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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第1268話 変身ヒロインを影から助けた者(2)

「よっこらせっと・・・・・」

 学校に到着し自分の座席についた影人は、鞄を机の上に置き一息吐いた。そして、鞄から教科書を出して机の中に入れる。影人はあまり真面目な生徒ではないので、基本的に教科書やノートは机の中に入れっぱなしだが、今日は置いている教科書だけでは足りないため、家から必要な教科書を持ってきたのだ。

「・・・・・そろそろか」

 5分ほどスマホを眺めていた影人は、スマホの画面の端に表示されている時間を見た。時刻は午前8時29分。つまり、()()()()()

「――ぬわぁぁぁぁ! 今日もヤバい! ヤバい明夜! あとちょっとで遅刻しちゃう!」

「分かってるわよ! ああ、もう本当に私たちって!」

 影人が窓から正門の方に視線を移すと、ちょうどそんな声が窓の外から聞こえて来た。影人がそのまま校門の方を見続けていると、2人の少女が走っているのが見えた。この風洛高校では知らない者はいない有名人、朝宮陽華と月下明夜の名物コンビである。2人はいつも通り、遅刻と戦っていた。

「ったく、レイゼロールを浄化して世界を救ったって言うのに・・・・相変わらずだな・・・・」

 風洛高校の日常風景と化したその光景に、影人は呆れたようにそう言葉を漏らす。世界を救った英雄だというのに、あの2人は全く変わらなかった。

「ふはははッ! 今日こそは負けんぞ朝宮、月下!」

 校門に手を掛けている男。風洛高校の体育教師、上田勝雄34歳が高らかな笑い声を上げ、そう言った。相変わらず、大人げないなと影人は思った。

 ちなみに、お見合いなどは悉く失敗し、今まで独身で彼女もいなかった勝雄であるが、どうやらつい先日に念願の彼女が出来たらしい。風の噂によると、交際相手は10歳下の女性らしい。元々はフリーターらしかったが、何でも今は人生一発逆転を狙っているため、北の海で蟹漁に行ったりしているとの事だ。その噂を聞いた時、影人はどんな命知らずの女だと思った。端的に言って、度胸がイカれている。

「すみませんが、私たちは今日も負けませんよ! ね、明夜!?」

「あたぼうよ陽華! 私たちは止まれない! 若さ溢れる10代の暴走機関車、それが私たちよ!」

 2人は勝雄にそう言葉を返すと、ラストスパートと言わんばかり更にスピードを上げた。校門までの距離はあと数メートル。だが、そんなタイミングでキーンコーンカーンコーンとチャイムの音が鳴った。

「いいや、今日こそお前らの負けだ! 今こそジムでの筋トレの成果を見せる時! ふんッ!」

 勝雄は凄まじい力で開いていた門を閉め始めた。その門を閉めるスピードは今までよりも速かった。

「「間に合えぇぇぇぇッ!!」」

 2人があと少しで門に到着する。だが、しかし

「今日こそ俺の勝ち! お前たちは遅刻だ!」

 勝雄がその前に門を閉めた。

「いや!」

「まだよッ!」

 しかし、2人はそれでも諦めずに加速し続ける。そして、思い切り踏み込みを行うと大きくジャンプし、2人は右手で門の上部に手を着き、門を飛び越えた。

「なっ!?」

 勝雄は門の近くにいた自分すらも飛び越えて行く2人に驚いた。少し大事な事なので触れておくと、2人はスカートの下に体育用の半ズボンを履いていたため、パンツは見えなかった。健全と言えば健全である。

「とう! 明夜!」

「ええ、陽華!」

「「イェーイ!」」

 華麗に着地した2人は互いの顔を見つめ合うと、ハイタッチをした。その光景を教室から見ていた影人以外の風洛高校の生徒たちはパチパチと拍手をし、「さっすが名物コンビ!」「いいぞー!」などと囃し立てていた。アホばかりだと影人は思った。

「あっ・・・・」

「あら・・・・」

 影人が2階の窓から陽華と明夜を見続けていると、2人が顔を上げて影人に気がついた。2人は影人の方を見ると、笑顔でVサインをしてきた。

「けっ、呑気な奴ら・・・・」

 自分にそんなサインを送って来た2人を見た影人は、呆れたようにそう言葉を漏らす。だが、影人の唇の端は僅かに上がっていた。

「おー、今日もクソ寒いな。お前らホームルームだ。席につけよー」

 教室前方のドアが開き、影人のクラスの担任である榊原紫織が入って来た。生徒たちはバタバタと急いで自分の席に戻り始める。

「さて、今日も今日とて・・・・・・・・」

 今日が始まる。影人がそう呟こうとして顔を正面に戻そうとした時、


 突如として、ぼうっとした黒い小さな光が、影人の右手からふわりと出た。


「・・・・・・・・・・・・ああ、()()()()()

 自分の右手から出た黒い粒子を見た影人は、ボソリとそう呟いた。

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