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第十四話 ワークライフバランス

第十四話を投稿します!!よろしくお願いします!!

その日は連日の雨のせいか、なにか鈍重な空気が流れていた。

謎の空気が街の外にも満ちあふれていた。


『便利屋ユイ』――

どんな依頼でも解決する街のトラブルシューター。だがそれはあまり知られていない。


そこの店主、久遠唯は驚愕していた。


「何これ……」


カタツムリのように道路に寝そべる人々。

世界全体に重い空気が流れているようだった。


「気づいたかい?この街の異様さに」


コツコツコツ……そこに現れた人間が、

唯の瞳孔が開かれる。


「は……!?」


「やあ、また会ったね。久遠唯」


「真白……!!お前の仕業か!!」


樒真白。唯の同級生にして宿敵。

かつて異能が同時発現した閉鎖された学校にて全てを食らい去った、奪う能力の男。

それが目の前に。


「あっはは、何言ってるんだ。クラスの子達にこんな能力の奴居ないだろう?これは世界規模で起こってる謎の倦怠感なんだ」


近くの電気屋のテレビを指さす真白。

そこではけだるそうなニュースキャスターが異変について説明している。

『本日世界で謎の倦怠感が流行しており、政府はこれを一部の社会的な迷信が原因と……』


「迷信?そんな馬鹿な。……能力だ。しかも相当タチが悪い」


「さすが、あの死線をくぐり抜けただけはあるね」


その言葉にギロっとにらみつける唯。それを見ておっと、と軽薄な笑みを浮かべる。


「政府はこれを迷信と決定づけて動かないらしい。このままだとどうなるか、分かるね?」


唯の臓腑が冷える感触、まずい。

電気、水道、ネットなど、すべてのインフラは人々のやる気によって産まれている。


それが失われるということは文明の崩壊を意味する。

こうしている間も刻々と人々のやる気は失われている。


「この辺から途端に力が強くなっている。おそらく、この町の人間の仕業だろう。この街には“台風の目“とされるあの少女も居る」


……!!


「取り返しが付かなくなる前に、この街の人間を全員殺す」


「期限は三十分。君の役割はそれまでに元凶を見つけ出すこと。分かるね?」


ダッ!!と唯は駆け出した。


「期待しているよ」


真白がそう一言告げる。


「三十分だと……?無茶言いやがって……!!」


唯は駆ける。

地べたに座り込む人々、よろよろと走る車。


信号までもが動きが遅く感じる。

近づくほど倒れている人がどんどん増えていく。そんな印象だった。


あと二時間で街の人達が全員死ぬ。もう人が死ぬところは見たくない。

そんなの認めるか。


智花、陽一。力を貸してくれ……。


『承認。智、体同時発動。視力強化 跳躍力強化。』


ズドォン!!

唯は飛び上がった。超跳躍。アスファルトが砕け、唯の身体が空へ撃ち出される。


「見える!!」

眼はカメラのように、正確に見たものを拡大する。

人、人、人。わずかな差だが、倦怠感には個人差があるような気がする。

その“濃さ”が違うのだ。


『範囲査定 分析 生体反応低下分布作成 核特定 仮定三件該当』


「……!!」

唯の視界に移ったのはとあるビル。


ビルの一室。そこだけ電気が付いている。まるで街の静寂から切り離されているかのようだ。

そこに唯は違和感を感じた。


窓に寄りかかり電話をしている男。

そこから異様な反応を感じる。


その瞬間、男が転落した。


「……!!間に合え!!」


男は目を開く。


「あれ、生きてる……?」


「大丈夫か?」


「はは……ははは………助かったよ」


プルルルルルルと男の携帯から着信が流れる。


「はい!!俺が引き継ぎます!!いえ!!休ませてあげてください!!」


「どうした?」


「……仕事に戻らないと、ありがとう。死ぬところだった」


ブツブツと呟く男、

男の苦悩はさらに強くなる。


ブウウウウン!!!!

そこに暴走した大型車が目前に突っ込んでくる。


「まずい!!」


唯は身を挺して止めようとするが、


「うっ……」

一瞬、意識を失う唯。

能力を出せない……庇いきれ……。


衝突。

したかのように思えたその車は

唯の目の前でピタリと止まっていた。


「は?」


ギシ……

トラックのタイヤには謎の繊維が無数に絡みついている。

寸分違わずそれが止めているのだ。


コツコツコツ、

そこに歩いてくる一人の男の影。

白いスーツの好青年。樒真白だ。


「原因を見つけたようだね」


「ああ……これで街の人々は殺すなよ」


「確かに民衆を殺しても、もうメリットは無いな」


「そうか、はぁ……」


少しだけ肩の荷がおりた。


「ただ、この男は殺すべきだ」


「なっ……」

唯は目を見開く。


「この騒ぎは奴の苦悩と連動している。意図せず迷惑をばらまく存在。それがあの男だ。このままなら被害は拡大する。街も人も全て巻き込む。なら今殺す。合理的。最適解だ。そうだろう?」


