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徒手最強の女は、今日も殺さず”力技”で街の平和を守ります!!(旧タイトル 最強便利屋ユイは世界唯一の”二重覚醒”で今日も華麗に事件を斬る!!)  作者: 夢野 
現代編 パート2

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第十話 魔王の城

第十話を投稿します!!よろしくお願いします!!

――『便利屋ユイ』

ここには今日も奇怪な噂が漂う。


カチカチカチカチ……


事務所に響く、コントローラーの音。

「おはようございまーす……、え、ええええ!!!!唯さん、ゲームですかぁ!?」

「どうした」


画面にはダークファンタジー系の城探索ゲーム。最近流行の『デスティニーキングダム』というゲームらしい。

唯は夜通しやっていたのか、まぶたに隈を浮かべ、不気味な笑みを浮かべている。


まるで現実のような美麗グラフィックの世界で、

主人公が一人、ただひたすら世界を駆け回り攻略していく。

モンスターを斬る、斬る、斬る。

ダンジョンの奥へ吸い込まれて行くように進んでいく。


「面白いね、これ」

「初めて見ましたよ!?そんな顔」


その時、

ドアが開く。

焦った感じの女性が現れた、年齢は四、五十代。母親という感じの見た目をしている。


「不思議な事を解決してくれるところというのはここですか!?」

「はい、どうしましたか?」

「息子が!!このゲームをやった途端に倒れて!!」


喰い気味に詰め寄る女性。


「唯さん……例の怪奇現象じゃないですか?」

「えぇ、いやあれは都市伝説でしょ」


唯はお構いなしにゲームを続けている。

どうやらこのソフトには一部の噂で裏版というものが存在しており、

プレイした者の魂を吸い込むという逸話があるのだ。


「……いや」

唯は一瞬手を止めた。これも誰かの“能力“のだとしたら?

危険なことになる前に対処しなければ。

「わかった。調べよう」


「ありがとうございます!!」


さっそく母親から貰ったゲームソフトをプレイしてみた。


同じ画面、同じダンジョン。

進み続ける。


「見た目はあまり変わりませんね……?」

いや、何かが違う、唯がそう思ったその時……、


『勇者よ。目覚めなさい。』


唯は目を覚ました。立っているのは最初のプレイ画面である精霊の泉。

剣を取ることでゲームスタートする。


「やっぱり、私だけか」

「ねえこれ!!裏版なんでしょ!?どうやったら出られるの!?中に入った人達は!?」


唯は大声で叫ぶ。


『勇者……』


「うるさい!!」

唯は目の前にある剣を粉々に破壊した。


「うん、やっぱり能力は使えるのか。同じ能力同士、禁止する能力とかじゃないもんね」


『ゆ、ゆう……ゆ……。』

目の前の精霊が歪んでいく。

『侵入者検出。幽閉します』


ガシャン。

唯は気づくと牢獄に立っていた。


「……!!」


たしかここは罪人が囲われている地下の牢獄。ゲームで何度も来たことがある。

足下には衰弱した人々。様々な服装の冒険者達。その中から、唯は見つけたのである。

例の少年を。


『処罰を開始します』


ざわつく監獄の中、

ガシャン。ガシャン。という音を立てながら現れたのは巨大な鉄面皮。

その中から一人の男を見つけ出し……


「いやだ!!行きたくない!!」


泣きながら引きづられていく男。その看守の手を、


「待てよ。私が代わりに行こう」


わあああああああ!!!!殺せ!!罵倒が飛び交う。

これはフィールドの一つ、“闘技場“だ。


王国で何かしらの罪を犯すと個々に強制的に収監されイベントが開始する。

ガリガリガリガリガリガリ……

巨大な斧を持った男が現れる。そう『処刑人』だ。


「ウオオオオオオオオオオオ!!!!」


これと一対一の見世物が始まる。


これに勝てば、脱獄し、感心した王様から一つ願いを叶えてもらうことが出来る、らしい。

しかし、勝利は絶望的だ。


ただでさえこっちは武器は没収されているうえにこの囚人の服。

おまけに両腕には拘束具。脚には鎖。この不利な状況で戦わなければならない。


ほぼ百パーセント死亡確定の負けイベントだ。

徹夜で散々プレイしたが結局勝つことは出来なかった。海外のプレイヤーのクリア動画を見たことがあるが、まったくもって意味不明だった。


「ゲームならね」

ニヤリと唯は笑う。


バキイイイイイイン!!!

一息に鎖を引きちぎる。


動揺する処刑人。その隙を……。


「日頃の……恨み!!」


ドゴオオオオオン!!!!

正拳が処刑人の腹部にぶち当たる。そしてコロシアムの後方へと吹っ飛んでいった。

観客席に叩き付けられ、石壁が砕ける。


その前に立つのは唯。拳を鳴らしている。


「さーて。憂さ晴らし行きますか!!」


ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!


流星群のような連打!!

ドゴッ!!バキッ!!メキッ!!ドスッ!!


