第十三話 異世界から来た男
第十三話を投稿します!!よろしくお願いします!!
『便利屋ユイ』――
今日は休業日。
昼下がり、久遠唯と遥は街中を歩いていた。
「唯さんー、今日は買い物付き合ってくれてありがとうございますぅー!!」
「あの店女子高生とか結構多くて一人で行くのちょっと怖くて……でもいっぱい買えたーーくーー!!」
遥の手にはたくさんのファンシーなキャラグッズ。
「凄い買ったね」
唯はそれをみて驚いている。
「これが大人の資金力です、えっへん」
「いやいや、力の使い道間違ってるでしょ……」
その時、
ドカッ……
遥は何かにぶつかった。
「わっ!!あ、すいません……」
肩に感じるグニと言う感触。大きい。
なにか硬い肉のような。牛か馬だろうか。人間だとしても相当大柄だ。と遥は思った。
すぐさまぶつかった相手に謝罪し、相手の顔を伺おうとした……が、
「え……?」
目の前に居たのは――
“巨大な影“
ゆっくりと見上げる。
ビルの上を越えるほどの巨体。
鋭い牙、黒い鱗。
「ど、ドラゴン……?」
なんと遥がぶつかったのはドラゴン。その足の先だった。
ズン……
巨体がゆっくりと動く。
「オオオオオオオオオオ!!!!」
眠りを妨げられ、激怒する。
咆哮しただけで、地面が揺れ、窓ガラスがビリビリとなる。
「逃げろ!!」
誰かの叫び声。
人々が一斉に散り始める。
怯えた声で遥が助けを求める。
「唯さん、これ、なんとかなりますよね……?」
「あ、ああ。私に任せ……」
唯がドラゴンに向いたその時。
「やっと見つけたぜ」
一人の男が飛び出した。横には何やら喋るペットのような存在が飛んでいる。鳥類だろうか。
「ピーちゃん」
『リョウカイ、”変異の種子”を生成シマス……』
「変異、ソラ・アルカディア!!」
空気が歪む。虹が男の身体を覆っていく。
天から舞い降りる光が彼の身体を包む。
現れたのは白い勇者。
「あ、漫画のキャラに変身しました!!」
白い勇者は手をかざし、こう叫ぶ。
「顕現せよ。我が剣、 |七色の剣 エクスブレイド!!」
男の手に剣が発現する。すさまじい烈風が吹きすさんだ。
「眠れ、悪しき龍よ」
勇者の背中には翼。
光が勇者の周りに集まる。
「光よ、世界を正せ!!」
「虹天叢聖斬――」
「スペクトラム!!アルカディアアアアアアアア!!!」
七色の閃光が空間を裂く。核に、直撃。
ドォオオオオオン!!!!
爆ぜる怪物。
衝撃波がビルを駆け抜ける。霧散する。鱗が空へと溶ける。
シュウウウウウウ……
変身が解け、男の本来の姿が現れる。
「大丈夫ですか?お嬢さん。」
「ありがとうございます……とってもお強いんですね」
手を差し伸べたのは白髪の好青年。
いかにもお人好しという顔をしている。
「俺はユウヤ・グランディス、異世界を旅して人助けしてんだ!!」
「人助けって、唯さんと一緒じゃないですか。かっこいいです……」
目をキラキラさせている。
その時、
横断歩道の向こうで、おばあさんが重そうな荷物をかかえていた。
「ああ、いいよ……無茶しないで……」
唯が行こうとしたその瞬間、
「任せてください!!いくぞーー!!」
『ユウヤの思念から“異形“確認……ピピピ……“異形のプロテイン“を生成』
「行くぜ、ゴクゴクゴク……」
虚空から現れた謎のドリンクを飲み干すと
バキバキバキバキ……!!
ユウヤの筋肉が膨れ上がる。
「うおおおお!!!」
ドスドスドスドス……
ユウヤは走り出す。おばあさんの目の前まで疾走するムキムキの成人男性。
明らかに異様な光景だ。
明らかに速い。
明らかに怖い。
「お困りでしょうか!!」
グイッ。
顔を近づけるユウヤ。
「ひぇ……」
おばあさんは恐怖している。
「任せてください!!最速で……」
ユウヤは荷物ごと軽々と持ち上げようとしたが……
「あ」
空へ投げ飛ばしてしまうのだった。
「投げた!?」
しかしユウヤは慌てない。
「大丈夫です!!今なんとかします!!」
ドンッ!!
