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第十九話 犯人扱い

第十九話を投稿しました!!よろしくお願いします!!

『便利屋ユイ』は洋館での誘拐騒ぎの一件、商店街の火事騒ぎ、様々な事件を解決しさらに注目を浴びていた。


今日は学校総出で文化祭の為の準備だ。

外部の人も来るので念入りに掃除をしたりグラウンドも整備したりしている。

『便利屋ユイ』の主であり言い出しっぺの糸瀬優依も共に行動していた。


「よいしょっと、ここでいいのか?」


力自慢の陽一が手に持ったそれを下ろす。

体育館の舞台の上には大きなスピーカー。


「おおーー!!立派ですねえ!!」「ウチの学校も儲かってるのね……」

それを見ている真白と智花。


「ありがとう。こんな大変な作業を手伝ってくれるのは君たちぐらいだよ」


総馬が礼を言う。


「いやいや!!部活の立ち上げに関わってくれたんだ。このくらい訳ないぜ!!」


「しかしまあ、いつもこんなことしてるの?」


「ははは。今日は特別さ。この際だから新品のと入れ替えようって話になって」


「昼食の後に集合して校長先生が話をするから、その時にお披露目だな」


「ああ!!」


そして集められた生徒たち。

学校総出だというのに一部人数がぽっかりとあいている場所がある。

これがこの学園の闇、“普通科”の存在である。


“普通”とはかけ離れた問題生徒を押しつけた超絶不良クラスのことである。


それをお構いなしに壇上に上がり立ち話を始める校長。


「あ、あ……。今日は皆暑い中作業を……ん?あれ?」

キーーーン……。


ブツッという音がしてスピーカーは動かなくなってしまった。


騒然とする体育館。

新品のスピーカーを入れたはずなのに、動かない。

「は!?これは……!!」


裏を見ると、スピーカーは見るも無惨な姿にボコボコにされていた。

明らかに初めにはなかった殴打の跡。


「ひどい……誰がこんなことを……」

「誰がって……決まってるだろ……」


入り口から大勢の人影が入ってくる。


「無駄だぜ!!壊れてるからな!!」


ぞろぞろと集まるのは黒田武とその取り巻き達。

“普通科”の面々である。


教師が頭を抱えている。


「お前達の仕業か、まったく。後で職員室に……」

「おいおい、人を見た目で判断するのは辞めて欲しいぜ」


「証拠だってあるのによ」


背後のスクリーンが動く。


バン!!

スクリーンに投影されるのはとある場所から取られた定点カメラ。

物を運ぶ優依達の姿。

体育館へ運ばれた後施錠され、集合の時間まで開くことはなかった。


「つまりだ。機材がトラックから下ろされお前達の手で運ばれた後、体育館は施錠されていた密室だったわけだ。触ったのはお前達だけ」


「『便利屋ユイ』さんよお、なにか言い逃れはあるか?」


ざわざわ……

「便利屋ユイってあの!?」

「マジかよ……」


濡れ衣を着せられた『便利屋ユイ』

疑いを晴らさなければその後の活動なんて出来ないだろう。


「へえ、じゃあスピーカーがボコボコに壊れた瞬間はどこに映ってるのかしら」


「それはお前達が壊したんだからお前達にしか分からねえだろ」


ゲラゲラゲラと下卑た笑みを浮かべる男達。


智花がため息をつく。


「“普通科”ってのは馬鹿しかいないのね」


「ああ!?」


「こういう証拠はもっと明確に取るべきよ。こんな遠巻きに取った動画一つで疑われるんなら警察はいらないわ」


「黒田武。アンタの作ったくだらないトリック。完全に打ち壊してやるから」


「はっ!!触ったのはお前達しかいないんだ。これは生徒会の奴らだって見てたんだぞ?

出来るもんならやってみろ」


「皆動かないで。この体育館も閉鎖します。」


そして一時間後。


「さあ、皆も待ちくたびれてるだろう。答えを聞かせて貰おうか」

黒田武は体育館の倉庫の手前で陣取りながら、取り巻きとニヤニヤしながら見ている。

そこに向かってコツコツコツと歩いていく智花。


「あ?なんだよ」


「そこ、どいてもらえるかしら」


ガラガラと戸を開けると、手当たり次第に手を付けていく。

そして、

智花が眼を付けたのはボール入れ。

にらみつけ、ニヤリと笑った。


「陽一、手伝って」


「おう」


四人がかりで巨大なボール入れを持ち上げる。


「せーの!!」


ガシャアアアアアン!!!


