第2189話 バレンタイン恋騒劇17(4)
「おいどうする? 吾が考えていた勝負方法は1人用のものだ。複数人を想定してはいない」
「私もでございます。複数人でご主人様に勝負を挑み、かつ確実にご主人様に勝っていただく方法となると・・・・・・中々思いつきませんね」
「帰城くんに確実にお菓子を渡せる勝負方法なら1つだけ考えたよ。こういう方法なんだけど・・・・・・」
光司は零無とナナシレに小さな声でその勝負方法の内容を伝えた。
「・・・・・・確かに、その方法なら確実にご主人様に勝っていただく事が出来ますね。些か、というかかなり卑怯な方法ではございますが」
「だが、それだと全く影人とイチャイチャ出来ないぞ。チョコを渡すのも大事だが、吾は影人とイチャイチャしたいんだ!」
「それは私もでございます。ですが・・・・・・」
「僕たちの第1の目的はさっきナナシレさんが言ったように、帰城くんにお菓子を渡す事です。何を優先すべきか、聡明な零無さんになら分かりますよね?」
「・・・・・・おい人間。お前、先程から吾を諭しているつもりか」
零無は不快さを隠さぬ顔を光司に向ける。零無は常人なら震えて泣き出してしまうほどの中々にえげつないプレッシャーを放っていたが、しかし光司は涼しい顔でかぶりを振った。
「まさか。僕はあなたよりも上だとは無意識にも思っていませんし、そこまで驕ってもいませんよ。零無さん、僕たちは帰城くんにお菓子を渡したい同志です。僕の言葉は真心から出たもの。どうか、その事を分かっていただきたいです」
光司は物怖じせず、真摯に零無に自分の想いを伝える。光司の言葉を受けた零無は少しの間ジッと光司を見つめた。
「・・・・・・ふん。いいだろう。今回は貴様の意見に耳を貸してやる。吾は寛大だからな」
「ありがとうございます」
零無はつまらなそうな様子で光司の言葉を聞き入れた。光司は零無に感謝の言葉を述べると、影人の方に顔を向けた。
「帰城くん、勝負の方法が決まったよ」
「ちっ・・・・・・で、どんな方法だ」
影人は舌打ちをするとタイマーを消した。影人に促された光司は影人に勝負の方法を告げた。
「簡単ですぐに済む方法だよ。今から僕たちは帰城くんにある質問をする。その質問に帰城くんがはいと答えれば帰城くんの負け。いいえと答えれば帰城くんの勝ちだ。どうだい、シンプルだろう?」
「・・・・・・確かにバカみてえにシンプルだな。いいぜ、それならすぐに終わりそうだ」
影人は光司の提案した勝負方法を了承した。
「ありがとう。じゃあ、僕から。ああ、帰城くんに投げかける質問は僕たち全員同じだから安心してほしい。もう1度だけ言っておくけど、帰城くんがはいと言えば僕たちの勝ち。帰城くんがいいえと言えば僕たちの負けだ」
「くどい。早くその質問とやらをしろよ」
影人が光司に促しをかける。光司は「ごめん。でも大事な事だから」と苦笑した。
「質問を始めるね。帰城くん、これを受け取ってくれませんか?」
光司は懐から綺麗に包装された小さな白い箱を取り出した。箱の表面には、見知った高級チョコの店の名前が英語で書かれていた。
「っ・・・・・・」
光司が受け取れと言っているのは、どう見てもバレンタインチョコだった。そこで、ようやく影人は気づいた。




