第1002話 カケラ争奪戦 イタリア4(3)
輝き続ける圧倒的な浄化の光。それを黒く染め上げ吸収し続けるゼノ。光は間違いなくゼノを弱体化させているが、ゼノは光を闇へと変換し自身の力へと換えている。更に周囲の物を破壊し、闇として吸収する速度も先ほどよりも速くなっている。既に、近くの建造物は半分ほど崩壊していた。
だが、ファレルナの光が最大浄化技で、最大出力であるという事に対して、ゼノの喰らう力が無際限であるという性質が決定的な差となった。最大出力をずっと維持する事など、誰にも出来はしない。それは規格外の力を持つ『聖女』とて同じ事だ。ファレルナの光は徐々にその出力を落とし始めた。
「くっ・・・・!?」
「どうしたの? 光が弱くなってきたよ」
苦しげな顔になるファレルナ。そんなファレルナとは裏腹に、ゼノはぼんやりと笑う。そして、その拮抗はしばらく続き――
――やがてファレルナの最大浄化技の光は、その輝きを落とした。
「あ・・・・・」
「終わり、かな。君のおかげでだいぶ力が戻ったよ。光も弱まった今なら、また多少は好きに出来る」
そんな声を漏らしたファレルナにゼノはそう言葉を述べると、自身の左の黒腕をファレルナに向けた。すると次の瞬間、ゼノはエリアとファレルナに急接近した。先ほどもファレルナに近づいたこの方法は、自身とファレルナの間の空間を壊す、という無茶苦茶に過ぎる方法だ。間の空間が壊されから、距離はなくなる。それは世界の一部を改変するゼノの力の一端を示していた。
「っ、またか! 『せ――!」
「どけよ」
今度は近くにいたエリアがファレルナの前に立ち塞がる。そして銃をゼノに向けようとするが、それよりもゼノが速かった。ゼノは右足で乱雑にエリアの腹部を蹴り、そのままエリアを蹴り飛ばした。
「がはっ!?」
メキメキと嫌な音を聞きながら、エリアは10メートルほど蹴り飛ばされた。ゼノの右足にも『破壊』の力は纏われていたが、ファレルナの光の近くにいたからか、すぐにエリアの全身がバラバラになる事はなかった。だが、ゼノの『破壊』の力がファレルナの光や周囲の物を吸収して強くなっていたのもまた事実。蹴られたエリアの腹部には黒いヒビがパキリと入っていた。
「『銃撃屋』さん!?」
ファレルナが蹴り飛ばされたエリアに心配するような声を上げる。そんなファレルナの首を、ゼノは右の偽腕で掴んだ。
「あぐっ・・・・・!?」
「今度こそ終わりだよ」
偽腕に首を締め上げられるファレルナが苦しみ悶える。ゼノの偽腕は『破壊』の力の結晶体のようなもの。浄化の力を持つ光導姫といえども、今のゼノのその力に抗えるものではない。掴まれたファレルナの首から、黒いヒビが徐々に広がり始める。
(っ、ありゃマズイ! 『銃撃屋』の奴も蹴飛ばされやがったし、今度はいよいよだぜ・・・・! どうする? 助けに行くべきか? いや、だがそれはスプリガンが許さないだろうし、どうする、どうする・・・・・!?)
壮司は内心でそんな事を考えた。この場合どうするべきか。このまま放っておけば、ファレルナは今度こそ殺される。先ほどファレルナを助けてしまったという事もあり、壮司の心は揺れていた。




