第二話 お菓子の家
第二話を投稿します!!よろしくお願いします!!
『便利屋ユイ』事務所。
久遠唯と佐伯遙はぼーっとテレビを見ていた。
垂れ流しにしているニュース番組から、アナウンサーの声が聞こえる。
『世界的スイーツ職人 砂城蜜也のお菓子の家。今日オープンしました!!連日大盛況で……』
「お菓子の家ですって!!結構近くに有るみたいですね……唯さん、行ってみませんか?」
「いや虫が湧くだけ……」久遠唯はだるそうにつぶやく。
「そういう現実的なことは良いんですって。さ、ほら。支度支度!!」
えーという唯の手を引っ張るようにさっさと事務所を出た。
お菓子の城は東京郊外にある運動公園のサッカー場をを丸々貸し切って行われた期間限定のイベントだ。
それも世界的パティシエ―ルが主催しているということでそれを見に超満員の人だかりだった。
「うはーー!!すごいです!!壁はクッキーで窓はチョコ!!完成度半端ねー!!え、食べていいんですか!?やば!!美味しー―!!」
遥は目を輝かせて駆け回りながら、カシャカシャ写真を撮っている。
まるで子供のようだ。
唯は手に取ったクッキーを軽くかじりながら、
「……悪くない、」
と小さく呟く。
「なんですか、悪くないって!!もっと楽しみましょうよ!!」
甘い空気と人々の笑顔に包まれ、二人はしばし日常を忘れた。
お菓子の城の片隅。観客がひしめく中で、誰も近寄らない不思議な空気の場所がある。
そこには少し変わったおじさんがブツブツ独り言を言いながらお菓子をつまんでいた。
「違う……こんなのじゃない……私がさがしている至高は……。」
上質なスーツに身を包み背筋を伸ばした姿は一目でただ者じゃないような気がする。客の歓声に耳を貸さず、ただ自分の理想の味を求めるその目は狂気と情熱が入り交じっていた。
「ねえ!!こっちも行ってみましょうよ!!」
遥はカシャカシャ写真を撮りながらそこへ近づく。
「ん~~!!美味しー―!!」
「まだ食べるの……?」
「当たり前です!!食べ放題撮り放題ですよ!?どっちも満たすのがプロってもんです!!」
「なんのプロだよ……。」
「ほう……記録と味を同時に満たすとは、なかなか珍しい才能だな。」
「ほら!!このおじさんだって褒めてくれるよ!!ね、おじさん!!」
「お前達……これ、美味いか?」
「当たり前じゃないですか!!ね、唯さん!!」
「この道三十年、俺は甘味を求めてきた。賞もこれでもかというほど取ってきた。でも、俺にはこれはまだ足りぬ。求める至高の味にまだほど遠い。違う……まだ違う。完璧じゃないんだ……。」
「このおじさんちょっとやばいです……。行きましょう?」
遥が離れようとしたその瞬間。
ぐらぐらぐらぐら……
「地震ですか!?」
「ぜ、全員城から出てください!!」
城内は大パニック。逃げ惑う人々。
「何が起きてるんだ……?」
唯と遥はようやく外に出て様子を見ると。
城が巨大化している。今までのそれが大きめのアパートレベルだとすればこれは競技場全体を覆い尽くす巨大要塞だった。ワッフルの壁が脈打つように上昇し、チョコの塔は天高く伸び続けている。頂上には先ほどの変な男の姿。
「何ですかあれ!?この前みたいな超能力者ですか!?」
遥の脳裏には予知夢の少女。ここのところ変な事件が続いていると思った。
「ちょっとやばいかもな……」唯は城を見据える。
男は吠える。
「まだまだこんなもんじゃない!!私はもっとやれるはずだ!!」
お菓子の城はさらに肥大化していく。
砲台と化したチョコが何十門もこちらを威嚇している。
ドドドドドドドドドドドドド!!
クリームの大砲。
「きゃあああああああ!!!」
「危ない!!」
唯は拳を構える。
ズドドドドドドドド!!
目にもとまらぬ早さで拳を繰り出す。その空圧で全ての弾を打ち落とす。
クリームが上空で爆散する。
「ふう……」
シュイイイイイイイイン。
クリームが再び装填される。
周りにはまだ避難している人々。遥も居る。
「これじゃらちがあかない……。」
「ここで待ってて。」
唯は精神を研ぎ澄ませる。――能力:智 発動。
原因推察、標的確認
元凶確率90パーセント以上。原因 向上心による飢え。
能力:体 同時発動 最短経路を検索。
「いくぞ。料理開始だ」
唯はファイティングスタイルを構える。
ドンドンドンドンドンドン!!!!
