十四話・希望の灯
【T市・洋館バトルルーム】
「…さぁ。来い。」
蒼く煌めく神代の眼に圧倒される三人は苦戦を強いられていた。
長い間行方をくらましていた精鋭集団“特殊局”の人間である神代は、自身の記憶力と反射神経を駆使し、謎の能力《止眼》による視認するだけで装碗の暴走を食い止めるほどの強者であることをマインドウォーカーは改めて認識させられることに──。
そんな中、記憶を失いし青年、影山は“ナニカ”を体に感じ取り、気を失ってしまうのだった。
◇◆◇
《起きろ、俺。神代さんに近づくんだ。》
声が聞こえた。
その声が聞こえても、僕の体は動こうとしない。
瞼は体よりもずっと、重く閉ざされている。
《お前は…ずっとこのままでいいのか?》
声が自分に問いただす。
というかこの声は誰に問いを投げかけているのか、
僕には全く分からない。
でも、“違う僕”のナニカかが呼んでいる気しかしないのだ。
「影山ッ!危ないッ!」
その瞬間、声が聞こえた。
あの竜崎の声だ。
そして俺は目を開ける。
その風景はすごく身に覚えがある風景で、懐かしく思えた。
そう思うのもつかの間、オールバックの蒼色の眼の男がこっちに向かって来ている。
「影山ッ!!!」
竜崎の声を聞こえると、影山はうずくまる体を起き上がらせ、装碗を急いで起動させる。
体に電撃が走ったように力がみなぎり、意識が回復していく影山は神代
を見据えるように姿勢を変えた。
続けて影山は竜崎に対して声を発する。
「わかってるッ!竜崎ッサボってねーでお前も動けッ!」
『装填完了。砲撃開始。』
「…か、影山…?お前…。」
竜崎が驚く暇なく、機械音と共に青い光弾が収束していく。
「…神代さんに一撃食らわせりゃいいんだろッ。」
影山は竜崎に向け、親指を上に立てて真剣な表情で笑いかけた。
「…お前。まさか…目を覚ましたのか…?」
「……。」
竜崎と冷泉は驚いた。
あの失踪した影山がそこに現れたのだから──。
「やっぱり影山、演技だったのか。こりゃ一杯食わされたってハナシだな。あははッ。演技でここにきてやり切るつもりか?…まるであの頃のフリをして楽しいか?教会さんよ。」
神代は走るのをやめ、失笑しながら首を回すそぶりをする。
そうして神代は神妙な面持ちで影山に一言放つ。
「やっぱりお前か、《内通者》ってのは──。残念だけど…ここで終わってくれねーか。」
その時、神代の蒼い眼が光る。
《エ…エ…エラー》
それと同時に影山の持つ装碗が機械音を立て動かなくなり、腕から強制的に外れてしまう。
腕を見ると血がついており、痛みを伴っていた。
「チッ…ッ!?」
その時、神代の拳が腹に直撃し押し出されるように2メートルほど飛んでいく。
影山は膝を付き、息をするのにも必死になる。
「ハァ…ハァ…。」
「よそ見するからだよ…先走りのやんちゃ坊主なのはあの時と変わんねーな、影山。いや」
神代は言い改めるように影山を見つめながら言った。
「“パペット”さんよ。」
「…ちげーよ。俺は──」
影山は思い出すように、噛みしめるように言葉を発する。
『“マインドウォーカー”影山奏だ。』
その刹那、影山の体は心の芯からナニカがむき出しになったかのように奮い立ったのだ。ボサボサの髪は気力によって逆立つように、顔つきは男らしく猛ように。何から何まで、あの頃を彷彿とさせる姿へと変化した───。
「…さぁ…ナノの居場所、教えてもらうぞ。神代さんッ!【希灯・解】」
影山はそう言うと、自身の体から光が漏れ出すように、少しずつ白く煌びやかに輝いていった─。
◇◆◇
その姿を見ていたレイノルズ博士は懐かしさを感じ、犬山に話しかけていた。
「…希望の灯の力。覚えているかな犬山クン。彼は一年前…あの力であの“ホロス”に立ち向かったんだ。」
「覚えていますよ。そりゃ。でもそのせいで彼は彼自身の“記憶”と“人格”としての能力をホロスに消されたんですよね。」
レイノルズは過去を思い出すように返事をする。
「…あぁ。」
「…でもなんで影山はここまで意識を取り戻したんでしょうか。…というか影山、あんだけ頑張ってて演技演技って言われて腹立ってきましたね。いくら元特殊局の人間だったとしてもあれは無いですよ。私だったらボコボコにして──」
「口が悪いよ、犬山クン。神代クンの発言については置いておいて、影山クンの意識の取り戻すスピードは何が関係しているか私自身も気になる。犬山クン、今度このことについて議論しようか。」
「…話が長いのはエンリョしときますからね。」
「あぁ、もちろんだ。」
犬山は研究をすると言いその場を去ると博士は一人その四人の激闘を見ながら、昔のことを思い出していた。
「…竜崎クンは以前の彼が戻って若干嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか…ははッ。僕の妻はいつ僕の元に戻ってくるのだろうか、楽しみでたまらないな。ははッ…。」
──博士は目から雫を零しながら、傍観していた。




