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焼けくそレーシック  作者: あまやま 想
第1部 東京編  第1章 発端
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1月22日(日) ♪2

「桜田さん、手術の前に瞳孔を開く目薬を注しますね」


 目薬を注されると、だんだん瞳孔が麻痺して、まぶしくなってくる。やっぱり、不安になって来た。紫はふと帰ろうかなとさえ思った。でも、もう周りが明るすぎでぼやけてしか見えない。もう、手術が終わるまで帰れない…。紫は腹をくくる。


「さあ、桜田さん、準備はよろしいですか? こちらの準備ができましたので、どうぞ、こちらへお越し下さい」


 なんと、院長自らが呼び出しにやって来た。紫は診察室の先にある手術室へと誘われる。手術室の前に着くと緑色のレインコートのような手術着をかぶせられた。紫はそれに袖を通す。手術着を着ると手術室へ通される。紫は言われるがままに手術台で横になった。嫌でも緊張が高まる。心臓だけがバクバクと動いた。


「それでは手術を始めます」


 レーシックでは全身麻酔など使わない。前日に女医から説明があった通り、まず右目に麻酔液を注す。左目には視力検査でよく使う目隠しがかぶせられた。それから、しばらくすると右まぶたを器具で固定された。


 まぶたが固定されたと思ったら、一瞬のうちに何かが切り取られて、完全に視力を失った状態となる。分かるのは明るいか、暗いかだけ…。これは角膜の一部を切り取ったからである。先生は切り取った角膜の一部をフラッペと呼んでいた。次に角膜を切り取った部分にレーザー光線を当てる。角膜の奥にある水晶体をレーザー光線で削り取っていく。


 かすかに肉が焼けるにおいがした。水晶体を削ることで、ピントを調整していく。昨日の検査でどこまで削れば、視力1.0〜1.2にすることができるか分かっているので、必要な分だけ水晶体にレーザー光線を当てていく。それが終わったら、フラッペを元に戻す。すると、視界がおぼろけながら戻って来た。とりあえず、これで右目が終わった。まだ、さっきメガネを外したときと同じくらいしか見えない…。


 角膜は元に戻る力が体の中でも特に強く、二、三日もあれば、切断面がきれいに引っ付くらしい。レーシックは角膜の再生力の強さを利用した手術と言える。そして、左目も右目と同じ手順で術式を進めていく。同じことをしていることは頭では分かっているが、それでも角膜が切り取られて、視界がなくなる瞬間、恐怖で思わず体が硬くなる。

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