表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
焼けくそレーシック  作者: あまやま 想
第2章 変化
41/150

2月14日(火) £2

 そう言えば、十六日から二週間の福岡出張だ。福岡出張の準備もしないといけない。その前に仕事も片付けなくては…。これはいけない。とりあえず、コーヒーでも飲んで一息つこう。紫は自販機のコーヒーを飲みに部屋を出た。


「私もちょうど、コーヒーを飲みたくなってな…。何がいい?」


 こっそり出て来たはずなのに、いつの間にか隣に大泉班長がいたので、紫は思わずビックリする。


「いやいや、班長、いいですから…」


「何を言っているんだ。部下は上司の好意に甘える義務がある」


「じゃ、すみません。カフェオレでお願いします」


 バレンタインデーよりも日常の何気ないやり取りの方が、ずっとほっとさせられる。紫は班長からカフェオレの紙コップをうやうやしく受け取ると自販機前のいすに座った。班長もブラックを持って、紫の横に座った。大きな体と小さな紙コップのギャップはいつ見てもいいものである。


「最近、写経を始めたんだ…」


「写経ですか?」


「写経はいいぞ。写経をすると、心が安らぐんだ。このところ、リストラだったり、再就職だったりと、気が滅入ることが多くて、本当に参っていたから…」


 紫は思わず、吹き出しそうになった。熊のように大柄の大泉班長が机の前にかしこまって、写経をしている姿を想像したら、その姿があまりにもおかしかった。大泉には写経よりも、ラグビーの方がぴったりくる。実際、若い頃はラグビーで活躍していたと彼自身がよく話している。


「なんだ…、笑うなよ」


「あっ、申し訳ありません…」


「まあ、俺に写経なんか合わないことは百も承知。でもな、本当にいいぞ。桜田君もむしゃくしゃした時は一度やってみるといいよ。写経セット貸してやろうか?」


「いや、いいですよ。私が写経セット借りたら、班長が写経できなくなりますよ」


 今度は写経か…。おはらいにワンピースと、みんな追い込まれている。紫自身、追い込まれているから、あまり人のことは言えないけど…。しかし、追い込まれて、何か心のよりどころがないと生きていけない社会と言うのはいかがなものだろうか?


 やれ、「失われた二〇年」だの「デフレスパイラル」だのと言うけど、こんな世の中でもおいしい思いをしている人はいる。おいしい思いをしている人が独り占めせずに、分け合うことができれば、日本はもう少しマシになるだろうに…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