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第四話 あの場所へ……。

第四話を投稿します!!よろしくお願いします!!

『便利屋ユイ』

雑居ビルの奥では、今日も唯と遥の二人が日夜仕事に奮闘している。

「次は仕事ないや。やった、今日一日フリーだ、遥。」

「ふぅ、久々の空きですね……。最近舞台の仕事ばっかりだったから大変だったんですよー。帰ったら帰ったで夢ちゃんの塾もあるし。」


「もはやここ便利屋じゃなくて養成所兼学習塾みたいなもんだね。あはは。」


先日の公演から人気俳優に熱烈オファーを受けた二人は連日劇の公演に明け暮れていた。

そこから空いた時間で生徒達の指導をする二人。


予知夢の少女、夢ちゃんの個別指導から始まった塾はなかなかの人気だった。

難関私大を出ている遥の指導はもちろん、唯の能力:智を使った生徒の弱点の秒速理解で“分からないを分からないままにしない“をモットーに今や地元の小中学生からなかなかの人気のある塾になっていた。


「唯さんって、昔学校の先生とかやってたんですか?」

「私のことはいいんだよ。」


教えてくれたって良いじゃないですかーとむくれる遥をよそにコーヒーを飲む唯。

その時、ガチャと扉が開いた。


「すいません。ここ、便利屋ユイであってますか?」


「ああ、あってるよ。」

「お客さんですか?今準備しますね!!」


遥は手慣れた手つきで湯飲みを並べお茶を注ぐ。

最近は客の入りが盛んなため、接客がスムーズになっている。

依頼人は促されるまま席に座り、荷物を置く。年齢は十代後半から二十代前半と言ったところだろうか。ほんわかとした雰囲気の中にどこかほの暗い印象を感じる。


「霧生小夜と申します。」


淡い色のカーディガンにワンピース。どこにでもいそうな少しおとなしめの格好。

だが、しかしどこか流行からはずれている。

数年ほど、時間が止まっているような違和感を覚える不思議な人だ。。


「私は久遠唯。ここの代表だ。で、こっちは助手の遥。それで要件ってのは?」

「ここって、幅広く依頼を受けてくれるって聞いたんですけど本当ですか?」


「ああ。家庭環境から不良の喧嘩の仲裁までなんでもござれだ。」

「……探して欲しい物があるんです。」


頭を下げる女性。


「でもそれって本人たちで探した方が見つかるんじゃ……。」

「うん。だが、話は聞いてみよう。」


遥を宥め、

唯はコーヒーを机に置き、椅子に深く腰を掛ける。


「で、場所は?」

「……ここから少し離れた土地です。たしか学校があったような……。すいません。何分昔の記憶でして、」


話を整理しネットでおおまかに調べてみたところ、そこはS県の片田舎にある高校で、今は廃校になっており今は使う目的もないような荒涼とした空き地が広がっている。


「なるほど、そこに埋めたもののありかが分からない、と。」


「おそらくそうだと思います。」


「S県なら大した距離じゃない。調査開始だ。遥。」

「はい!!」


唯はコートに着替え部屋を出た。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


三人は荒れ果てた廃校跡に到着した。

鬱蒼と雑草が茂っており、崩れかけた校舎の壁やさびた鉄柵がかつての面影を残していた。


「それにしても、本当に何もないですね。家とかも少ないし」

「ああ、手がかりは全くだな。どこから行こうかな……。」


先ほど地元の自治体に許可を取りに行った時も、そういう類いの情報は全く取れなかった。ほぼ手探り状態だ。


役所の人が言うには、この学校は約五年ほど前に統廃合で姿を消した高校らしい。

駅から約四十分ほどとアクセスも悪く、そもそもこの土地自体が都心から離れている。


ダメ元で聞いてみたがやはり、

タイムカプセルのようなものがあったかはちょっと分かりかねますね……、と言われてしまった。


「いつものパンチでドカーン!!ってやったらいいじゃないですか!!」