地面を蹴る。アスファルトが盛大に砕ける音。
「今度は砕けましたが!?」
「うおおおおおお!!!!」
空中でキャッチ。
ドゴオオオオオオン!!!
着地。
衝撃波が走る。
地面が陥没し、周囲の人々がよろめく。
「これで大丈夫ですね!!」
しかしおばあさんは呟く。
「荷物が、荷物が……」
「え?」
よく見るとユウヤが確保できたのはおばあさんの安全だけだった。
荷物がない。ユウヤは全てを投げ飛ばしたままほったらかしにしてしまった。。
「あれ……俺、やっちまった……?」
ズドォン!!!
「ほら、気をつけろ」
唯の腕には全ての荷物。
「あ、ありがとうございます……」
おばあさんは去っていた。
取り残されるユウヤ。
「まったく、しっかりしろ……荷物が壊れたら本末転倒じゃないか」
「……すまん、俺のせいで、ありがとな!!切り替え!!切り替え!!人助け再開だぜ!!」
「凄いポジティブですね……」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あ、自販機壊れてるー」
近くの小学生。
「坊主、任せろ!!俺が自販機直してやる!!」
『リョーカイ。“異物のボンド”を生成』
「修理と言えばボンドだろ!!」
ボン。
ペタペタペタペタ。自販機にボンドを塗りたくるユウヤ。
「これで良しと」
シュウウウウウウウ……。
「え、なに……何が起きてるんですか……?」
壊れた自販機に煙が上がる。
煙から出てきたのは明らかにおどろおどろしい異界の自販機。
血管のようなパイプを巡らし装飾が黒く脈打つ禍々しい自販機。
黒いドロドロとした本物とは似ても似つかぬ悪魔の飲み物。
邪鬼の心臓と怨嗟の声2000mg配合。
虎悪羅150円。
魔界の泉の上流で育まれ、水の形をした究極生命体。
飲んだ者に仮初めの不死を与える至極の一品。
異濾覇諏130円。
「……」
「ひ、……ひえええええええ!!!」
小学生はあまりの恐怖に泣きながら去って行ってしまった。
「お、おい待て、俺直したよな!?」
ため息をつく唯。
「まあいいや。切り替え、次行くか!!」
歩いているとビラを配っている女の人がいる。
「こういう人を探していまして……」
ビラには中年の男の顔が映っている。少し外人風だ。
「人捜し?」
ユウヤの目が輝く。
「人捜し人捜し……あ、異人?かな?」
『ピピピ、承知!!“異人のドア”!!』
ボンッ。現れたのは扉。
ガチャっとドアが開きその中から現れたのは……。
「ココドコデスカ?」
現れたのは異人(外国人のこと)
「まあ、この写真、外人風だし近い……か?」
「「いや雑!!」」
不意に突っ込んでしまう二人。
そして、
「アリガトネ~」
どうにか送り届け、外人は帰っていった。
公園のブランコでうなだれるユウヤ。
「はあ……」
「お前人助け、向いてないよ。」
「えぇ!?」
「でも俺、ちゃんと助けてるよな!?」
「それで皆はどうだった?感謝してたか?」
「……」
ユウヤはうなだれている。
そこに一人の影が現れる。
「その人、僕に引き渡してくれないかな?」
「お前は……!!樒真白!!」
そこにいたのは――
あの男。久遠唯の宿敵、樒真白の姿。
「また会ったね。久遠唯」
「なんだ。ここでやり合おうってのか?」
事態は一触即発。公園はバチバチとした雰囲気に包まれる。
その空気感にユウヤはいても立っても居られなくなってしまう。
「え、な、なんだ?問題発生か?俺が……」
「動くな」
真白の指先がわずかに動く。
次の瞬間、
伸びた。
しなる蔓のようなものが地面を這いユウヤの身体に絡みつく。
「うおっ!?」
ビシィイイイ!!
