第118話、救世ちゅ、もふもふセンサーでばけのかわを看破する
SIDE:ラル
『ヴォクージュ』の国、街へとやってきて。
たった一日で様々な事があったが。
水の都『ブラシュ』や獣人族の国『フーデ』にて悪事を働いていた『闇の一族』なる面々に対しても国を挙げて対処にあたってくれると言う事で。
ひとまずは、解決に道筋が見えてきて。
捕らえ反省を促す手伝いをするのはもちろんだが。
その事とは別件で頼まれた事は。
ラルにとってみればたいへん興味深い事であるのは確かだった。
召喚魔法の使い手、ユーライジア……故郷では従霊道士などと呼ばれる職業の人々が多く暮らす国、『ヴォクージュ』。
そんな故郷では、ラル自身それを上手く扱えなかったから。
召喚契約を行い、テイムができた魔物,、魔精霊たちとともに戦ったり冒険したりすることは。
この国の王様に会えるといったことを抜きにしても、率先して参加していきたいものであるのは確かで。
冒険に出るか、召喚士として召喚者を率いて試合をする大会に出るか。
どちらが良いのか悩みつつも迎えたそんな長かった一日の夜。
好意で貸してもらった大きな部屋で過ごす三人(くじ引きで決まった)とおしゃべりしつつ。
ラルは、どちらが良いのか聞いてみることにする。
「あの、明日からなんだけど。私としては冒険して、たくさんあるセンター回ってって、『闇の一族』の人たちを探しつつ、大会のある時は【リィリ・スローディン】……瞬間移動の魔法を使ってここへ戻ってくる感じにしたいんだけど、どうかな?」
ラルとしては、話を聞いた時から両方行うつもりでいたので。
後はそんなラルの我が儘にみんながついてきてくれるのか、と言う事を問うている訳で。
「りぃり、りり、ままかぁいい!!」
「それってリーヴァねえがすっごく難しいって言ってた【時】の魔法でしょう? ラルさま使えるの? すごーい! かわいい!!」
例えば、そんな合いの手を打ってくるのがローサたちならばツッコミのひとつもあっただろうが。
それが、娘や妹にも等しいローズやアイならば、仮面の下の相好も崩れると言うものである。
今の今までラルは。
様々な世界を、分身でありながらめぐりめぐっていた。
その中にはラル自身の未来の世界もあって。
家族ができて、子供たちにも恵まれて……と言うものも垣間見て体験してきたが。
何故かアイのような健気で可愛らしい妹と触れ合うような事は中々なくて。
子供にしたって、例えばお食い初めをと思ったら一人で食べ始め喋り始め、魔法を扱い出すといった、それこそふつうでない感じが多くて。
間違いなく成長が早いとはいえ、ただただ可愛いローズは、とってもラルの親心のようなものを刺激してしまって。
デレっと相好を崩れたまま戻らないのは仕方がないんだろう。
そんな二人は、ラルの我が儘をあるがまま受け入れてくれそうだけれど。
そんな我が儘意見が通るかどうかは。
周りのママたちが、何と言うか次第ではあって。
「ローズちゃんもアイちゃんも着いていくのならば、わたしもご一緒させてくださいな。
姉として、身の回りのことはわたしにお任せくださいー」
此度のもう一人のルームメイト、ウルルもそんなラルの我が儘を受け入れてくれるようで。
姉として、の中にラルも含まれている事を、末っ子妹分気質が故にアイのような妹的存在と触れ合ったことが少ないと思い込んでいるラルには気づきようもなくて。
「後でみんなにも確認しないと。12人で動くのはちょっとたいへんかな。まぁ、街から動きたくない子とかもいるかもだし」
そんな風に、これからの展望をわくてかでラルが口にした時だった。
ローズとアイがそろそろ夢の世界へ誘われる時間だ、なんて思っていると。
遠慮がちのノックがして。
扉越しに滲む魔力から、それがソフィアである事に気づいたラルは。
腰を浮かせかけたウルルにローズとアイを任せ、はーいと一声上げつつ部屋を出る。
「ソフィアさん、どうしたの? ちょっとうるさかったかな」
「いえ、そんな事は。少しお話できないものかと思いまして」
「なんだろう、明日からの予定の話?」
「はい。そのようなものです。ここではあれなのでサロンの方へいかかでしょう」
「うん。わかった。ウルルさん、ちょっと出てくるね」
「は~い」
ソフィアも結構せっかちだなぁと。
そんなにも明日からの色々を楽しみにしているのかな、なんて思いつつ。
ラルは未だ夜着ではないソフィアにならって寝巻きの上に【風】の魔精霊、魔力を表す音符のあしらわれた外套を羽織つつ。
ソフィアの後を追いかけ部屋を出る。
その足で、サロンへ向かうのだろうと思っていたが。
上階の外の景色がよく見えそうな場所ではなく、地下へと降りていくものだから。
何だか不思議な場所にあるサロンなんだなぁ、とか。
あるいは泊まらせてもらっている建物、寮にはサロンはなくて。
