第2192話 過ぎ行く日々1(1)
「・・・・・・早いもんだな。もう春か」
暖かで心地のいい風がサッと吹く。その風に長い前髪を揺らされた影人は、春の訪れを感じそう呟いた。
今日の日付は2月28日。2月は今日で終わり明日から3月になる。桜が咲き始める頃であり、別れの季節だ。昼休み、風洛高校の校舎裏で弁当を食べながら影人は時の流れを感じずにはいられなかった。
(俺が蘇ってまだ正確に1年は経ってないが・・・・・・この1年は色々あったな・・・・・・)
影人が2度目に蘇った日は4月12日。あの日から今日に至るまで本当に色々な事があった。零無との事、フェルフィズとの事、異世界に行った事、イズとの事。
「マジで濃かったな・・・・・・なんなら日常も濃かったし・・・・・・冷静に考えて、何で俺はクリスマスとかバレンタインに戦ったりしてたんだ・・・・・・?」
今考えてみてもよく分からない。まあ、世の中には考えても分からない事はある。影人はクリスマスとバレンタインの記憶を振り払うと、卵焼きを口に放り込んだ。
「・・・・・・ごちそうさまでした」
弁当を食べ終えた影人は両手を合わせた。スマホで現在の時間を見てみると、昼休み終了まであと20分ほどある。影人は現代人らしく、残りの時間をゲームで潰した。
「っと、もうこんな時間か。確か、次の授業は移動教室だったな・・・・・・そろそろ戻るか」
スマホをズボンのポケットに突っ込んだ影人は空の弁当箱を持って立ち上がった。
「ねえ、そろそろ先輩たち卒業だけどプレゼント何にするか決めた?」
「いや、まだ。そろそろ本気で決めとかなきゃマズいよね」
「まあね。卒業式って確か3月14日だし。大体あと2週間くらいしかないからね。じゃあ、今日部活終わったらちょっと話さない? どっかで何かつまみながらさ」
「いいよ。せっかくだから、莉央と杏奈にも声かけよ」
「りょーかい。じゃ、2人には私から声かけとくね」
影人が廊下を歩いていると、前方の女子生徒たちの会話が聞こえて来た。察するに卒業する部活の先輩に何か贈り物をするようだ。この変人ばかりの高校で後輩に慕われている者がいるとは。影人はほんの少しだけ感動した。
「卒業か・・・・・・」
教室に戻り自分の席に座った影人は無意識にそう言葉を漏らした。さっきの女子生徒たちが言っていたように、もう後2週間ほどで今の3年生は卒業する。今の3年生、つまり陽華、明夜、イズ、暁理、光司、A、B、C、D、E、Fたちは、もう本当にあと少しでこの学校から去ってしまうのだ。
その事については、別に影人は寂しさなど全く感じていない。A〜Fたちとは魂で繋がっているし、本当の意味での寂しさはない。陽華、明夜、イズ、暁理、光司たちに関しては、いない方が影人は快適な学校生活が送れるのでさっさと卒業してほしいとしか思っていない。強がりだとか捻くれているわけではなく、影人は本気でそう思っていた。こいつは本当にマジでガチモンの欠陥前髪である。