それらはあっという間にユウヤの身体を覆い、完全に拘束してしまった。
唯は顔をしかめる
「真白……!!」
「そんな怖い顔すんなって、君たちの同行を見張っていたが、この男は危険だ」
「“異世界”。これがなにを意味するか君なら分かるはずだ。」
「まさか……」
「そう。彼は近づきすぎた。真理に。彼は僕たち、いや日本にとって危険過ぎる存在なんだ」
唯の脳裏には異世界から来たと言う言動。それは過去……。
危険だ。もしユウヤのせいであの怪物が野に放たれたらどうなるか。
たしかに真白の言っていることも正論だ。唯は黙る他無かった。
「それに、その子もね。――まったく君は厄介ばかり拾うな」
遥はきょとんとしている。
にこりと笑う真白。
「どういう意味だ。」
「彼女、災難体質だろう?何か気づかないか?」
一瞬、
その言葉に唯はぎょっとする。確かに遥は異変を舞い込み過ぎる。
今日だって急にドラゴンにぶつかったのは遥。
そして二年前、現実世界で見た黒い怪物。そして先日の校舎。
遥が台風の目だとでもいうのか……?
「まさか……」
「ああ、その時は必ず来る。目を離さないことだ」
その言葉が落ちた。その瞬間。
ミシッ。
ユウヤを縛っているツタがギシギシ都何か音を立てて居る。
「ん?」
「ムグググググググ!!!」
バクバクバクバク!!!!
「ツタを食ってる……?カーボンワイヤー並みの強度だぞ……?なんて歯だ……」
“異食の歯“。それは異世界にて飢えを凌ぐためユウヤによって編み出された知恵。
何でも食って栄養に変えてしまう歯である。
全てを食らい、飲み込んだ。
「なんとなくだがお前が悪い奴だということはわかった。お前を倒す!!」
「一筋縄ではいかないか。やはり危険だね」
真白は手をかざす。
「『複合発動』納、暴、統、射、硬」
「試作品一号 “無限爆発君ミサイル”」
「何ですかアレ!?巨人!?」
その瞬間、唯は危機を察知した。
「遥、逃げるぞ!!」
手元からは筋骨隆々の肉体。
「ショーの始まりだ。」
「行け」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!
無人の公園に突き刺さる筋骨隆々の男達。
「爆」
ドオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!
ドゴンドゴンドゴンドゴンドゴンドゴンドゴンドゴン!!!
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!
自爆する巨人。一度だけではない。何度も、際限なく、爆発し続ける。
爆発が止んだ。
公園は更地になってしまった。
「さて、粉々に……」
シュウウウウウウウ。
「ははっ、まじか」
そこには、
一人の男の影。
なんと、無傷。
「“驚異の御守り”が無かったら死んでたぜ」
「次は俺から行くぞ、悪党」
「ピーちゃん。“異能の王冠“、”異才の仮面“だ。フルスロットルで行くぞ」
『オッケー!!行くぜ!!アイボウ!!』
一点に虹が収束する。天から舞い降りるは虹の王冠。
それが形成される瞬間、
ジジジ……。
「なんだ……」
空間に浮かぶは謎のノイズ。
その合間を縫って現れたのは、数字の集まり。意味を持たない羅列が空間にとどまり続ける。それらは叢を成し、仮面の形に合成される。まさに英知の結晶といった感じだ。
ユウヤはすっと真白に指を差す。
「お返しだ」
ドオン!!!
突如現れた爆炎が、真白の半身を焦がす。
しかし真白は依然笑ったままだ。
「ははっ、凄い能力だ……世界が帳尻を合わせてるのか?」
「今の俺は無敵さ、どこからでもかかってこい」
「面白い!!」
「複合能力 試作品六十六号 連結のびーる君」
掌から出されたのは、真白の配下。
「どこだここ……」「真白さまだ!!」「もう実験はやめてくれ……」
「皆~!!集合だよ!!」
真白の軽薄な笑み。軽く手を振ると。
「……身体が!!助け……アアアアアア……」
グニャグニャグニャ……
肉が引き寄せられる音。骨が、神経が繋がりあい形を変える。
気づけばそれは鞭の様な姿になった。
蠢く血管。悲鳴が聞こえてくる。真白はそれを意に介さず。ヒュンとそれを叩きつける。
「いたい……いたい……」
「何て奴だ……」
「お優しい君にこれが殴れるかな?」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「そらっ」
鞭を振る真白。
「もちろん爆発するよ」
ボボボボボボボボボボ!!!!
