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焼けくそレーシック  作者: あまやま 想
第1部 東京編  第1章 発端
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25/150

1月25日(水)  ◎2

 あまりにも早く終わったので、一回家に戻ることにした。それから先ほど神社でもらったお札をカーテンレールの上に飾る。本来なら神棚でも作って飾るべきだろうけど、ワンルームの部屋に神棚なんか作れるはずもない。


 しばらく、家でのんびりしていたらお腹がすいたので、眼科へ行く前に仙石駅前商店街のビュッフェ・リブレで昼食をとることに決めた。紫は軽やかな足取りで自転車をこいで、商店街へと向かう。


 やっぱり、平日のランチバイキングは最高である。平日は人が少ないので食べたい物が必ず取れるし、のんびりとくつろげる。実に素晴らしい。心も体も満たされる。この満たされた状態のまま、JRに乗って新宿へ向かう。


 平日でも昼間の電車はとても空いている。紫はドアの横の席に座ってから、いつものようにMP3で音楽を聴きながら、1Q84を読む。1Q84もいよいよ佳境に入り、紫はいつになく食い入るように読んでいた。新宿に着く手前で1Q84の全てを読み終える。紫は1Q84の予想もつかない結末に胸騒ぎが止まらなかった。さすがに胸騒ぎは新宿駅に着く頃には落ち着いたが、今後は人の多さのせいで人酔いしそうになった。平日の昼下がりだと言うのに、どうしてこんなに人がたくさんいるのだろうか…。人混みが苦手な紫は早足で江角眼科クリニックへと向かう。


「順調に回復していますね。裸眼視力も左右ともに一・二と安定しています。角膜もきれいに引っ付いていますね。もう、寝る前にプラスチックの眼帯をつけなくても大丈夫ですよ。それと目の乾きもそれほどないようですので、点眼は朝、昼、晩の三回だけで結構です。ただし、目が乾くと感じたときは、今までと同じようにこまめに点眼してください」


 江角先生が紫の目の検査をした後、結果を丁寧に説明する。紫は頷きながら聞いていた。もう、視界の白いかすみもすっかり無くなっていたので、後は目の乾きさえ無くなれば、レーシック治療は終わるらしい。


「次はいつ来たらいいですか?」


「そうですね。次は二週間後ぐらいに様子を見ましょうか? 二月十一日あたり、ご都合はいかがですかね…」


 紫は二月十一日に何の予定もないことを確認してからOKを出した。時間は昼からのんびりできるよう、午前十時半からとした。眼科での検査が終わると、紫は夕方のラッシュに巻き込まれる前にさっさと帰りの電車に乗って帰る。おかげで帰りものんびりと座れた。


 仙石駅に着くと、紫はそのまま駅ビルの大きな書店へと足を進めた。1Q84を読み終わったので、新しい本を買うことにしたのである。紫は時間をかけてゆっくりと次に買うべき本を吟味する。一時間ほど迷った末に「もしも野球部のマネージャがドラッカーのマネジメントを読んだら」と「下流の宴」を買った。これで電車の中で暇な思いをせずに済む。紫は帰りの電車で何もすることがなくて、退屈を持て余したことを少しばかり後悔していた。


 それからデパ地下で安くておいしそうな総菜を買ってから、自転車で家へと向かう。まだ、五時を過ぎたばかりだと言うのに、外はもう真っ暗である。暗くなると寒さが一段と強まる。夕方から寒気が流れ込むと天気予報で言っていた。これから寒気が強まり、翌朝は関東平野部でも雪が積もるかもしれないらしい。


 紫は寒いのが苦手であった。寒さに負けじと、自転車のスピードを一段と早める。早く家に帰って、ストーブで暖を取りたい…。

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