一撃一撃が空気を裂き、衝撃波が闘技場を揺らす。

処刑人の巨体が浮き、叩き付けられ、また浮く。


「アアアアアアアアアア!!!!」


処刑人は消滅した。


「すっきりした」


そこに王様の影。


『強き者よ!!私はお前が気に入ったぞ!!何か願いを叶えてやろう!!』


「じゃあ、この世界の管理者に合わせて」


『なに?私が王であるぞ?』


「違うよ。会いたいのはこのゲームの管理者。この都市伝説の原因に会いたいの。」


『私が、わた、わたわた……』


ビキッビキビキビキ!!!

その瞬間、影が歪む。


『我を呼んだか?』


「お前か。皆を困らせているのは」


『困らせているのではない。これは救済だ。楽しい世界に自ら居続けられる。これは救済だろう』


「救済?」


『そうだ。現実は苦痛に満ちている。勉強、人間関係、試験……だがここは違う!!敵を倒せば賞賛される。やればやるだけ強くなる!!平等で明確で正しい!!ここは誰もが最強の主人公になれるんだ!!そう!!我のようにな!!』


周囲のコロシアムや周囲の風景が変形していく。同化し一つの大きな人型に変貌する。

小柄な体躯の唯に対するは空を埋め尽くす巨大な邪神。


『どうだ?これが我とお前の差だ』


「弱い奴ってすぐ大きくなりたがるよね。虚勢?」


『強がるのも今のうちだ。行け、しもべたちよ』


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

嵐のようにふるモンスター達、瓦礫や木が唯に迫る。

四方八方を埋め尽くされてしまった。

もはや絶体絶命。そして、


「――智花」


承認 能力:智 解放 

現象解析 軌道、速度、質量計算。

言動解析 弱点仮定


「必殺 勇者解放(リベレイション・ブレイブ)」


飛来する瓦礫、軌道、回転。“管理者“の本体の位置。

全てが見える。線がつながった。


「行ける」


唯の神速の回避で右へ左へ、回避、その道中で立ちはだかるモンスターを破壊していく。

鎧騎士の剣を奪い返す刀で瞬殺、それをゴーレムの核に刺す。爆ぜたゴーレムの瓦礫を両腕で投げて空中で爆散。その欠片が群体型モンスターにぶつかり全弾命中。

バババババババババババ!!!!

全てが急所、最大効率。まさにチーターの類い。


しかし、唯の向かう先は“管理者”一直線ではない。

「あった」

まるで傘立てから傘を取るくらい雑に何かを抜き去っていった。


邪神の上層。

前に立ちはだかるのは魔王の配下である、四天王。

降りかかる火炎、吹雪、死の呪い、獣たちの突撃。


「はい、一撃!!」

『グアアアアアアアア!!!』

炎王は心臓をえぐり取られ消え去った。


「喰らえ!!」

『ヒエエエエエエエエ!!!』

手に掴んだ先ほど倒した炎王の心臓を投げつける。氷の女王は燃え尽きた。


「抜刀!!エクスブレイド!!」

剣をかざす、死の呪いが反射される。

『ギャアアアアアアア!!!』

闇の王は死に絶えた。唯の勢いは止まらない。


「ラスト!!!!」

一閃。四天王の一人、斬ったのは獣王の仮面。そこにかけられた呪いが霧散する

『私は人間だったのか……!!!』

動物たちを縛る鎖が溶け歓喜する動物だった人々。元人間の国王は泣きながら去っていた。



邪神上層。遙か彼方。

その光景を見ていた管理者が驚いている。

『あ、あれは正しき者に宿り、魔を断つ聖剣エクスブレイド……!!なぜ奴が!!』

「ほら」

管理者は慌てて振り向く。その先には唯。


「最強ってさ、つまんないじゃん?」


『やめろおおおおおおおおおお!!!!』


ドゴオオオオン!!!!


邪神の核。それが一閃される。空に皹が入り、光が弾ける。

ぼろぼろと空間は砕け、景色が白んでいく。


静寂。


世界に空いた穴。そこから、一人の影。

ゆっくりと落ちてくる。それは、あの囚われているはずの少年だった。


「やっぱりか……少年。いや、」

「――天野遊斗くん」


唯はそれを受け止める。


「……終わったのか」

「せっかく最強だったのにね」

唯は肩をすくめる。遊斗はうつむいたまま、何も言わない。

拳がわずかに震えている。


「一人で最強なんてさ……つまらないよ」


唯がぽつりと言う。

誰も居ない場所でただ、ずっとずっと一人戦い続けた記憶。孤独で最強。

それはまさに久遠唯そのものをあらわす言葉。彼女にとってそれはとてもつまらないものなのだろう。


「ま、強いのはいいことだけどね、なにか、友達とか……」


男の子はうなだれる。


「友達、居ないのか?」

「転校してからいじめられてて、居場所がなくて、それでゲームばっかしてて……」


ため息をつく。バシッ。軽く背中を叩く。

そして一言。


「私が友達になってやる。いつでも遊びに来い。」

――――――――――――――――――――――――――――


ピコピコピコ……。カチカチカチ……。

今日も『便利屋ユイ』の事務所には電子音とコントローラーの音が響く。

ガチャとドアが開く。


「おはようございまーってあれ!!唯さん。またゲームですか!?って増えてるし!!」


事務所のテレビの前に居るのは目に隈をこしらえた二人であった。


終


ここまでお読みいただきありがとうございます!!

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