第2186話 バレンタイン恋騒劇17(1)
「こ、香乃宮・・・・・・? な、何でお前が・・・・・・」
光司の姿を見た影人は震えた声でそう呟いた。
「え、香乃宮くん!?」
「意外な人物の登場ね・・・・・・」
まさかの光司の登場に陽華と明夜は驚いた様子を見せた。
「香乃宮くん・・・・・・ここで香乃宮くんかぁ。何だか凄くアレな予感がするけど、気のせいかな・・・・・・」
「いえ、あなたの予感は恐らく正しいですよ早川暁理。今まで観測データから予測を立てましたが、ここから香乃宮光司が帰城影人に何かする確率は99パーセントです」
「ええ・・・・・・やっぱり?」
一方、暁理とイズは光司を見てそんな会話を交わした。
「いらっしゃい」
「やあ」
「ハロー」
「『騎士』か。奇遇だな」
「こんにちは」
「まあ、また顔見知りの方が。こんにちは」
他の者達は光司を見ても特に驚いた様子はない。店主であるシエラはいつものように来店を歓迎する言葉を、ロゼ、ソニア、アイティレ、ソレイユ、キトナは光司に挨拶の言葉を送った。それ以外の者たちはジェスチャーで光司に挨拶をする者もいれば、特に光司に反応を示さない者もいた。
「何だお前。邪魔をするな。吾は今から影人に手作りチョコを渡すべくイチャイチャ勝負をするんだ」
「これは光司様。ご機嫌麗しゅうございます。ですが、今は零無様が言うように取り込み中でして。私もご主人様に手作りチョコを渡すべく、ご主人様と勝負をしなくてはならないのです」
零無は光司を邪魔そうに睨み、ナナシレは光司に自分の状況を伝える。2人の言葉を聞いた光司は「?」と首を傾げた。
(そりゃ首を傾げるわな・・・・・・)
光司の反応は尤もだ。急にそんな訳のわからない事を聞かされて状況を理解できる人物なんていない。影人がそんな事を考えていると、光司は得心した様子で頷いた。
「ああ、なるほど。皆さんはバレンタインのチョコを帰城くんに渡すために勝負をしていたんだね。確かに、帰城くんは素直にお菓子を受け取るような性格じゃないからね。それで、お2人も今からその勝負をするんだね」
「なっ・・・・・・」
だが、なぜか光司はすぐに状況を理解した。影人は思わず驚きの声を漏らす。まさか、今の零無とナナシレな言葉だけで答えに辿り着いたというのか。さすがは香乃宮光司。恐るべしである。
「ほとんど正解よ。でも、勝負は影人が負けたらお菓子を受け取る、という事じゃないわ。影人が勝ったらお菓子を手に入れる事が出来るといった形式よ。だから、そこにあるお菓子は影人が勝ち取って得たものというわけ」
「なるほど。確かに、帰城くんは勝負となると何だかんだ手は抜けない所があるし、そちらの方が作り手も嬉しいし気持ちがいい。みんながより幸せになれる形式だ。素晴らしいです」
シェルディアの補足の言葉に光司は納得した様子で称賛の言葉を述べる。いったい何が素晴らしいのか。全く分からない。影人には光司の感性が理解出来なかった。
「それで香乃宮くんは何でここに? 普通にお茶に来ただけ? それとも・・・・・・」
明夜はチラリと影人の方に目を向けた。明夜はつまり、影人が目当てかと暗に言っているのだ。明夜の言わんとしている事を察した光司は軽く苦笑する。
「半分半分といったところかな。『しえら』でお茶も飲みたかったし帰城くんにも会いたかった」




