第2190話 バレンタイン恋騒劇17(5)
(くそっ、ハメられた・・・・・・!)
影人がはいと答えれば、光司は普通にこのチョコを影人に渡すだろう。仮に影人がいいえと答えても、勝負は影人の勝ちで結局このチョコを受け取る事になる。つまり、どっちにしても影人はチョコを受け取る事になるのだ。
「・・・・・・香乃宮、お前それは卑怯が過ぎねえか」
「それは重々承知だよ。でも、勝負は勝負だ。そして、君はそれを受けた。そろそろ、答えを頂戴してもいいかな?」
「・・・・・・ちっ! いいえだ」
どちらにせよチョコを受け取らなければならない事に変わりはなかったが、素直にはいと言いたくなかった影人はそう返答した。光司はそんな影人の答えを――正確には性格を読んでいたのだろう――やっぱりといった感じで笑った。
「残念。僕の負けだ。じゃあ、君の勝ちだからこれを渡させてもらうよ」
光司は全く残念ではなさそうに影人にチョコを渡して来た。影人はそれを受け取るしかなかった。
「マジで納得いかねえ・・・・・・」
「世の中はそういう事もあるよ」
「理不尽を押し付けて来た奴が理不尽を語るんじゃねえよ。・・・・・・ちっ、言いたくねえが一応言っとく。ありがとな」
渋々といった様子で影人は光司に感謝の言葉を述べる。例え、不本意だったとしても贈り物をもらったのだ。感謝の言葉を述べなければ、人としてあまりにもアレだろうと影人は思った。
「どういたしまして。帰城くんって律儀だよね。やはり君は素晴らしいよ」
「意味不明な事を言うな! おい零無、ナナシレ! どうせお前らも同じだろ! さっさとしろ!」
「そんな!? それはあまりに雑過ぎるぞ影人!」
「そうですよご主人様!」
「うるせえ!」
ショックを受ける零無とナナシレを影人は乱暴に怒鳴りつける。そして、影人は零無とナナシレから先程の光司と同じ質問を受け、2人からチョコを受け取った。
「ううっ、酷いよ影人。あんなのは流れ作業だ・・・・・・」
「私も零無様に同意です・・・・・・」
零無とナナシレは意気消沈していたが、影人は2人を無視する。そして、大きく息を吐いた。
「ふぅ・・・・・・今度こそ、本当に終わりだな。じゃあ、悪いが俺は先に失礼させてもらうぜ。今日はちょっとマジで疲れてるからな」
影人は自分が勝ち取った全てのチョコを袋――シェルディアが用意してくれていた――に詰め込むと立ち上がった。
「そうね。今日はよく頑張ったわ影人。お疲れ様」
「バイバイ!」
「アディオスよ」
「ちゃんと食べろよな」
「さっさと帰ってください」
「感想、絶対聞かせてね♪」
「よい夜を」
「ゆっくりと休むといい。また会おう」
「また明日。影人さん」
「さよならです影人」
「ふん。またな」
「じゃあね」
「いいですか。ちゃんとレイゼロール様のチョコを食べるんですよ」
「またの」
「では」
「また神界に茶でも飲みに来ておくれ〜」
「バイバイ影人くん」
「今日はありがとう。気をつけて帰ってね帰城くん」
「また来てね」
「おい影人。今度はコーヒーを頼めよ。俺様が直々に淹れてやる」
シェルディア、陽華、明夜、暁理、イズ、ソニア、ロゼ、アイティレ、キトナ、ソレイユ、レイゼロール、ゼノ、フェリート、白麗、シトュウ、ガザルネメラズ、レゼルニウス、光司、シエラ、シスが影人に別れの挨拶を述べる。影人は「ああ」と片手を上げると、「しえら」を後にした。影人に憑いている零無と、影人に宿っているナナシレも影人と共に外に出たのだった。




