第二十四話 飛び込め!!ドキドキのプール日和
第二十四話を投稿します!!よろしくお願いします!!
夏本番、ギラギラに輝いた太陽がプールサイドを焦がす。
一行は市でも最大のプール『水上アクアガーデン』に来ていた。
真っ先にかけだしたのは陽一だった。派手な柄の海パンにサングラス。完全に浮かれている。
「っしゃー!!夏と言ったらプールだろ!!」
「ああ、ちょっと……走っちゃだめですよ!!」
真白はきっちりたたまれたタオルを手に持っている。上下のラッシュガードをきっちり着込んで育ちの良さがにじむ格好だった。
四人が更衣室を出てプールサイドに集まった瞬間、陽一は固まった。
「どうしたの?」
優依は明るく柔らかな印象の水着姿でいかにも高校生らしい可愛さ。
智花は黒を基調にしたシンプルだが落ち着いた雰囲気の装いで妙に大人っぽい空気が目を引いた。
「変かな……?」
優依が困ったように笑う。
「いや、めちゃくちゃ似合ってるよ!!てか、この展開ラノベすぎんだろ!!」
「何言ってんのよ。朝から元気ね……」
智花はため息をついたが、少し笑っていた。
『本日も水上アクアガーデンへようこそ。ただいま開催中の“ウォーターサマーフェスティバル”では、学生証のご提示で各種アトラクションが乗り放題となっております。夏限定イベントをどうぞお楽しみください——』
館内は大盛況。破格の学割のおかげで場内は異様な熱気に包まれていた。浮き輪を抱えて走り回る男子グループ。スマホ片手に写真を撮影する女子たち。
流行のポップミュージックに混ざって歓声と水しぶきが弾けている。
夏休み特有の浮ついた空気が巨大プール全体を包み込んでいた。
「いやーチケットとれてよかったわ。この時期、学生は入場料だけで格安だから人気がすごいのよ。下手すると一週間前に売り切れるのよ」
「しかも今年はアトラクション乗り放題だろ?そりゃ人集まるよな」
「そういえば毎年安いよねここのプール。なんで学生だけ優遇なんだろう……?」
優依は素朴な疑問を投げかける。
「ああ……それはね……」
智花が答えようとした時、割り込むように陽一が声をかけた。
「まずはあれ行こうぜ!!ジェットスライダー!!」
「はいはい……」
四人は人混みをかき分けながら巨大なウォータースライダーへ向かった。
上を見上げれば、何本ものチューブ状コースが複雑に絡み合い、悲鳴と水しぶきが絶えず響いている。
「うわ……思ったより高くない?」
優依が若干引き気味に呟く。
「今さらビビってんのか?」
陽一がニヤニヤ笑う。
「だ、だって絶対速いじゃん……!」
「大丈夫ですよ。たぶん安全です」
「“たぶん”が怖いんだって真白くん!」
列に並ぶと、陽一は終始そわそわしていた。完全に遠足前の小学生である。
「なあ、誰が一番叫ぶと思う?」
「陽一」
「陽一ね」
「陽一さんですね」
三人同時だった。
「お前ら容赦なさすぎるだろ!?」
四人は巨大な浮き輪へ乗り込み順番を待つ。
順番が近づくにつれ、陽一の顔色がだんだん怪しくなっていく。
「……やっぱやめない?」渋り始める陽一。
「でもこれ止まんないわよ」
発射台の後ろはすでに浮き輪で埋め尽くされてしまっている。逃げようにも逃げられない。
「ちょちょちょ待って!!心の準備が!!」
ガコン
「うわあああああああああああああああああああああ!!!!!」
発射と同時に真っ先に響いたのは陽一の絶叫だった。
巨大な浮き輪は激流に飲まれ、一気に急降下する。視界が水しぶきで真っ白に染まり、身体がふわりと浮く感覚に優依は思わず浮き輪へしがみついた。
「む、無理無理無理!!速い速い速い!!」
「優依も叫んでんじゃねえかぁぁぁぁ!!」
直後、今度は急カーブ。
四人の体が遠心力で一斉に片側へ流れる。
「うおっ!?」
「ちょ、押さないでください!」
「押してない!!」
完全にパニックだった。
しかしその中で、智花だけが妙に冷静だった。
「設計、かなり計算されてるわね。水流の角度で回転を——」
「こんな状況で何分析してんだよお前ぇぇ!?」
そのとき、優依の中で“久遠唯”の声が響く。
『ふふ、今日は大盤振る舞いといこう』
(え、唯さん?)
優依の指先がピクリと動く。そっと水面に触れると。ぶぉんっ。水中で高速回転を始めた。
「……え?」
ゴ……ゴゴゴゴゴゴ……
スクリューの要領で水が押し出され、浮き輪はみるみるうちに加速していく。
「ん?なんか、速くね……?」「……嫌な予感するわね」
しかし二人が危機を感じたときにはもう手遅れだった。
景色が猛烈な勢いで流れていく。
水しぶきが顔面へたたきつけられ、まともに目も開けられない。
「うわあああああああああ!!!!」
「助けてえええええええ!!!!」
『仕上げといこう』
ズバァアアアア!!
出口に突っ込んだ瞬間、優依の指がちょんと空気を叩いた。
浮き輪が跳ねた。
「「「「うわああああああああああああ!!!!!?」」」」
浮き輪ごと四人は空へ射出。
空飛ぶ絨毯のように浮き輪はぐんぐん高度は上昇していく。
真白は恐怖のあまり絶句している。
「設計ミスでしょ!!!!」智花はこれを作った製造責任を大声で訴えている。
「死ぬ死ぬ死ぬ!!!!」絶叫する陽一。
(唯さああああああん!!?)
『いやぁ、絶景だな』
そして最後の急降下。
「「「「ぎゃああああああああああああ!!!!」」」」
ザバーーーーン!!
「…………」
数秒後。
「……生きてるか?」
陽一がびしょ濡れのまま呆然と呟く。
「……死ぬかと思った」
真白は震えで動きが硬直している。
「夢よ……これは夢……」
智花は現実を受け止めきれない。
その様子を見て久遠唯は悪びれることなく笑っている。
『悲鳴が足りないと思ったのでな。安全面は私が担保してやる。ははは。』
(もう、いい加減にしてくださいよ……)
“久遠唯”は最強の超能力者。私の体を使ってたまにこういう悪ふざけをするのだ。
「もう一回行こうぜ!!」
真っ先に立ち上がったのは、さっきまで絶叫していた陽一だった。
「はっっっっや」
「切り替え早すぎですよ……」
夏の太陽の下。
四人の笑い声は、水しぶきの音に混ざっていつまでも響いていた。
その姿をプールの監視員は見ていた。横には支配人の男。
『……今年も賑やかですねぇ』
「ああ。この様子なら、今年の“祭り”はうまくいったな」
支配人は、空へ響く若者たちの笑い声を聞きながら目を細める。
「“ときめき”、“友情”、“熱狂”を捧げよ。ってか。水の神ってのは、若者を鑑賞するのが好きなのか?」
監視員が小さく頷く。
「ははは。そうかもしれませんね……」
支配人は空を見上げる。
「だが、今年も水辺は無事平穏だな」
夕暮れの飛び込み台には、
一輪の花だけが残されていた。
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