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焼けくそレーシック  作者: あまやま 想
第2章 変化
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40/150

2月14日(火) £1

 この日は朝から霧雨が降っていた。どうせ、降るならもっとはっきりと降って欲しいものである。これくらいなら傘はいらないだろうと思っていたら、意外と濡れてしまった。紫は駅に着いてから、思わず舌打ちしてしまう。


 霧雨ほどうっとうしいものはない。雨の日の電車はジメジメしていて、メガネをかけていた頃はメガネが曇ることにイライラしていた。まあ、レーシックをしてから、メガネがくもる煩わしさから解放されたのでよかった。


 メガネから解放された直後は、細かいことにいちいち驚いたり、感動したりしていた。しかし、慣れてしまえば、それが当たり前になる。時々、メガネも無いのに、無意識のうちにメガネを上げる動作をやってしまうことを除けば、メガネをかけていた時の名残もない。


 紫はその動作を「エアーくいっ」と名付けていた。ああ、また右手中指でエアーくいっをやってしまったよ…。雨の日はなぜかエアーくいっの回数も増える。メガネが無いのに、あの動作をやるとかなり間抜けに見えるだろうな…。この日の電車はいつになくジメジメしていたせいか、たくさんのメガネがくもっていた。メガネをかけている人の身にもなって欲しいものだ。


 強いて名残と言うなら、運転免許書の条件に「眼鏡等」と書かれていることぐらいか…。あれはどうやったら消せるのだろうか?


 紫は会社に着くと面倒に思いながら、他の女性社員と同じように、同じ班の男性二名と課長に義理チョコを配って回った。


「いつも、お世話になっていますので、これをどうぞ…」


「これはありがとう。なんか、毎年気を遣わせて悪いですね…」


 至る所で聞かれるありきたりなやり取り…。やっぱり、そうだ。上げる側ももらう側も、義理と言うか、もはや義務であげたり、受け取ったりしている。こんなにおかしくて滑稽な風習はもう止めるべきなのに、誰も止められない。ああ、日本人のこんな所、実に面倒である。


 ドイツでは男性が女性にバラの花を贈るらしい。せっかくなら、こう言う習慣が根付いて欲しいものである。


 霧雨のせいなのか、バレンタインデーのせいなのか、よく分からないけど、紫は一日中憂鬱な気分から抜け出せなかった。多分、両方とも悪い影響を与えている。今までなら、仕事帰りに武下定秋へ本命チョコをあげる楽しみもあったが、今年はそれもない。


 いやいや、もうそんなことを考えるのは止めよう…。止めたい…。よし、他のことを考えよう。

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