第140話 エピローグ3・教皇
俺は王室に来ていた。王室といってもテントの中心にボロいイスを置いただけの簡易的な場所だ。
女王の横には、茶髪の中年近衛兵シトローンが立っている。俺を視認すると、眉根を寄せた。
「まさかダーク老師がこんな若造だったとは……いや、失礼だったな。若さは関係ない。シロ殿が教えてくれた」
「あはは、騙して申し訳ないです」
「いや、シロ殿が正しかった。私の方が精神的に若造だったようだ」
初めて会った時は怖い感じだったけど、今はただのおじさんだ。
「それよりもダーク老師を貸してくれないか? 自分で動かして遊びたい」
お人形遊びすなー!
なんとかあしらって、続いて女王マルメロに視線を送る。
「おい、ゼロ。暇じゃ」
「誰がゼロですか。シロですよ」
「似たようなもんじゃろ。それにしても——」
イスに深く腰掛けるマルメロ。編んだ金髪が少し乱れる。それでも美しく見えるのは女王の肩書きのおかげかな。
「お主が来てから激動の日々じゃったな。まさか本当に世界平和を実現するとは思わなかったのじゃ。改めて礼を言おう。感謝する。ありがとう」
金髪碧眼のロイヤルな笑顔が眩しい。
「ひとつだけ言わせてくれなのじゃ。ここだけの話、ゼロよりポテトの方が好きじゃった。ポテトの方と話したかったし、団長もポテトがやればいいと思っておった」
は? ……お尻ぺんぺんしていい?
俺が不敬罪一歩手前まで身を乗り出していると、横の女の人が声を発した。
「楽しそうねぇ」
そこには金髪癖っ毛の“教皇”ナナバさんが座っていた。
大司教派がどうとか、男がなるべき女がなるべきとか、色んな柵をふっ飛ばしてなぜかナナバさんが教皇になってしまったらしい。
まぁよく分かんないけどナナバさんは聖母みたいな人だしいいんじゃないか?
修道院にいた子供達は他の修道女さんが面倒を見てくれている。安心だ。
「私が教皇だなんて……これからはみんなの心を掌握できるのですね」
ん? 掌握? ちょっとヤバいか? 聖戦に参加した時からちょっと怪しい雰囲気はあったしな。
「うふふ、今の言葉は冗談です。国民の皆様には秘密ですよ?」
彼女が自身の口に人差し指を当ててイタズラに笑う。
かわいい。そんな彼女もみんなのママになってしまうのか。思わず、ママー行かないでー、とでも叫びたくなるが辞めておこう。俺の立場が危うくなるからな。
俺はクソみたいなことを思い浮かべながらナナバさんに笑い返した。