爆発する鞭がユウヤの目前に迫る。
「瞬間移動」
「あれ……俺狙ったよね?」
気づくとユウヤはかなり遠くに立っていた。
移動した感覚はないが、なぜかそこに立っている。
「異次元パンチ」
シュッとその場で拳を振る。
「シャドーボクシング?あはは、かっこつけぇ……ガッ!!」
瞬間真白の眉間がめり込む。
ユウヤ、それを確認して一言。
「当たったな。仕様変更。“無限連打“」
ピュン!!
一度にして真白の顔面は同時に無数の打跡が現れる。
しかし真白は意にも介さずその顔の“皮“を剥がす。
ペリペリペリ……
「試作品 零号 ハンサムマスク」
中からは無傷の真白の顔が現れる。
捨てられた“顔“は人の姿に戻る。”無限連打”の威力は壮絶。
今もなお殴られ続けているようだ。すでに人の形を成していない。
あーあ、と言いながらも、
真白は何やら嬉しそうな顔をしている。
「なるほど……バグか!!“バグを使いこなす能力”!!こりゃ面白いね……」
「終わりだ。“影分身“」
鏡の世界からユウヤが現れる。一人、また一人とその数は増していく。
「いいね!!試作品……」
真白がさらなる奥の手を出しかけたその時、
「そこまでえええええええ!!!!!!!!!!!!」
ブオンブオンブオンブオン!!!!
狼の遠吠えを思わせるどこまでも続く叫び声。
スピーカーのような強靱な声帯から突如響く爆音に二人の動きは止まる。
その声の主は唯だった。
「何の用かな。君は早く帰った方が……」
「真白。お前こそはやく去ったほうがいいんじゃないか?」
周囲を見渡す。
ざわざわ、と言う音。パトカーのサイレンまで聞こえてくる。
真白はテレビやネットにもよく顔を出す有名人だ。
彼がこのような破壊行為をしたとあっては権威失墜は免れないだろう。
「……仕方ないか。君との勝負はお預けだな」
奴隷達を掌に収め、真白は消えていった。
「あっ、待て!!悪党!!」
真白は去って行った。
「さてと、」
唯はユウヤの方へむき直し。
「ユウヤくん。君も元の世界に帰ったほうがいいんじゃないか?その、君の能力はこの世界ではちょっと大きすぎるというか……」
「……俺の能力はここでは何の役にも立たなそうだ」
「でも俺、帰れないんですよ。ここには“異界の靴“を使ってきたんですけど、同じ力は一度使うと一ヶ月は使えなくて」
ユウヤは拳を見つめながら言う。
横に居る精霊もショボーンとした顔をしている。
「俺の能力、強すぎて自分で実験するのも怖くて。誰かを傷つけそうで」
「そっか、じゃあ」
スマホを取り出す唯。そこにはあらゆる異の熟語。
「これ読みながら君が帰れる方法を一緒に探そう」
「え……」
「大丈夫です!!この人すっごく強いんで!!」
影から飛び出す遥。
「なあに、ある程度の被害なら受け止めて見せよう」
「私はさっきのアイツより強い」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
一仕事終えた一行は事務所に戻り軽い休憩を取っていた。
横ではなにやら遥が慌ただしく料理をしている。
「唯さん唯さん!!今料理中なんですけど!!この瓶の蓋が……」
「はいはい」
唯が手を掛けると。
ポンと蓋が抜ける。
あれだけ遥が力を掛けても抜けなかった蓋が軽い感触でいとも簡単に抜けてしまった。
「流石、ありがとうございます!!」
遥は急いでキッチンへ向かう。それを見て、
「やっぱり力は使い道あってこそだよねぇ……」
しみじみと呟く唯。
終
ここまで読んでいただきありがとうございます!!
最初の龍は実はこいつが生み出した仮想の存在です。
”居るだけで迷惑な存在”がテーマです。
いやー、久々の更新になりました。
次回も鋭意制作中です!!お楽しみに!!




