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マインドウォーカー  作者: ラーメン
襲撃編
18/35

十三話・影の進行

【─影の世界─】


「……。」


ライザはメーアを取り逃したものの、装甲のロストを撃破し、ふと上を見上げる。

“空”は暗く、闇に覆われていて、不安と恐怖が胸の底から這いあがってくる。


「…ん?あれは…?」


そんな“空”から、派手な虹色の色が落ちるのが見えた。

こんなくらい世界であの姿をしているのはただ一人────。


「──九鬼ッ!?」


そう、ただ一人の男が落ちているのだ。

その姿を目に焼き付ける前にライザは真剣な眼差しで、走り出していた──。


だが…この時、九鬼の体が異常であったことは“神のみぞ知る”のである。


◆◇◆


【──T市・洋館バトルルーム──】


影山は竜崎、冷泉と共に元特殊局員の神代と対峙していた。

竜崎は神代に向け歩き出し、冷泉は腕に巻き付けて使用する放射型“装碗”を身に着けて砲撃の準備をしている。


『砲撃準備完了しました。攻撃を開始します。』

機械音と共に、青い光が銃口に収束し始める。その銃口を神代に照準に合わせてエネルギーを徐々に溜めていく。


それを感じ取った竜崎は、歩きながら距離を詰めていた足を速めて、最後には神代に向けて全力疾走で直行していく。


「後悔させてやる…『心剣・庸』ッ!」


竜崎は走りながら自身の右手に宿る光の刃を突出させ、神代に絶対にあたる距離まで詰めて、剣先を向けて思いきり引き裂くつもりで右から左へ振るう。


「…相変わらず君は同じ攻撃しかしないねぇ。そこが君の──」


だが──神代は腰辺りを切り裂くような大振りを、その場でジャンプするだけで避けていく。


「…ッ!」

「──弱いとこってハナシ。」


その声が耳をかすった直後、神代の右足が…竜崎の左耳を直撃した。

竜崎はその衝撃で数メートル先にあるコンクリート壁に体ごと飛んででいく。

勢いのまま、竜崎の体は壁に打ち付け、埋まるように体は固定されてしまう。


竜崎の回復しきっていない体は悲鳴を上げ、痛みに耐えながらも竜崎は歯を食いしばる。


「…こんなんじゃ…ダメだ…ッ。俺はッ!」


竜崎がそう自身を奮い立たせる声を吐いた時、神代は竜崎の目の前に──。

そして更に神代の左脚が竜崎の腹を目掛け、()()()構えに入っていた。


──その目は完全に殺る眼であった。


「竜崎さんッ!!」


影山は動けなかった。

恐怖で支配される感覚が身体中を飲み込んでいく。


「……。」


どうして動けないのかと自責の念に悩ます影山。

一方の冷泉は照準を神代に合わせようとするが、竜崎も巻き込んでしまうリスクがあり、何とか打つタイミングを探していた。


だがその時…竜崎はニヤリとする。


実はこの『バトルルーム』には三つの罠がある。

竜崎はそれを知っていてわざと蹴られ、壁にぶち当たっていた。


その一つ目の罠『センサーガトリン』を利用するために──。


『センサーガトリン』とは、壁に埋まっている小さな鉛球を放出する銃口と人を認識するカメラのことを指している。センサーガトリンは半径3メートルの範囲の動くものを捉え、銃弾を撃ち尽くす。

ただし…“死角”を除いて、だが。


《《センサーガトリング起動》》


機械音が鳴り響き、壁に埋まる銃口が神代に向けられる。


「…今回“は”実弾ですよ…神代元特殊隊員。」


『センターガトリン』は本来はゴム繊維の玉を放出するものとして、訓練用に使用されていたが、ロストに対抗する術として“必死さ”を取り入れるため、実弾へ変更された。


(犬山さんがこれを考えたらしいが…発想がいかれてるな…だが、これなら距離を詰められる心配もない。今のうちに冷泉さんの援護があれば…。)


地鳴りするような轟音と共に、鉛弾が神代へ次々に飛んでいく。


だが───。


「…甘いってハ・ナ・シ。」


神代はなんと多数の鉛球を避け、攻撃範囲外まで押し戻ったのだ。


「…ッなんで…。」

「やっぱり使うと思ったよ…『センサーガトリン』。僕がここで何戦戦ったことあると思ってるんだ?」


神代は呆れたようにそう言い返す。

まるで避けるのが当たり前かのように。


「だとしても…あの速度の銃弾を避けるのなんて──」

「可能なハナシだ。あんまり自分のことを言うのは恥ずかしいけど…こう見えて動体視力と記憶力だけは自信あっからな!あははッ!」

「…いや…あなたの動体視力と記憶力どうこうのは常軌を逸している…ッ。」


人の通常の記憶力はキャパシティーが決まっており、それを超えるといわゆる“忘れる”という状態になる。だがこの男は違っていた。一瞬見た景色を頭にインプットし、そのあとに類まれな身体能力で危機を回避するのだ。端的に言って化け物である。


「いやいや、撃ってくるパターンと連射レートを覚えて、それを必死に避けてるだけで──」


《《エラーメッセージ》》

“危険ですので対象物から離れて下さい。最大火力フルバーストが放出されます”


その時───冷泉の装碗から音声が聞こえたのだ。

思考するのもつかの間、青白く光る大きな球体が神代に向かい放出される。


「…ッ!?」


ロストのみならず、人にも効力がある“装碗”は非常に強力である。だがその反面、力が暴発しエラーを起こすことも少なくない。そして今回、その装碗の最大火力が出せてしまう《フルバースト》を放出してしまったのだ。