別の場所に向かっているのかな、なんて思っていたラルであったが。
どうやら別の場所にあると言うのが正しかったようで。
地下の通路を通って寮の外へ出ている事に気づいたラルは。
この『ヴォクージュ』に来てから行った事のない場所へ向かっているようだったので、
結構な速さで先行しているソフィアに、その旨を伺おうとして。
「あれ?」
そんなソフィアがふわもこの夜着を着ているわけでもないのに。
何だかその背中を見ていると、もふもふしたい衝動に駆られるラル。
「ここからは、はい。『虹泉』の力を借りて移動いたします」
「え? あ、うん」
ほとんど無意識のままに伸びた手をぎりぎりで引っ込めつつ。
誤魔化すように頷いたラルは。
目の前にいるのがソフィアではないような気がしてきた潜在モフモフ度の高そうな人物の後に続き、『虹泉』の中に入っていく。
生まれ持った属性故な部分もあって。
濡れる事なく息もできるとはいえ、七色以上な斑色の水の中に入ることは少しばかり抵抗があったが。
もふもふなソフィア? が同じように『虹泉』に苦手意識があったのか。
失礼します、といった緊張感のある言葉とともに。
探り探りでラルの手にもふっと触れてきたので。
はっとなりつつ目を見開くラル。
(あ、やっぱりそうだったんだ)
大抵、ソフィアの後ろで控えていた『フェアヒラ・ピアド』と呼ばれる、一見するとてかぴかしているのに、よくよく見ると細かな毛でもふもふな妖精種のひとり。
名前はキミリス、だったか。
後々に聞くところによると。
『ヴォクージュ』に限らず各町のセンターの受付嬢さんの後ろに控えている『フェアヒラ・ピアド』と呼ばれる妖精さんは。
【光】の魔精霊としての能力、分身分裂による同個体、とのことで。
同じように光魔法による『変身』が、『虹泉』に入った事による影響なのか。
その魔法が解けてしまった事に気づいていないのか、ぎゅっと目をつむってそのもふもふの手でラルのことを、ラルの手を探し求めていたから。
そちらから求められたのだからオッケーだよね、とばかりにしかとその手を握り返しつつ、ラルはキミリスのモフモフを堪能することにしていて。
『虹泉』は、遠く離れた国同士の移動にも使われるが。
世界間同士でも移動可能となる、最高峰の魔導機械にして【時】の魔精霊の魂が宿っているとも言われるそれ。
こうして力を借りる事ができているのならば。
召喚にて特定の誰かを呼び出したいならともかく、召喚される前に居た場所に帰れるのではないか、などと思いつつも。
『ヴォクージュ』に来てから訪れた事のない場所、恐らく王城らしき建物のあった地下辺りだと判断し、
未だ握ったままのキミリスの手をこれ幸いとラルは離す事もなく、そのまま問いかける。
「地下にサロンがあるの? キミリスさんたちって【光】の魔精霊だから陽のもとにあるのかなって思っていたけど」
「……っ! いつから、気づいて。ああ、『虹泉』の影響ですか。……私は分け身です。とらえ拘束しても、意味はないかと」
「え? なんでそんな……って、あ。手にぎったまんまだった。ごめんなさい!」
そんな、敵陣に乗り込んでいきなり人質を得たかのようなリアクションをしなくても。
なんて思い戸惑うラルであったが。
慣れてきていたとはいえ、やっぱり『虹泉』の濡れない水の流れが怖かったのか、もふもふチャンスを逃したくなかったからなのか。
キミリスの手を未だしっかり握っていたから。
慌てて誤魔化し笑いを浮かべつつようやっととばかりに手を離す。
それにより思い出したのは、そもそもラルが召喚術士、従霊道士としては大成できなかった、召喚契約すらできなかったその理由。
どうもラルは、魔物魔精霊には嫌がられ避けられる傾向にあったことで。
ラルとしては信じられない事に魔物魔精霊に限らずもてない、好かれていないと思っているから。
その存在自体が色々な意味合いを持って強すぎるがゆえに恐れ慄かれ、平伏してしまうだなんて気づきもせずにいて。
「正体、暴かれてしまったのならば仕方がありません。どうしても会って欲しい方がいるのですが」
抵抗したり、逃げようとするのならば考えがあります、とばかりの。
覚悟の決まったキミリスの言葉。
ラルはそれに気づいているのかいないのか、ただただ快活に頷いてみせて。
「あ、そうなんだ。うん。この先で待っているの? もちろん行くよ」
そのままごねていたのならば。
キミリスをも超えうる強者(ラル的にはもふもふ度合いの意味で)に囲まれたであろうことには気づけないままに。
調子に乗ってもふもふしすぎて嫌われ避けられるどころかその先に会わせたい人がいると聞いて、ラルはウキウキでいた。
そんなラルの様子どこか拍子抜けしているキミリスを脇目に。
そんなもふもふキミリスを引っ張っていく勢いなラルがそこにいて……。
SIDEOUT
(第119話につづく)