「……はっ、絶対に殺すもんか。もう死人は見たくないんでね」


「ははっ、じゃあどうするんだ?」


「決まってる、助けるんだ、全員」


「馬鹿げてるね……」


真白は腕時計を眺めつつ、


「……まあ、約束の時間まではあと十分ほど。それまで付き合ってあげるよ」


「おい。どうしてそこまでがんばるんだ」

「ははは何だ……頑張るのは当たり前じゃないか」


「ニュース見てないのか?皆休みじゃないのか?」


「そうだよ。だから俺がやるんだ……体調崩した奴。動けない奴もいる。その分は俺がやらないと……そうだ、下に来たんだ……ゴミ箱……」


男は動き出す。そのたびに街の空気が重くなっていく気がする。

なにやらごそごそとゴミ箱の中をあさっている。


「何してるんだ?」

「いや、この前会社で大問題になったんだけど、契約書をシュレッダーに掛けた奴がいてね。」


「そいつのためにも見つけてやらないと……」


ゴミ箱の中はぐちゃぐちゃだ。


「はぁ……何日前だ。」


「確か三日前。はは、見つかるわけないよな……」


「いや、まだ間に合う――」


ドン!!

唯は飛び出した。


突風。

至る所のゴミ箱が弾ける。

紙片が空へと舞い上がる。


稲妻のようにその中を唯は駆けていく。

会社内にも、ものすごい勢いで飛び出していった。


そして

「え――」


「ほら、これでいいのか?」


「そうだ!!それだ……なんで……」


「単純だよ。見つけてくっつけただけ。お前の悩みってのはこれでいいのか?」

「悩みっていうか仕事だからなあ……」


「仕事か。なら、次も、その次もお前がやる。それでいいのか?」

「……だって、俺がやらなきゃ」


「やらなきゃ、じゃない。お前がやりたいかやりたくないか。だろ?」

「やりたいか……じゃあ、できればやりたくない。かなぁ……」


男から本音を引き出したその瞬間、ふわっとした感覚。

唯の肩の荷が降りたのか、能力が解けたのか。それは分からない。


その様子に真白は呆れている。

「まったく君はお優しい。そんなんじゃ身を滅ぼすぞ」

「いいよ。何回でも救ってやるから」


空を見上げる。今までの曇天が嘘のように晴れ晴れとしている。

その中に、何かが見える。


「は……?」


そこには落下する大きな物体。

それは旅客機。先ほどの意識の停止でコントロールを失ってしまったのだろう。

バランスを失ったそれが一気に突っ込んでくる。


「なんだあれは……」

「大丈夫。私に任しとけ」


ドン!!

唯は飛び出す。瞬間的に唯は思考する。


智、体:同時接続。

標的:旅客機。

重量、角度計算

降下速度算出 落下角度推定

衝突地点予測。

最適行動演算 実行


「必殺……超万能安定管理官アルティメットカウンセラー


ドンッ!!!


「それが例え飛行機でも!!物理で解決!!それが私の仕事なんでね!!」


機体が押し込む。


「ぐうううううううう!!!」


飛行機のスピードが弱まっていく。


「後もう少し、足りない……!!」


そこに、シュルルルルルルルルル……

飛行機全体に無数のツタが絡まる。


「共闘と行こうか」

「……最悪の仲間が出来るなんてね」


真白の指先から伸びた無数の繊維が機体を縫い止める。

勢いはさらに減衰していく。


グググ……ググ……。

ぴたっと飛行機は止まった。


「はぁ……止まった……」


軽薄な笑みを浮かべて近寄ってくる真白。


「任務完了!!イエーイ!!唯ちゃん!!ほら、ハイタッチ!!」

「死ね」


真白を無視して、

埃を払いながら彼の元へ向かう。


「ほら、言ったろ?大丈夫だって」


「……凄い……本当にありがとうございました……おかげで俺、自分の本音に気づけたよ」


「気にすんな。なにかやり残した仕事はあるか?」

「もう大丈夫です。どうにかやっていける気がします。俺、もうこの会社辞めるんで!!」


男の顔は隈を帯びながらもどこか生気をとりもどしたようであった。


「そうか、それなら良かった。私は帰るからな」


――――――――――――――――――――――――――――


数日後、

『便利屋ユイ』事務所にて、

飛行機の不時着騒ぎも一旦は収まり、街はいつも通り平和に戻った。


「どうしたんですか?そんなにぐったりして!!元気出して!!ほら!!」


ぐったりとソファーに横になっている唯の姿があった。


「ねえ、やっぱり重労働すぎない?私の仕事。明日ちょっと休みたいかも……」


「駄目ですよ!?猫探しに役者の代役、塾に明日は大忙しなんですから!!張り切っていきましょう!!」


「ええ……ちょっ、私一応、千歳の老婆だから大事に扱って……」


「あはは、もう、冗談はほどほどにしてくださいよ~」

「ええ……」


会社員に退職はあっても、ヒーローに退職はない。諦める唯なのであった。


終わり


ここまでお読みいただきありがとうございます!!


次回もお楽しみに!!

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