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焼けくそレーシック  作者: あまやま 想
第1部 東京編  第1章 発端
15/150

1月21日(土) 〜#3〜

「それでは桜田さん、本日は事前検査を行いますね。事前検査では視力や眼圧はもちろんのこと、角膜の厚さや、瞳孔の開き具合なども調べます。それらを総合的に判断して、レーシックが可能かどうか決めます。それではどうぞ、こちらへ…」


 先生に言われるがまま、紫は一つずつ検査を進めていく。視力や眼圧検査はメガネやコンタクトを作る時もやるので、何回か受けたこともある。しかし、角膜の厚さや瞳孔の開き具合の検査は初めてだったので、とても新鮮だった。


 まずメガネを外すと、いきなり目薬を注された。すると、少しずつだが、周りがまぶしくなってくる。先生の話では目薬は瞳孔を開くための薬で、この状態じゃないと検査ができないらしい。全ての検査が終わった後は周りが明るすぎて、ぼやけてしか見えなかった。瞳孔が開きっぱなしで光を調節できない。そこで再び目薬が注される。今度は瞳孔の働きを元に戻す薬らしい。しかし、すぐには戻らない。やっぱり、ピントが合わない。説明をする先生の顔がぼやけていた。


「検査の結果、桜田さんは問題なくレーシックができます。さて、手術の日ですが、いつがいいですか? 早ければ、明日の午後三時からできますよ。桜田さんはコンタクトをしていないのでよかったですよ。コンタクトをしている人は最低でも一週間コンタクトを外した状態でないと、手術はできないですからね…」


 紫はここでちょっと不安になってきた。この先生は果たして、本当に信頼できるのかどうか…。過去にレーシック手術のやり方がずさんだったために、角膜炎などの集団感染を引き起こした銀座眼科のことが頭に引っかかっていた。


「あの…、ちょっと質問してもいいですか?」


「はい、どうぞ」


「レーシック手術で、失敗するとやっぱり失明するんですか?」


 紫は女医をまっすぐ見つめる。女医も同じように紫を見つめる。お互いに真剣なまなざし…。しばらくして、女医が口を開く。


「そのような心配は無用ですよ。現在、適切な方法でレーシック手術を受けて失明したと言う報告は一件もありません。ほとんどの方は手術後に確実に視力が回復しております。ただ、ごくまれに手術後も思うように視力が回復しない方やドライアイがひどくなられた方もおられます。ただ、これだけは、はっきりと言えます。当院では手術道具は念入りに消毒し、使い捨ての道具の使い回しはいっさい行っておりません。それに私は年に百件以上の手術実績があります。それでも桜田さんが不安を感じられるなら、無理には手術を進めませんが…。いかが、なさいますか?」


 女医の丁寧な説明により、紫はいくぶんか安心した。江角先生は信頼できる人物だと判断した。よし、この先生に全てを任せよう。紫は早くできるのであれば、早い方がいいと思い、翌日の日曜三時からレーシックをやってもらうことにした。


 これで何の予定のなかった日曜日が埋まったので一石二鳥である。先生から手術日は絶対に車を運転してこないように言われたが、新宿に車で来られるのは金持ちぐらいである。そんなことを考えながら、目が元に戻るのを待った。三十分後、ようやくまぶしさがいくぶんかマシになったので、眼科を後にした。

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