「そんなことしたら埋めた物ごと壊れるでしょ。それにあれは結構気力を使うんだ。もう少し特定しないと厳しいよ。小夜さん。なにか見たところ手がかりはない?」


「はい……。たしか、ウチの学校には特別な地下道があったんです。確かこの辺。」

「地下か……。」


「どうかしたんですか?」


「あ、いや、なんか懐かしいなと思ってね。ウチの学校にもそういうのがあって。」


手分けして、草むらをかき分け三十分ほどそのありかをさがした。

しばらくして、あった!!と言う声。遥だ。


見つけたのは錆び付いた地下へと続く小さな扉だった。

小夜の手元にはカギ。

「カギだけは持ってたんです。……合ってるかどうか。」


カチッ。と言う音。


「やった!!」


この下です、そう言って三人は地下道を進んでいく。


「へぇ、結構広いんですね。」

「もう少しです。」


歩いて行くと、そこには地下通路の薄汚れた感触とはほど遠い光景が待ち構えていた。


「お連れしました。真白様。」


奥からは男。

白のロングコート。

その下には、同じく白で統一されたスリーピースのスーツ。

無駄のないシルエットが、細身の体をより際立たせている。


ネクタイだけが黒。

その一点だけが、妙に強い存在感を放っていた。


まるで――

“白を汚さないために、あえて黒を置いた”かのように。


「やあ、ユイさん。今は久遠唯と名乗っているのかな?」

「……真白!!」


「すまないね。彼女には芝居を演技をして貰った。彼女もまた、君と同じ“被害者”なんだよ。よくやってくれた。ありがとう。小夜。」


小夜さんは振り返らず通路の奥に消えていった。


「お連れの方も居るようだ。初めまして。僕の名前は樒真白。そこのユイさんの同級生だよ。」

「え、ちょー―え!?」


目の前に立っている男をまじまじと見つめる。


白のロングコートに整いすぎた顔立ち、

どこか現実味のないその姿に見覚えがあった。

「嘘でしょ……?」


今やテレビや雑誌で見ない日はない。

二十代にして数々の賞を総なめにした天才科学者。

樒真白、その人だった。


「ははは、僕も有名になったものだ。」

「なんの用だ!!仲間をクラスメートを殺しておいたお前がよく私の前に顔を出せたな。」


「今日は大事な話をしようと思ってね。懐かしさを感じないか?ウチの高校にもあっただろ。地下室。その一部を僕の能力で改造させてもらったよ」


「お前の力じゃないだろ!!」

「それは君も同じじゃないか。人から盗み踏み台にする卑しい『ゴミ能力』仲間。だろ?」

「お前と同じにするな、私は託されて……!!」

「ははは、詭弁だね。では、本題と行こう」


真白が手もとから取り出したのはいくつかの記事。ぱさっと唯の前の机に落ちる。

「――この記事、君だろ?」

街で大立ち回りをする記事。ケーキ会場で叫ぶ記事。そして先日の舞台まで撮られている。


「友達の能力を使って人助けをするのはいいが、僕らは公には存在しないことになっているんだ。目立つのもほどほどにね。やるなら僕みたいに、裏でこっそりと、だよ?」


「おまえが人助けだと?皆を殺したお前が!!」


「誤解だよ。あれは必要な過程だった。もとより僕らはイレギュラー。政府は僕らを助ける気なんてさらさら無かったのさ。君も経験しただろ?あの惨状を。」


「最近身の回りで奇妙な事件が多いと思わないか?」


「まさか……。」


「――この世界は侵食が始まっている。いや。もう変わっていると言った方が良いかな。僕たちが経験したアレが、もうこの現実でも起こっているのだよ。いやあ、楽しみだ」


その瞬間、机が爆ぜた。

すさまじい衝撃音と共に飛び散る木片。

飛びかかるユイ。


「お前はここで始末する!!」


隕石をも破壊する突きが真白に直撃、

音を立てて木っ端みじんになった。


「ハァ……ハァ……」

パチパチパチと拍手をする音。

影からもう一人の真白が現れた。


「スピード、パワー、申し分ない。素晴らしいよ。久遠唯。」


「早坂陽一の能力。能力:体と言ったところか。全身を活性化させ規格外のパワーを生み出す。すごいね。」

