1月21日(土) 〜#2〜
それでも陽美に教えてもらった通りに「江角眼科クリニック」へと足を進める。駅を出ても相変わらず人が多くて、気分が悪くなって来た。背の高すぎるビルの大群が威圧的で押しつぶされそうになる。紫は東京生まれ、東京育ちと言うのに、新宿や渋谷などの人混みとかビルの大群が苦手であった。
「あっ、これだ。やっと、着いたよ…。なんだ、駅からまっすぐ行けたじゃん…、もう…」
その上、紫は方向音痴である。一人で歩いて、まっすぐ目的地に行けた試しがない。分かっていても、自分に対して愚痴をこぼしてしまう。それでも、気を取り直して中へ入っていく。
「いらっしゃいませ。本日はどうなされましたか?」
「あの…、知り合いから、ここの眼科のレーシック手術を勧められまして…」
「レーシックをご希望ですか。レーシックは保険外診療となりますが、念のため保険証のご呈示をお願い致します。それから、こちらの質問紙へのご記入をお願い申し上げます」
「はい…」
紫は保険証を差し出した。レーシックは一般診療でなく、保険外診療のはずなのに…と不思議に思いながら…。それから、質問紙への書き込みを始めた。すると、受付の女性から
「おかけになってどうぞ」
と言われたので、待合室のいすに座って書く。質問はメガネ歴やコンタクトレンズの利用の有無、裸眼視力と矯正視力、薬やアレルギーのことなどについてであった。書き終えて、受付に質問紙を提出する。
「この一週間、コンタクトを利用されましたか?」
「いいえ、もともとコンタクトは使っておりません。メガネのみです」
「左様でございますか。かしこまりました。本日はレーシックの事前検査となります。申し訳ありませんが、呼ばれるまでおかけになってお待ちください」
そう言われると紫は再び待合室のいすに座った。そして、バックから1Q84を出して、さっきの続きを読み出す。するとすぐに、
「桜田さん、桜田さん、奥へお入りください」
呼ばれたので、あまり読み進むことはできなかった。診察室へ入ると一人の女医が待っていた。
「こんにちは、お願いします」
「はい、こんにちは。どうぞ、おかけになってください」
紫は女医の前に座る。この方がレーシックで有名と言われている江角先生だろうか…。陽美は確か、そんなことを言っていた。レーシック手術の腕も確かで、多くの有名人もここをよく利用しているとのこと…。




