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焼けくそレーシック  作者: あまやま 想
第2章 変化
47/150

2月19日(日)  >2<

 そうだ! 帽子でも見てみよう。レーシックをやってから、メガネをかけなくなったので、どうも目元が物足りない感じがする。


 紫は今まで帽子を全くと言っていいほどかぶったことがないが、これを機に帽子を買ってみようと以前から考えていた。しかし、紫が買いたいと思った帽子は見つけられなかった。こんな感じで休日は何にもしばられずに思いのまま、ブラブラするのが一番だ。


 だが、旅先ではそんなのは通用しない。何も知らない土地勘の無い町で思いのままにブラブラできるはずも無い。そのうち、歩くのに疲れて、ブラブラするのも嫌になる。


 でも、ホテルに帰るにはまだ早い三時過ぎ…。紫はいつの間にか、博多バスセンタービルに入り込んでいた。そこの一番上の八階にマンガ喫茶があると偶然知った。


 そうだ。暇つぶしにワンピースの続きでも読もう…。この前、献血ルームで読んだ十巻から先が何気に気になる。紫は迷うこと無く、受付で六時間千円パックを申し込む。早速、ワンピース十一巻から十五巻の五冊を本棚から取って来た。


 それから、献血ルームにあるものと同じドリンクサーバーがあったので、そこでカフェオレを注ぐ。さすがに献血ルームと違って無料でお菓子は置いていない。無料でお菓子が置いてあれば、言うこと無いのに…。そう思いながら、紫は自分の席に戻って、ワンピースを読み出す。読み出すとすぐに物語の世界へと深く引き込まれるのであった。


「あれっ、おかしいなあ…。ホテル・カサブランカはこの辺のはずなのに…」


 松屋で夕食を済ませた後、紫はホテルへ戻ろうとしているのだが、道に迷ってしまい、なかなか戻れずにいた。紫はワンピースの二〇巻まで一気に読んだ後、すっかり真っ暗になった夜の博多の町をぶらついて、偶然見つけた松屋で夕食を食べた。


 夕食を済ませた時点で、もうすでに夜の十時前であった。それから、迷うこと三十分…。運良く、偶然交番の前に出くわし、交番でホテル・カサブランカへの戻り方を聞いた。すると、若い女性警官が少し、あきれた様子でつぶやく。


「ホテル・カサブランカなら、交番を出て、右に歩いて行った先ですよ。ほら、もう見えていますよ!」


「あ…」


 紫は恥ずかしさのあまりに、顔が真っ赤になった。これだから、警官は嫌いである。もっと観光客やビジネス客に配慮してくれたらいいのに…。そもそも、警官には市民を思いやる心がないのでは…とさえ感じられる。紫は部屋に戻ってから、かつての自転車でのやり取りを思い出して、一人憤りを感じていた。


 ただ、一日中、知らない町をぶらついたおかげで、武下定秋のことを考えずに済んだのはよかった。この日だけでなく、福岡に来てから覚えることが多すぎて、そんなことを考える余裕はない。それだけが出張における唯一のよかった点ではないか…。

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