ボールが雪崩のように散乱した。


その中から、ひとりの男子生徒が転がり落ちる。


「うわっ!?」


総馬が目を見開いた。


「“普通科”の生徒……!」


体育館がどよめく。


智花は冷たい視線を黒田へ向けた。


「おかしいわよね?」


その一言で空気が反転し、黒田の顔から笑みが消える。

ああ、やっぱりかという安堵感が体育館の中に拡がった。


「ここ、普通は誰も入らないわよね?何で貴方の仲間がいるのかしら」


「ちっ……!!」


人が居ないはずの場所に人が居る。

それは黒田が作り上げた“密室”が崩れる言葉だった。


「そうだよ!!俺が取り巻きを体育館に忍び込ませたんだよ。生徒会の奴を脅してな!!」


ピッ。

プロジェクターが切り替わる。

そこは無機質な部屋。


「忘れたのか?ここにはお前の妹が……」

「あ……?」


「妹を人質に取られていたそうよ」


ガチャと体育館の鍵が開く。

歩いてきたのは少女。崩れ落ちる生徒。


「華!!無事で良かった……」


一通り生徒の安心を確認した後、黒田の顔を一瞥し一言。


「戸締まりはしっかりしないとね」


「テメェ……!!」


「何でだ……?あの場所は俺たちだけしか知らないはず……!!お、お前か!!お前が裏切りやがったのか!?何だ!?金か?」


黒田は手当たり次第に取り巻きに掴みかかり有ること無いこと騒いでいる。

策士策に溺れるとはまさにこのこと。


「あはは、無様。私達があんたみたいなことするわけないでしょ?単細胞が隠す場所なんてお見通しってわけよ」


「ちっ……覚えとけよ!!次こそお前達をぶっ壊してやるからな……」


「ぶっ壊れたのはアンタの面子よ……」


その後ろ姿を見ながら哀れそうに呟く智花。


その様子を見ながら優依は思う。

一時間前。


(ねえ、唯さんはどう思う?)

『あの様子、態度からして……』


糸瀬優依の内に宿る“久遠唯”。彼女は私に不思議な力を与えてくれる。

そのおかげで様々な難事件を突破してきた。


それが世間に知れたら私は政府に追われるかもしれない。

それほどの超能力なのだ。


(ええぇ!!じゃあ……)

『うむ。まあそうなるな』


『まったく、下らん事件だ。優依。お前はこれをどう解決する?』

(私は……)


「ねえ智花?」

「ん?どうしたの優依?」


「映写機って体育館にもあるんだね」

「ああ、これはあまり知られてないけどね、効率化学習の一般化とかで最近導入されたのよ」


「ん?……ああ、そうか。そういうことか」


陽一がすかさず茶々を入れる。


「名探偵智花の誕生か?」

「ちょっと、茶化さないでよ」


「映写機は最近導入されたもの。なのにやつらはその存在を知っていた。あまつさえ使い方までしっかり分かっていた。これどういうことか分かる?」


うーん。と考えこんでから、陽一が唖然と口を開いた。


「デジタルネイティブだからだ……!!」

「いや、それは僕たちもそうでしょ、全員高校生なんだから」


「ゴホン。つまり条件は私達と一緒。なのにごく一部しか知らない物の存在を知っていた。これはどういうことか。陽一は馬鹿だから、真白くん、分かる?」


「生徒会に内通者がいるってこと?」

「正解」


スタスタスタ……。

総馬のところへ近づく智花。


「防犯カメラの履歴を見せてくれるかしら」


「見たって、意味ないぞ?犯行時の体育館は全部消されてるからな。全くあいつらときたら……」


「大丈夫よ」


智花は履歴を繰る。拡大したのは体育館二階の小さな部屋。“操作室”と言われる場所だ。

何やら人気の無い場所で不自然な影が移っている。


「な、まさか……」


そこに映っていたのは操作の方法を教えている生徒会の生徒だったのだ。

追求し、彼にその事実を認めさせた。


「この動画が送られてきたんです。痛い目に遭いたくなかったら鍵を渡せって言われて」


スマホの画面には無機質な部屋に拘束されている少女。


「なるほど……妹さんを救出しなきゃこの推理はできないわね」


一行は再び沈黙してしまった。

優依は心の中で唱える。


(お願い、唯さん!!)

『任せろ』


智:起動。

走査開始 

視力強化 開始

対象:体育館内 黒田等特定人物群


表面付着物:金属片 塗装片

塗装片 旧規格防錆塗料 高耐熱

金属片 校内備品一致


校内参照……

行動パターン照合


候補検出


『分かったぞ。犯人はボイラー室。旧棟奥のボイラー室だ!!』

(ありがとう、あとはこれをやんわりと……)


「結構手の込んだ作戦だね……」

「そうね、これをやるには忙しすぎるわ。犯行は校内かも知れないわね。……人の眼に付かなくて防犯カメラの少ない場所、そこを当たるわ。総馬君、いいわね?」


「ああ分かった。動けない君たちの代わりに今までの伝手や非番の職員を使って徹底的に探すことを約束しよう。ですよね校長」


「うむ。これは学園の威信に関わる事態だ。これ以上許してはおけん」


警察を呼ばれる事態になる。

それは校長としても避けたい事態であった。


こうして捜索は行われ彼女は無事保護されたのだった。

黒田が去り、平穏が戻った体育館には笑い声や期待感が戻っていた。


「マジで肝が冷えたぜ!!文化祭始まって以来の大パニックだったなー!!」


「いや、まだ始まってすらいないんだけど……」


その様子を見ながら“唯”が呟く。


『そう。本当の事件はまだこれからなんだよ。……智花』


唯と優依だけはその予兆を確かに見つめていた。


夏はまだ始まったばかりだ。



ここまで読んでいただきありがとうございます!!



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