第1298話 闇の女神と吸血鬼との再会(4)
「貴様・・・・・・いったい何者だ? どうやら、影人とは顔見知りのようだが・・・・・・」
「率直に聞くけれど・・・・・・敵か味方どちらなのかしら?」
シトュウの事を知らないレイゼロールとシェルディアが訝しげな顔でシトュウにそう言葉を放った。
「私が誰なのか。それは後ほど話しましょう。そしてもう1つの問い、私が敵か味方かという問いですが・・・・・・少なくとも、私は彼女とは対立しています。そういう意味では、あなた達の味方と言えるでしょう」
2人の問いかけにシトュウはそう答える。そして、シトュウはそのオッドアイを再び零無に向けた。
「今答えた通りです。もし、あなたがここで戦うというのならば、私も彼女たちに加勢します。あなたと対等の力を持つ私に、彼女たち2人。いくらあなたでも、勝つ事は難しいはずです」
シトュウが零無に脅すようにそう宣言する。零無がシトュウから奪った力は、ちょうど半分。つまり、今の零無とシトュウは完全に力が均衡している存在だ。そこにレイゼロールやシェルディアが加われば、形勢がどうなるかは分かりやすい。
ちなみに、神界の神々は最初から地上にいたレイゼロールを除き、地上に降臨した際には様々な制約を受け、神力を振るう事が出来ない。それは、基本的には真界の神々も同じだ。
だが、『空』だけは唯一その例外だ。つまり、『空』の力を持つシトュウと零無はこの地上世界でその最上位の神としての力を振るう事が出来る。それが全ての存在の頂点に立つ存在としての力だからだ。『空』を縛るモノは、何処にも存在しない。
「・・・・・・ちっ、奪った力を半分だけにした情けを無下にしやがって。やっぱり情けなんかかけるものじゃないな。・・・・・・分かったよ。非常に癪だが、ここは1度退いてやる。ああ、本当に癪だがな」
零無は苛立ったように舌打ちをすると、最後に影人を見て笑みを浮かべた。
「すまないな、影人。しばしの別れだ。だが、必ず吾がお前を迎えに行くからな。吾は常にお前と共にある。その時まで、デートスポットやらを探しておくぜ。じゃあ、さらばだ」
零無はそう言うと、透明の粒子となって一瞬でこの場から消え去った。それはどこかに転移したという事なのだろうが、影人には蘇ってからの一連の光景が悪夢であったように感じられた。
「・・・・・・退きましたか。まあ、今はこれでよしとしましょう」
零無がこの場から去った事を確認したシトュウは、軽く息を吐きながらそう呟いた。本当ならば、一刻も早く零無から『空』としての力を取り戻さなければならないが、ここで焦って零無を追うのは危険だ。シトュウは零無と長い付き合いだからこそ、力を持った零無の危険性を知っているし、また警戒していた。
(それに、あの方は必ず現れる。彼の前に・・・・・・)
シトュウがチラリとその視線を背後にいた影人に向ける。零無の狙いは明らかだ。零無は先ほどの言葉通り、再び影人の前に現れる。零無から力を取り戻すのはその時だ。
「・・・・・・ちくしょうが。まだ悪い夢を見てる気分だぜ。まさか、あいつが復活したなんてよ・・・・・・」
一方、シトュウに見られている影人は、右手で頭を押さえながら、そんな言葉を漏らした。影人の言葉には、疲れと絶望が滲んでいた。
――こうして、最悪の人物の手によって、帰城影人は再び蘇った。だが、その前途は暗く多難。過去に封じた亡霊を、影人は再び乗り越える事が出来るのか。
――帰城影人の新たな戦いが、ここに幕を開けた。




