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焼けくそレーシック  作者: あまやま 想
第2章 変化
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2月19日(日)  >1<

 日曜日の朝、紫は自分の部屋でない所で目覚めた。


 何でこんな所にいるのだろうと一瞬思ったが、すぐにああそう言えば、福岡に出張に来ていたんだなと思い出した。ここはホテル・カサブランカである。ここから歩いてすぐの所に、出張先のビオランテ出版がある。そのことを思い出し、紫は寝ぼけ眼のまま、二度寝した。二週間も出張していると、出張中にも休日がある。この日は福岡に来てから、最初の休日であった。


 三日前に福岡に着いてから、一昨日…、昨日…とずっと総務主任の引き継ぎを井出から受け続けた。エスペランサ出版のように総務担当が何人もいれば、それぞれの担当を決めて仕事できる。


 いや、それぞれ担当を決めた方が効率よく仕事ができる。エスペランサ出版では、紫は社会保険担当で厚生年金や協会健保の手続きは詳しいが、他の分野はそれほど詳しくない。エスペランサ出版人事総務部総務課では担当がいないと、仕事が回らないなんてならないように、基本的には全ての仕事を一通りするようになっている。しかし、最終的には各担当が責任を追うシステムであるため、どうしても引き受ける仕事に偏りが生じる。


 実際に総務の仕事は出張旅費の清算、給与計算、用具の購入・管理、社員の動静・勤惰管理、会議録の管理、社内営繕など多岐にわたる。一言で言えば、会社の裏方として、動き回るのが総務である。


 ビオランテ出版には総務が一人しかいないので、お金が関わって来ることは総務が全て担当するが、社員の動静・勤惰管理は専務、社内営繕は一番若手の柿本、会議録の管理は各担当者が行うこととなっている。


 総務の仕事の線引きも会社によって異なるので、微妙な違いを覚えることも、引き継ぎのうちである。


 それにしても慣れない土地で仕事をするのは体にこたえる。土曜は五時過ぎに仕事から解放されたので、軽めに夕食を済ませてから、すぐに寝た。確か、九時前には寝たような気がする。朝、目覚めると、九時を過ぎていたので、半日寝たことになる。しかし、紫はまだ寝足りないと感じたのか、そのまま二度寝してしまった。


 再び目が覚めた時、時計は十二時を回っていた。さすがに十五時間も寝るともう眠くならないので、紫はまず風呂に入ることにした。やはり、休日の朝は朝風呂に限る。それから着替えて、外に出る。


 しかし、紫は博多の町を全く知らない…。昨日までビオランテ出版の誰かと一緒にいたので、困ることは全くなかった。しかし、一人になると、どうしていいか分からず、途方に暮れてしまう。


 とりあえず、適当にぶらついて、偶然見つけた吉野屋に入る。福岡まで来て、なんで吉野家とも思ったが、地元の人がいないと、地元のおいしい店がどこにあるのか全く分からない。


 その点、全国チェーンの店には妙な安心感があった。ちなみに昨日の夜はやよい亭に入って、野菜炒め定食を食べた。お腹を満たされた後は、博多駅周辺をあてもなくブラブラと歩き回った。ビックカメラやアミュプラザ博多、東急ハンズなどにも入った。案外、歩き回るだけでも楽しい。


 実を言えば、紫は旅行が苦手だった。一人で旅に出ると、何をしていいのかよく分からなくなるのだ。だから、旅に出る時は計画を立てるのが得意な人に、いつもついて行くようにしている。どうして、あの人達は旅の計画を丁寧に立てられるのだろうか? 計画を立てて行動するのは仕事だけで十分である。

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