「前に見たのは少し足が速くなるとかその程度じゃなかった?。使い手が凡庸だったからかな?まあスポーツ推薦枠の脳筋だしね?」

ははは、と笑う。


「貴様!!」

唯の拳はさらに威力を増す。


さらにもう一人の男が現れた。背後から机の影から、さらに数を増す真白。


「鍛錬か?適正か?なぜ君はそこまでの強さを手に入れたんだ?今までに無いサンプルだ。面白い。気が変わった。君は私の研究室に招待しよう。」


「なあ、もう一人の能力は使わないのかい?僕が見逃した生徒は三人。君と陽一とあともう一人いるはずだろ?」


「望み通り、使ってやるさ。」

智:発動。状況走査、能力推察、分身。……!?声、背格好、微弱誤差。

複数能力を確認。検索。三件適合。



唯は手持ちの水を真白の顔に投げつけた。

バシャ。真白の顔が剥がれていく。それは別人の顔をしていた。


遠くから声が聞こえる。


「やっぱバレちゃったかー。さすが、学年一の秀才、文月智花の能力だ。自信作だったのに。僕そっくり人間ラジコン。あー、いくらでも壊して良いよ。データが取れるから。頑張って―!!」


唯が必死に戦っている横で悠長に作り方を話しはじめる。


「生け贄を用意して、能力:絵で着色、力で強くして、あと操をつかって操れば完成!!ただ水が弱点なんだよねーこれ。着色がすぐ剥げちゃって。。」


「ちなみにね、背景と同じ色を使うことでこうやって……」


「がっ!!」


唯の背後から拳が飛ぶ。


「偽物だけど強さは本物だよ?ほい、最大強化。君も見たことある姿になるよー。」


偽物の真白の全身が肥大化していく。眼は血走り、骨格はガタガタ。無理矢理肥大化された筋肉はみるも無残な色に変色していた。

全てがあのかつて街で見た怪物の姿に変身していく。途端、景色が崩れていく。そこにあった理科室はただの古びた地下通路と化してしまった。


「唯さん!!大量の真白さんが、あの時の大男に……」

「逃げるぞ!!」

「え、ちょっと、仕事は?」

「交渉決裂。仕事は終了だ。まったく、困った客だ!!」

襲い掛かる真白をぶっ飛ばし、困惑する遥を手を連れ、飛び出そうとする。


「逃げられると思うかい?」


ガタン。頭を抱える遥。


「ゆ、唯さん……。意識が……。『真白様に従ってください』」

「貴様!!」


真白は余裕そうに語る。


「もう一人の最強の能力、統だ。遥はこれで僕の味方、これでチェックメイト。君には私の……」


遥の様子がおかしい。まさか……。唯は焦燥を露わにする。


「『真白』、ま、まし、あ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」


「何だ……?制御が……。」

「まずい!!落ち着け、遥!!」


ドロッ。叫ぶ遥から何か液体のような物が流出している。それは闇。黒より昏い闇。その闇はやがて通路全体を埋め尽くすようになった。


その闇からは無数の気配。眼のようなものがあふれ出す。蟲のような悍ましい数が闇の中で蠢いている。


『出られる。出られる出られる出られる出られる出られる出られる出られる出られる。』

その中から湧き出す、“何か”。闇に引きずり込まれる強化人間達。魑魅魍魎が跋扈する。世にも恐ろしい光景がここにはあった。


そして一時間後、残ったのは遥と唯のみ。


「ゆ、唯さん?私は何を……?」


遥が眼を空けたとき、その前には息も絶え絶えの唯が手を差し伸べている。

帰ろう。そう言って二人はその場を後にするのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――――

ある研究所にて。

ここは光が届かぬ常闇の伏魔殿。

男は呟く。


「彼女が特異点……か。ふふふ、面白い……。」


ここまで読んでいただきありがとうございます。

ここから大きく物語が動きます。次は唯と真白の過去編を書こうと思っています。


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