クリーム砲が容赦無く飛んでくる。
車ぐらいある巨大な弾をはるか上空に打ち上げると城に急接近。
すかさず城の防衛機構が反応。
チョコの盾が床からせり上がる。
ドガァン!!ドガァン!!
それを物ともせず破壊。破壊されたチョコはまたもや上空に打ち上がる。
「まだまだ創造力が湧いてくる……」
ガシャガシャガシャ……。
なおも城を守るため現れたのは十メートルはある巨大なプレッツェルの槍とマカロンの盾を持った砂糖菓子の兵隊。
槍を流れるように回避し、懐に滑り込むと、
「とりゃ!!!!」
ズドン!!
渾身の掌底が決まる。
砂糖菓子の兵隊は粉々に砕け、マカロンとプレッツェルが宙を舞う。
すかさず唯はそれを奪いマカロンだけ空へ投げる。
さらに接近。ついに唯は城壁までたどり着いた。
「うおおおおおおおおおおお!!!!!」
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリ!!
唯は手に持ったプレッツェルでものすごい勢いで城壁を削り始めた。硬く分厚いワッフルで出来た城壁はみるみるうちに軽いサクサクの食感に変わっていく。
ボチャボチャボチャボチャと撃ち返したクリームの雨が降ったあと、続いて砕けたチョコ片が降りそそいだ。
「これで、完成だあああああああああああ!!!!」
天空に飛び上がると手に持った巨大プレッツェルをやり投げの要領で投げる。
ドシュウウウウウウ!!最後に槍がクリームの城に突き刺さる。
それは天を貫く超特大甘味。要塞のような完成度はないが、なぜか温かみのあるフォルムをしていた。
そして唯は頂上で言い放った。
「轟天甘塔!!さあさあ!!砂城蜜也、最終日の大トリだよ!!召し上がれ!!」
唯の声が場内に響き渡る。
「すげぇ!!流石世界的パティシエ―ル!!」「さっきのはショーだったんだ!!」
悲鳴が歓声に変わる。駆け寄りむさぼり食う人々。写真を撮り尽くす人々。
その様子を見ながら唯はその城の主に話しかける。
「お腹、減ってるんだろ?世界的パティシエ―ル。砂城蜜也さん。」
「なぜ私の名前を……。」
「ほら、皆と一緒に食べてみろ。」
男は側にある唯の作ったパフェを頬張る。荒々しいが妙に完成している。
「う、うまい……!!そうか!!これが“至高“!!」
「ようやく気づいたか。あんな端っこで食べるより、皆で食べた方が絶対に美味しいに決まってるだろ?」
一瞬、男ははっとした顔をした。肩が震える。男の目頭が熱くなる。
ぽろぽろとこぼれる涙。予想外の状況に唯は少し困惑している。
「昔死んだ兄妹が言ってました。ご飯は皆で食べた方が美味しいって。妹の好物は当時高価だったスイーツ。だから私は最高のものを食べさせてやりたい一心で修行しました。なのに、私はそれにこだわるあまり初心を忘れてしまったのです……。」
「そ、そりゃ良かった。分かったらもうこんな事……」
「……これを貰ってください。私にとっては思い出の品だ。」
それは金細工が施してある趣味の良さそうなブローチだった。
「え、こんな高そうな物」
「最初に賞を取ったときに妹がフランスで記念に買ってくれた品です。私に初心を思い出させてくれたお礼に貴女に差し上げます。本当にありがとうございました。新しい境地が開けそうです。」
「あ、ああ……。」
拒否するわけにもいかず、唯はそれを受け取った。
こうして出し物は大盛況のまま幕を閉じた。
それから、後日。
事務所では、
垂れ流しにしているニュースのアナウンサーが今日も出来事を読み上げる。
『次のニュースです。砂城蜜也氏が自身の洋菓子店で新作スイーツを発表。皆で食べるスイーツをコンセプトにした……』
「いやーやっぱり昨日のチョコタワーはおいしかったですねーー!!くぅーー!!あの濃厚な味。プレッツェルとチョコ、生クリームの圧倒的調和!!もっと食べとけばよかったなぁーー!!」
遥は昨日食べた特大タワーの感想に浸っている。
その横で唯はものすごい勢いで運動をしている。反復横跳び、ランニングマシン、スクワット。かれこれもう一時間はそんな感じだ。
「ねえ、唯さん?聞いてます?ずっと隅っこで何やってるんですか?」
「ダイエット。」
完。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!!




