破!」炎の文字が描かれ、爆炎が炸裂。砂煙が立ちこめる。「……どこだ」声が背後から響く。「後ろだ」「炎獅召喚!(えんししょうかん)」烈火の獅子(れっかのしし)が咆哮し、無数の火球が降り注ぐ。

「ふん、ただの火の玉だろ?」「火焰!」火が空を裂く。だが変貌元素は軽やかにかわす。「当たらないねぇ」「これじゃつまらない」にやり、と笑う。「ちょっと借りるよ」「君の“火”を」チ一ディは構わず攻撃を続ける。しかし次の瞬間。放たれた炎が、空中で揺らぎ―― 無数の赤い蝶へと変わる。炎の蝶は静かに舞い上がり、そして跡形もなく消えた。チ一ディの目が見開かれる。「……何だと」変貌元素は楽しそうに両手を広げる。「俺は何にでもなれる」「炎だって例外じゃない」砂漠の熱気が、不気味に揺らいだ。チ一ディは眉をひそめる。「……信じられない」変貌元素は余裕の笑みを浮かべる。「言っただろう?」「俺は誰にでもなれる」「人間だけじゃない。自然だって俺の一部だ」チ一ディは剣を握り直す。「それがどうした」次の瞬間―― 変貌元素は巨大な熊へと変貌。「力比べといこうか!」鋭い腕でチ一ディを掴み、そのまま喫茶店の中へ投げ飛ばす。壁が砕け、砂煙が舞い上がる。しかし。瓦礫の中から炎が噴き上がる。チ一ディが跳び出した。「俺はそんな簡単に倒れない!」「炎獅召喚!(えんししょうかん)」烈火の獅子が再び顕現する。変貌元素は冷ややかに言い放つ。「無駄だ」

その身体が灰色へと変わる。石。完全な石像へと変貌。炎がぶつかっても、焼け焦げるだけ。チ一ディは一瞬の隙を見逃さない。「炎ノ爆破!」爆炎が地面を砕き、無数の石片が舞い上がる。視界が塞がれる。チ一ディは一気に踏み込み、剣を振り下ろす。「はあああっ!」一閃。石の身体が裂ける。「熱い! 熱い!」変貌元素が苦悶(くもん)の声を上げる。チ一ディは追撃に出る。だが―― 石片が空中で組み替わる。次の瞬間、巨大な鷲へと変貌。鋭い爪がチ一ディを掴む。「空はどうだ?」一気に上空へ舞い上がり―― 容赦なく地面へ叩き落とす。轟音。砂漠に爆発のような衝撃が走る。炎が消える。チ一ディの戦闘形態(せんとうけいたい)が解除され、身体が地面に横たわる。意識は闇へと沈む。――十分後。目を覚ますと、チ一ディは木に縛りつけられていた。目の前に立つ影。それは―― チ一ディと、まったく同じ顔をしていた。「どうだ?」目の前に立つ“もう一人のチ一ディ”が、にやりと笑う。「そっくりだろ?」チ一ディは縛られたまま睨みつける。「俺の姿を使って、他人を騙す気か」「騙す?」変貌元素は肩をすくめる。「違うよ。“成り代わる”んだ」「あと足りないのは――」顔を近づける。

「名前だ」「炎の師の“名”を教えろ」「素直に言えば、楽にしてやる」チ一ディは歯を食いしばる。「……言うわけがない」変貌元素の目が冷たく光る。次の瞬間、その身体が歪み―― 狼へと変貌。鋭い牙が喉元に迫る。「言え」「その名を」「絶対に言わない」数秒の沈黙。やがて狼は元の姿に戻る。「……つまらないな」「殴っても吐かないなら」背を向ける。「直接、街へ行こう」「破壊すれば、自然と“炎の師”の名は広まる」チ一ディの目が見開かれる。「街だと……?」「そこは……ライトの守る場所だ」「行かせるか……!」縄を引きちぎろうとするが、力が入らない。変貌元素は棒を拾い上げる。「安心しろ」鈍い衝撃。視界が揺れる。「……っ」意識が闇に落ちる。変貌元素は地面に落ちた聖剣を拾い上げる。「悪くない剣だ」「ちゃんと“使って”やるよ」「壊しはしないさ」口元が歪む。「お前の大事な宝物だからな」偽りの炎が、砂漠の向こう―― 街へ向かって歩き出した。


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