十九話・大号令
【T市─廃墟街─無人駐車場】
暗がりの中、人ひとりいない廃墟街の駐車場で、教会幹部『ホーライ』、『ゼノン』は“虚無のロスト”の突然のエゴロスト化を目の当たりにしていた。
そして今、そんな“王”と称する虚無のロストの能力により複製されたロストらが集結し、囲まれることになる──。
◆◇◆
「私ノ…私の…ジャマ…邪魔をするな…。」
黒い球体の“虚無のロスト”は天高く舞い上がり、更に闇を深める。
“音”が“声”となり、醜い感情がむき出しとなるその姿は、ホーライらと同様“完全体”そのものであった。
「王は…私であり、“唯一無二”なのだ。私と“同じ者”など…要らない…。」
そう言うと、辺りにあった闇が段々と晴れ、その姿が露になるのだった。
──そしてそれは球体だった“体”から手足が生え、肥大化していた。
“それ”はヒトと同じ肌の色と姿形をするものの、歯が刃のように異様に尖り、背中から羽の様な奇怪なものが生えている。
虚無のロストは左手を広げる動作をする。
その動作の直後、そこに黒いオーブを纏う長い剣が現れ、手にするや否やゼノンとホーライがいる場所に剣先を向け、言葉を放つ。
「…まずは邪魔をするお前らからだ。【影呼・暴】。」
虚無のロストはそう言うと指を鳴らす。
すると次の瞬間、彼の右手から黒く、稲妻のように力強いナニカをホーライは感じ取る。
「…ゼノンさん。これはまずいですね。一旦退くことを推奨します。」
「ハハハッ。貴様、怖気づいたか。この数なら我々でも余裕であろう。」
「気付いていないのですか?虚無のロストの“能力”について。」
「あぁ…。“存在しうるロストの複製し、呼び出す能力”であろう…?」
その時、ゼノンは思いついたようにホーライに問いかけようとする。
「…ん?まさかとは思うが…教会側のエゴロストも対象になるというのか?」
──そしてその直後、ジリジリと音を立てる何かがホーライに追突する。
「……。」
ホーライはその攻撃を察知すると、何かに気付いたように声に出す。
「ッ…。ん?…ライザさん?」
ホーライが見たその姿は、絶対にこの場にいないであろう、能力【雷醒】を発動させた“ライザ”であった。
「ライザだと?そんな嘘は面白くはないぞ。ホーライ…。うぐッ!?!?」
「……。」
──ゼノンは薄黄色髪のエゴロスト“アルゼル”に左腕を刈り取られていた。
「…ッ。アルゼル…貴様ッ!!」
ゼノンの左腕は消えていくと、ゼノンは悶え始める。
「ぐぁぁぁ…ッ!!アルゼルッッ!!!」
「……。」
「【雷醒・暴】」
「【破砕・暴】」
その叫びに、アルゼルは拳を振り上げ、ライザ自身の雷の爪を剝き出しにし、無感情のまま、ホーライらに攻撃を仕掛け始める。
「ふふ…まずは虚無のロストをどうにかしなければなりませんね。」
「…ッ。ホーライ貴様、この状況で何故笑っている。」
「…ご想像にお任せします。」
「…やはり貴様は気色の悪いヤツだな。」
その会話を聞いた虚無のロストはいらだちを覚え、声に出す。
「私の名は“虚無のロスト”ではない。そうだ…今日から私の名は王の名である『レクス』とでも名乗っておこう。さぁ、臣下よ。この二つのならず者を消せ。」
──レクスの号令と同時に、大量の騎士のロストと装甲のロストも襲い掛かるのだった。




