第70話、胸が反れれば反れるほど、かえってテンション上がってく
SIDE:ラル
「いっておくがなっ、ほんとは今回の実地体験学習、われの友とともにゆくつもりであったのだ。それを、母さま父さまたってのねがいで断りを入れ、ぬしらをわがパーティにねじ込んでやったのだぞぅっ」
感謝して、敬い崇めたまえよ、とばかりに。
その小さな身体を全力をもってそらして。
われの方が立場が上なのだぞ、なんて態度を主張するレミラ。
高貴なる吸血鬼の父と、異界の錬金術師とも呼べる母を持つプライドがそうさせるのか。
便宜上妹的立場であるノアレの方が無表情ながらも、従うべき主に対しての高慢とも言える態度に眉をひくつかせていたが。
引き続きエイミの研究室にて。
着いたばかりながらも早速とばかりに今後の予定について話し合う算段となって。
数日後に始まるらしい、『ヴァレン』騎士学校と、『ティア』魔法学園合同の実地体験学習へ急遽ながらも参加させてもらうと言う事で。
話し合いの中心がエイミ先生から、クラスの学級委員もやっているらしいレミラへと移ったわけだが。
それでも当然すべての中心はラルであるとばかりに、レミラの対面にはラルがいて。
迫力はいまいちではあるが、そんな言葉を真正面から受けたラルはしかし、その仮面の下でによによが抑えられないでいた。
何せ、仮面とマントを身につけていない朝はもちろんのこと、『夜を駆けるもの』として変装し夜に舞っていても、敵味方構わずに、会う人そのほとんどがラルに対してへりくだったり、気を遣っているのがまる分かりの笑みを浮かべるばかりで。
対等というか、面と向かって強気に出てくれるのは、それこそそう多くない友達(勿論、その中にローサも入っている)くらいのものであったから。
仲良くなれそうというか、ラルからしてみれば不遜だなんだって怒るだなんてとんでもない。
むしろそんな可愛らしい強気な態度を見せてくれればくれるほど嬉しい感じになってテンションが上がっていたのは確かで。
「それは……何だか申し訳なかったですね。お友達も一緒に、と言うわけにはいきませんか。ああ、パーティに人数制限があるんですね。そう言う事なら、『ヴァレス山』へ入る許可さえいただければ、お、私たちは別行動という事でも構いませんが」
「……なっ、何をいっているっ。われがぬしらの監視……お目付役を仰せつかったのだぞっ。そ、そんな勝手はゆるさんからなっ」
ラルからすれば揶揄うつもりなどまったくもってなく。
むしろこんな好みのタイプのレミラが言う友達とも会えれば、あるいは一緒に行動できればいいのに、なんて思っていたくらいで。
それ以上に、学校生活での友達は一生続く大切なものだから、お邪魔ならば別行動も吝かではないと考えていたわけだが。
まさかそんな言葉が返ってくるだなんて。
当のレミラは思ってもみなかったらしい。
それまでの強気な感じが少しばかり崩れて、何だか焦った様子で怒ったような仕草をする。
そんな様も、やっぱり何だか可愛いから。
ラルだけでなく、ローサ……サーロまでもがやられて、この娘きっと学校でめっちゃ人気者なんだろうなぁ、なんて思っていたりしたけれど。
それを見かねて、というかラル以上にによによしていたエイミが、もう、おかしな意地を張るからよ、なんてぼやいてから間に入る。
「ごめんなさいね。本来なら私が引率についていければ良かったんだけど、一応全体を見回らなくちゃいけないから。せめてうちの娘だけはお供に連れて行ってちょうだいな。ちょーっとばかし甘やかしちゃったから偉そうなのが服着てるけど、悪い子じゃないのよ。……っというか、レミちゃんってば。あなた、率先してパーティ組んでくれるお友達なんてセラノちゃんくらいしかいないじゃないの。言ってなかったらごめんなさいだけど、当然彼女も今回の山越えのパーティに加わってもらう予定だから。……見た感じ属性もかぶってなさそうだし、優秀な娘だから十分お役に立てると思うのよね」
「ほう、このメンツで被らないとなると……【光】に愛されたお方、でしょうか。これはもしや、期待できそうです」
被らない属性。
12の根源に愛されし者を故あって捜し求めているリーヴァがしたり顔で反応していたが。
それより何よりも、エイミが謝っているだけあって、どうやらレミラは色々と聞かされていなかったらしい。
少々見得を張っていたことまで白日のもとに晒されてしまって、うぐぐぬぬと変なところから声を漏らした後。
「母さまひどいっ、そうならそうってはやく言って欲しかったぞぅ。 ……って山越え? ヴァレス山を? それってもう体験学習でもなんでもないじゃないかぁ!」
聞いてないよママン、とばかりの。
そんな、ちょっとばかり素の出たレミラの叫び声が、狭い部屋に轟くのであった……。
(第71話につづく)
次回は、5月13日更新予定です。




