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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1004/2165

第1004話 カケラ争奪戦 イタリア5(1)

 ファレルナがその言葉を呟いた瞬間、世界を純白の光が染め上げた。その輝きに誰も彼もが目を細める。

 ――そして数秒後、輝きは収まった。

「・・・・・・・・それが、君の光臨した姿か」

 初めにそう呟いたのはゼノだった。

「――はい、そうです。これが、私の覚悟の姿。あなたを必ず光に還すと真に誓った姿です」

 ゼノの言葉を受け、ファレルナは真剣な顔で、しかし慈愛の色も混ざったような顔を浮かべながら、そう言葉を放った。

(っ、あれが聖女サマの光臨・・・・・すげえな。マジで天使みたいじゃねえか・・・・・・・・)

 光臨したファレルナの姿を見た影人が素直に思ったのはそんな事だった。事実、光臨したファレルナの姿を一言で表すとするならば、影人が抱いた感想が最も適当であろう。

 光臨したファレルナの姿は大きく変化していた。まず、衣装だがこれはそれほど変わっていない。変わらずに白を基調とした修道服のようなものだ。ただし光臨前とは違い、その衣装には美しい金の刺繍が入っていた。

 ファレルナの最も変化した箇所は、その頭部と背に現れた。まず頭部だが、ファレルナの頭頂から少し離れた空中に光の輪、いわゆる光輪が顕現していた。そして、背中の箇所。この箇所が視覚的に最もインパクトがあるものだった。

 ファレルナの背中、そこには何と3対6枚の、純白の翼が顕現していたのだ。その全体的なビジュアルは、まさに天使。しかも、その最上である熾天使を想起させた。それ程までに、光臨したファレルナの姿は神々しかった。

「へえ、『破壊』の傷口が治って来てる。でも回復の力って感じじゃないな。・・・・・そうか。その身に溢れる高過ぎる浄化の力・・・・浄化の神気とでも言えばいいのかな。それが『破壊』の闇よりも上回っているのか」

 ゼノは少し興味深そうにそう呟いた。ゼノがファレルナに触れた事によって、首を基点に刻まれた黒いヒビ。それはファレルナの胴体や顔にまでも侵食していたが、急速にその黒いヒビは小さくなっていった。

「まあ、そんな事はどうでもいいか。俺らがやってるのは戦いだ。互いの生存を懸けた殺し合い。言葉はいらないもんね」

 ゼノはフッと笑うと、ファレルナをジッと見つめた。ゼノは変わらずに周囲の物を破壊し、闇の粒子となったそれらを自身に吸収していた。そして、その体からは闇が噴き出し続けている。周囲の建物や舗装された道路は既にほとんど崩壊しているが、ゼノの力は収まる気配がなかった。

「戦う事は罪です。しかし、悲しい事に人には戦わなければならない時があります。だから、私はその罪を背負います。その罪を贖うためにも、私は生きます」

 ファレルナは一瞬伏し目がちになるも、キッとした目でゼノを見つめた。次の瞬間、ファレルナの全身からどこまでも澄んだ白い光が嵐のように流れ出た。

「っ、この光・・・・これが、光臨した『聖女』なのか・・・・・・・・」

 ゼノに蹴り飛ばされヨロヨロと立ち上がったエリアは、どこか呆けたようにそう言葉を漏らした。今は戦闘中のはずなのに、エリアはファレルナから目を離せずにいた。それは、ひとえにファレルナの神々しさゆえだった。そして、エリアは気がついていないが、ゼノに蹴られた際に体に刻まれた黒いヒビは、光臨したファレルナの光を浴びた事によって、その跡がファレルナ同様小さくなっていった。

(うっひゃー・・・・・・・なんか、すげえな・・・・)

 ファレルナの姿に目を奪われていたのは壮司も同じだった。いや、それを言うのならば壮司から少しだけ離れた場所にいる影人もか。ただ、2人とも最低限の警戒はしていた。2人が動かないのは、相手が何も行動を起こさないからだ。それゆえに、一種の膠着状態のようなものが展開されていた。

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

 ファレルナの赤みがかった茶色の瞳と、ゼノの琥珀色の瞳が交錯する。光の浄化の神気纏う白い嵐と闇の『破壊』の力纏う黒い嵐。対照的な2人のその姿は、いっそのこと美しかった。

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