1月26日(木) §1
朝はこの冬一番の冷え込みで所々に氷が張っていた。しかし、雪は降らなかった。息はいつになく白くなるし、ドアノブは氷のように冷たくてビックリする。通学途中の小学生が空き地の霜柱を楽しそうに踏んでいた。キャッキャッとした声が冷たく張りつめた空気によく響く。
「何やっているの! みんなそろっているんでしょう? 早く行かないと学校に遅れるよ!」
誰かのお母さんらしき人が遠くで叫んでいる。子ども達は慌てて学校へと走って行く。どうやら、ここは登校班の集合場所になっているらしい。家の隣に空き地があることは知っていたが、ここが登校班の集合場所になっていることを紫は知らなかった。子どもは元気でいいよな…。そう思いながら、寒い中、自転車で西千石駅へと向かった。満員電車に揺られながら、たまには満員電車ではなくて、霜柱の上に乗りたいな…なんてことを考える。
会社に着くと、大芝課長におはらいはどうだったかと聞かれたので、窪園神社でのできことを人通り話した。この会話に誰も食いつかないところを見ると、昨日も三班の山畑さんにも同じことを聞いたに違いない。
陽美にこっそり確認したら、案の定、山畑さんにおはらいのことを根掘り葉掘り聞いていた。ここに来て、大芝課長のおはらい好きな一面がどんどん明らかになる。しかし、人は飽きるのも早い。そうなれば、逆に面倒に感じるようになるだろう。この日は二班の松原さんが休みであったが、もう誰も関心を持っていない。関心があるのは自分の休日だけである。ただ、課長一人だけがおはらいの魅力について、熱く語るのであった。
昼休み、携帯電話をチェックすると、番号登録していない電話から留守電が入っていた。紫は不審に思いながら、留守電を聞く。
「ピーッ、あ、もしもし、桜田さんの携帯でしょうか? 私、仙石交番の松島と申します。先日、自転車の盗難届を出されましたよね。昨日、あなたの自転車が見つかりましたので、交番で預かっておりますので、早めに取りに来られてください。どうやら、近所の高校生が失敬していたようです。詳しいことは交番にいらした時に説明致します。それでは失礼致します」
へえ、見つかったんだ…。しかも、高校生が盗んでいたとは…。紫はふと一週間目の出来事を思い出した。自転車が盗まれたばっかりに、他人の自転車を拝借してしまった。そして、運が悪いことにそれが警官にばれてしまい、こっぴどく注意を受けた。あの時は不幸中の幸いと言うべきか、検挙は免れたが…。あの時、高校生が盗んでなければ…。




