十七話・救済の導
【影の世界─同時刻─】
その時、ライザは虹色のパーカーの男“九鬼光之助”を見た途端、足が動いていた。
「…あと…もう少しでッ。」
九鬼は空に舞い上がり、そのまま落下していたのだ。
そんな彼をライザは手を伸ばし、助けようと躍進している最中、メーアが去る際に現れたワープゲートが突然目の前に現れる。
そして落ちゆく九鬼は地面から放出された“影の蛇”のような何かに絡まったように動かなくなる。
「ッ…!?」
ライザはそのゲートにあと一歩で入る寸前で足を止める。
そしてそのゲートからとてつもない“気”をライザは感じ取ってしまったのだ。
「ハハハッ…。久しぶりだな。『裏切者』のライザ。」
「ゼノンさん、ここは穏便にお願いします。大事な任務ですので。」
ライザは自分の眼を疑った。
──そこには教会幹部のゼノン、ホーライが立っていたからである。
「あぁ…分かっている。貴様も、荒ぶったら我がお前ごと排除してやろう…ハハハッ。」
「…ふふ。それはお互い様です。私も容赦致しませんので…。」
ライザは自身の気が重くなるのを感じると、声に出して意図を聞き出そうとする。
「…なんでアンタらがここに…何しに来た。」
「…ハハハッ。我らがここにいる理由…分からないか?」
「どうせあの“計画”の為、とか言い出すんだろ…。」
「あぁ…そうか。お前は我らの“計画”を知っていたんだったな…ハハハ…。」
知性と理性を併せ持つエゴロストの大半が所属する【教会】は、人間時代、人間に植え付けられた“畏怖”や“孤独”、憎悪の感情を取り除くための『救済』を求めて活動している。
──その救済こそ、教会のロストが口を揃えて言う“計画”である。
…通称“ギーベルへの道”とも呼ばれている。
“ギーベル”とは、ホロス含む最上位エゴロストが崇める最古のエゴロストで、
他の者からは“滅びの者”として【教会】を立ち上げた者の名称である。
…そしてその異名の通り、“破滅こそ救済”という道筋が計画に繋がったのである。
「……そんな“計画”でどう救済されるんだよッ…お前らは騙されてるんだよッ!」
「ハハハッ。直に分かるさ。お前が信じる“人間”の愚かさと、お前の《夢》がどれだけ滑稽かを。」
ゼノンは高らかに笑うと、九鬼の方を見ると、彼から染み出た黒くて丸い“何か”を手に取り、ゲートへ消えていくと、その瞬間、他の場所から同じようなワープゲートが出現する。
「また会いましょう。このゲートを使ってお戻りください。では。」
ホーライは別のゲートその場でお辞儀をし、ゲートへと消えていった。
「…なんなんだよ…あいつら…新手の親切か?」
ライザは困惑した。
教会の裏切者の排除のためにここに乗り込んだわけではなかったのが不可解に思えたのだ。
更に現実世界に戻る為のゲートも用意してあるという行動は、謎を深めるだけであった。