フルバーストはロストだけじゃなく、どんな物質でも必ず破壊するという危険な一撃なのである。


《触れられたら勝利》


に対する竜崎の絶対に勝たなくてはいけないという強い意志が裏目に出てしまった瞬間だった──。


「……あーあ。」


青白く光る光弾が神代の目の前まで迫るその時、神代は呟く。

放たれた光弾がコンクリートの床を削り、風を切り裂くその時に。


「…【止眼(しがん)・暴】」


神代は思いきり瞼を開き、元々蒼く煌めく眼をより一層蒼く輝かせる。

──眼を開けるその動作は何故か、苦しいようにも影山は見えた。


そのきれいな眼を見せると、光弾はその場で止まったのだ。

光弾は勢いが止むとゆっくりとその姿を消す。


「…さぁ。来い。」


その場にいる者は沈黙した。

あまりの気迫に圧倒され、言葉一つ出ない。


影山はその気迫に負けじと装碗を腕に装着しようと試みる。

…だがその時、またあのフラッシュバックが起こったのだ。


◆◇◆


見たことが()()()()()廃墟が前方に広がり、そして重装の兵士や、高度な技術を駆使した武器を持つ者らが数人、自分の周りに倒れている。


そんなとき、影山は装碗を装備し、果敢に立ち向かっていた。


そう──この時に立ち向かった目の前の人物。


『消え去れ──…の欠片と共に──』


…目の前には白色に黒色が混じった髪の白のコートを着込む一人の男が、そこには居た。

──その男こそ、計画の元凶、最上位エゴロスト…【ホロス】である─。


◆◇◆


「…ッ!」


夢の様なナニカが自分を揺れ動かすような、そんな感覚が襲ってきたのだ。

いままでのフラッシュバックとは違うナニカが──。


それと同時に頭痛を伴い始める。

ナニカに侵食されるような、脳で、心でそう感じ取った。


突然、誰かが話す声が頭に響いてくる。


《僕はただ普通に生きたいだけなんだ──》


《俺はやらないといけないことがある──》


《僕はこのままでいい──》


《このままじゃいられない──》


()()、というより矛盾が生じた影山自身の心の叫びのようだった。

影山はそのまま頭を抱え、うずくまり深い眠りへと落ちた。


◇◆◇


【同時刻・T市廃墟】


古びた椅子に足を組んで座るホロスは口を開いた。


「襲撃結果を言え。どうだったのか簡潔に言ってくれ。」

「アンタ達の報告をホロス様が長々と待ってたんだからァ、早く聞かせてあげてッ?ですよね~?ホロス様ッ?」


ジェシーは椅子の隣に寄り付き、抱き着く様をみせつけるようにそう言う。

すると、まず最初に真っ先に律儀に椅子に座る赤眼のホーライが答えた。


「私は隊長である城戸を…殺しはしませんでしたが戦闘不能へ。ゼノンさんはどうでしょうか。」

「…ハハハッ。影の世界へ雑魚二匹と裏切者と…ヒーロ気取りを監禁した。手駒のロスト五体は失ったが上出来だろう。そして、我々の脅威である『アンチロスト』を…殺せはしていないが、いつか殺して見せよう…ハハハッ。」


ゼノンは腕を組み、壁に寄りかかりながらさも当たり前のように言った。


「…なるほど。おい、メーア、お前は。」


ホロスは無表情でメーアを見て、言葉を吐くように言った。

メーアは汚い古びたソファーに寝っ転がっている体勢から起き上がり、ホロスの目の前まで行って目の前で仁王立ちになる。


「ボクちんさぁ…こんな偉そうなヤツ初めて見たァ…ちょっと嫌かなぁ。ゼノンはこんなヤツの下に付いてるのォ…あひゃひゃ…笑えるネ!性格悪い同志仲良くやってるって感──」


その時、ホロスは視線をメーアの元へ向ける。

そうするとメーアは言葉を発する事を辞めた。圧倒的な“力”を目の前に感じて──。


ゼノンはそれをみて声を漏らして呆れながら笑う。


「…どうした。」

「いや…なんでもないよ。」


緑髪のメーアはホロスから目を逸らすと思い出したかのように言葉を続ける。


「そ、それよりネ!ボクちんすんごいロストを生みだしたのッ☆二体いるんだけどォ…一体は…あ、九鬼っていう人から出来た“空虚のロスト”っていうロストとー、パペットロスト!パペットに関してはもうマインドウォーカー内に忍ばせてあるから情報筒抜け~だよッ☆まぁ…ゼノンっていう性格悪いおっさんにはもう言っちゃったんだけどねッ。」


「…なるほど、だからかゼノン。あの時に場所を指定して襲撃すると張り切って言っていたのは。」


ホロスがそう問うと、ゼノンが答える。


「ハハハ…その通り。」

「そうか…なら今後はこう行こう。」


ホロスは()()を確信する顔をすると、部下に対して今後に向け、指令をそれぞれ出した。


ジェシーには自分自身の護衛を。

アルゼルには自我を持たないパペットロストの監視と“空虚のロスト”を柊ナノまでの転送を。

ゼノンとホーライには転送された“空虚のロスト”と柊ナノの護衛を。

メーアは監禁している柊ナノとのコミュニケーションをとる役目を。


──こうして教会はマインドウォーカーの内部崩壊フェーズへと移行するのだった。













































































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