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守護者の騎士、嫉妬に揺れる

宮廷内に、「近衛師団長と、王妃付き相談役フェスティアの仲が尋常ではない」という噂が、いよいよ無視できないレベルで広がっていた。


ある晴れた午後、庭園で寛いでいた私に、若き侯爵令息・レオナールが声をかけてきた。彼は社交界でも有名な華やかな貴公子で、真っ赤なバラの花束を捧げ持っていた。


「フェスティア様。先日の茶会での貴女の優雅な物腰に、私は一目で心を奪われました。どうか、今夜の舞踏会で私と踊っていただけませんか?」


「あら、ごめんなさい。私、踊り方はあまり……」


私が困って首を傾げたその時、背後の生垣がガサガサと音を立てて揺れた。次の瞬間、影のように現れたアルフレドが、私の目の前に立ちはだかった。


「レオナール侯爵。貴殿に、そのような許可は降りていないはずだ」


「……近衛師団長? これはこれは。彼女を警護するのは君の任務かもしれないが、これほどの野暮は感心しないな」


「任務ではない」


アルフレドの声は氷のように冷たかった。彼は私を背中に隠すと、レオナールを射抜くような鋭い眼差しで睨みつけた。


「フェスティアは、俺の……。この王宮で、俺以外が管轄することは許されていない」


その場に居合わせた女官たちが「あらまあ!」と色めき立つ。私も驚いてアルフレドの背中を見上げた。彼の肩が小さく震えている。……もしかして、嫉妬しているのかしら?


結局、レオナールはアルフレドの鬼気迫るオーラに圧倒され、バラの花束を落とすようにして立ち去った。


「アルフレド? なんだか、すごく怖かったわよ」


彼が振り返ったとき、その顔は真っ赤に茹で上がっていた。


「……あいつは、君の正体も知らずに……君の笑顔の裏にある、あの『魔法』のヤバさも知らずに……!」


「そんなに怒らなくても。ただのお誘いでしょう?」


「……ただではない!」


アルフレドは激しく息を吐き出すと、近くの木に拳を叩きつけた。


「君は自分がどれだけ危うい存在か分かっているのか? 誰でも彼でも、君を『特別な魔女』として利用しようとする輩が現れるかもしれない。……俺は、そんな連中を、一人たりとも君に近づけたくないんだ」


彼のその言葉には、ただの嫉妬だけではない、重苦しいまでの使命感が混じっていた。彼は、私という「300年の秘密」を、自分の手の中で守り抜こうとしている。


その夜、私は自室でアルフレドに手紙を書いた。

『今日は守ってくれてありがとう。でも、時々でいいから、私の隣でただ笑ってくれるアルフレドも見たいな』


翌朝、執務室でそれを受け取った彼は、顔を背けながらも、私のためにわざわざ森の果実を仕入れてきてくれた。


「……これ、君が好きだと言っていただろう。……舞踏会には行かなくていい。今夜は、俺の執務室でお茶を飲もう」


不器用で、気苦労ばかりで、でも誰よりも私を想ってくれる騎士。

そんな彼の隣にいるだけで、宮廷の窮屈な空気なんて、どこかへ吹き飛んでしまいそうだ。


噂話が宮廷中を飛び交う中で、私たちは二人きりの穏やかな夜を過ごした。

アルフレドの胃は相変わらず限界かもしれないけれど、私の心は、彼のおかげでこれ以上ないほど満たされていた。

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