4月6日(金) で4
「ええっ! 彼氏にふられて、焼けくそになった勢いでレーシックをやったと?」
「そうよ。何回も同じことを言わせないで!」
「個人的にはその過激なきっかけも含めて、体験記として載せたいちゃけど…。さすがに自転車を盗んだ話は載せられんけど…」
「だから、日記は見せたくないの!」
稲森美和と一緒に仕事帰り、居酒屋へ寄った。どうしても日記を見せたくなかったので、どれだけ過激なことが書いてあるのか、美和に伝える。しかし、美和はますます前のめりになってきた。
「だから、私個人の体験記ではなくてさ、ネット上で全国からレーシック体験談を応募して、集まった物を編集した方が絶対に面白いって!」
「どうしても、紫ちゃんの日記を見せたくなかとね…」
「美和、逆の立場なら、見せたいと思う?」
「そもそも、私は日記なんか書きませんから…」
こんなことなら、馬鹿正直に日記にレーシックをやってからの経過を全て記録しているなんて言わなければよかった…。
「ネットからレーシック体験談を応募しないなら、私は協力しないよ!」
「まあ、まあ、紫ちゃん。そんなこと言わずに、まあ飲んで…」
美和が残り少なくなったグラスを見ながら言う。紫は生中のおかわりを頼む。美和が焼酎のお湯割りと一緒に店員へ頼む。
「それに、不特定多数の体験談となれば、誰のことか特定もされない上に、いろんな情報が一気に知れるからいいと思うけどな…」
「分かった。そこまで言うなら、それで猿渡班長と牧本さんに掛け合ってみるばい。確かに不特定多数の情報もよかけど、それが本当かどうか見極められるのは紫だけだから、やっぱり協力してもらわんと…」
私はいつ総務の仕事をこなせばいいのだろうか…。協力できることは協力するが、本業をおろそかにはできない。
「そう言えば…私にレーシックを進めてくれた人なら、きっと協力してくれると思う」
「その人は紫のエスペランサ出版時代の同僚?」
「そうよ。かつて、同じ課で一緒に仕事していた人。まあ、三月でリストラになったものの、五月には結婚するから、かえってよかったと言うような人よ」
紫はエスペランサ出版で一番仲の良かった久留米陽美のことを思い出した。レーシックをしたことをきっかけにして、もともと一重だったまぶたを二重にしたり、美しさのためならほっぺたに金の糸を入れ込んだりするような人である。
「ずいぶん、図太い人なのね…」
「いや、稲森美和さんには、誰もかないませんけどね…」
「そうやって、しれっと嫌味を言う総務主任も大概ですよ」
それ以上は何も言えず、二人はただ苦笑いしてごました。陽美の体験談が入ったら、間違いなく面白い物が書けるに違いない。早速、明日、陽美に電話しよう。




