第52話 おばあちゃんの家に私と姉①
「私も今から行こうかな、小景は何時までいる予定?」
おばあちゃんの家に遊びに来ている私は、おばあちゃんとのツーショットをお姉ちゃんに送っていた。これはその返信。ここに私とお姉ちゃんが揃うかもしれないことが嬉しくて、急いでメッセージを返した。
「私は泊まっていく予定だけど、お姉ちゃんも泊まってく?」
「そうしようかな。今から準備して行くから、おばあちゃんに言っておいて」
おばあちゃんの家に私たちふたりが揃うのは数年ぶりになる。きっとおばあちゃんも喜んでくれるだろう。私はおばあちゃんにこのことを共有する。
「おばあちゃん!今からお姉ちゃんここに来るって!」
「あら、ひなちゃんも来るのね。楽しみだわ」
喜んでいるおばあちゃんを余所に、私は考える。お姉ちゃんが来ることは、嬉しいけどちょっと想定外だったな。
本当は今日と明日でお姉ちゃんの過去について、おばあちゃんからいろいろ聞いてしまおうと思ってたんだけど、それは明日以降でもいいか。私はお姉ちゃんに、「泊まる」って言ったけど、それは1泊2日じゃなくて2泊3日。お姉ちゃんはバイトもあって忙しいから連泊はしないだろうし、お姉ちゃんが帰った後でゆっくり調べることにしよう。
「おばあちゃんも楽しみにしてるって!」
私はおばあちゃんの喜んでいる様子だけ伝えて、お姉ちゃんがこっちにやってくるのを待った。
◇ ◇ ◇
お姉ちゃんも合流して、私たち3人はリビングでティータイムを楽しんでいた。
「それにしても、ふたりが揃っているのを見るのも久しぶりねぇ」
私とお姉ちゃんの対面に座っているおばあちゃんは嬉しそうにふたりを交互に見比べている。
「こかげちゃんは高校生活はどう?楽しめてる?」
「うん!すっごい楽しい!部活も中学よりレベルが上がってもっと面白くなったんだ」
私は部活での出来事を中心にたくさん話した。普段の練習だったり、寮での生活だったり、大会での思い出だったり。1学期の3か月とちょっとの間にいろんなことがあって、思い出せば思い出すほど話は止まらなくなっていった。
「部活以外にもね、お姉ちゃんに勉強教えてもらったりもしたんだ。ね?」
そう言って私はお姉ちゃんの方を見る。話し続ける私の方をぼんやり見ていたお姉ちゃんは、急に話を振られて慌てて頷いた。
「え!?あぁ、うん、そうだね。友達も呼んで私の家で勉強会したんだ」
その言葉に、おばあちゃんは意外そうにお姉ちゃんを見たあと、私に尋ねた。
「あら?こかげちゃん、ひなちゃんの家に行ったのね」
「そう、優里先輩と美華と私でおじゃましたんだよね」
「うん、でもやっぱり4人じゃ窮屈だったね」
「え~あれくらいでちょうどいいよ!あ、でも床に座って勉強し続けるのはちょっと疲れるかも」
「確かに、クッションくらいあればよかったね」
そして、そのまま話題はお姉ちゃんの近況に移っていった。
「ひなちゃんの方は最近どう?あの子とも仲良くやってるの?」
「優里とも仲良くやってるよ。さっき言ってた小景の勉強見てくれたのも優里。最近は塾に通い始めたから、あまり話せてないけど。私の方はひとりでずっと勉強してるよ。おかげで夏休みの宿題もほぼ終わっちゃったし」
「ひなちゃんも塾通いたい?」
「ううん。今のままで十分助かってるよ。ありがとう」
おばあちゃんの提案を断って、お姉ちゃんは他の話題に切り替えた。
「そういえば、今度小景と映画行くんだ」
「そう!私そのために初めてちゃんと小説読んだんだから!すごい楽しみ」
そう言って私はスマホを取り出す。この前、美華と行った商業施設で撮ってきた写真を見せる。
「ほら見て!この前、美華と遊びに行ったとこで撮ってきたやつ!予告編とか流れてて、いよいよ始まるって感じがしてワクワクしちゃった!」
「おお、結構いい感じ。これってあのシーンかな?」
お姉ちゃんが目を輝かせて私のスマホをのぞき込んでいる。お姉ちゃんの好きなものを共有できているその事実が今、たまらなくうれしい。画面じゃなくてお姉ちゃんを見ていた私に、お姉ちゃんが尋ねる。
「そういえば公開日って載ってた?」
「え~っと、ちょっと待ってね」
私はカメラロールを動かして、他の写真に公開日が写ってないかを確認する。
「あった。ほらここ、8月14日からだって」
「お盆か。ちょっと待ってね」
今度はお姉ちゃんが、スマホでシフト表を確認する。
「8月16日とか小景空いてる?」
「うん!空いてるよ!そこらへんは部活もお盆休みになっててやることないんだ」
「オッケー。じゃあその日に映画行こっか」
「うん!楽しみだね」
実はまだ、私もお姉ちゃんもこの小説の感想を言っていない。きっとお姉ちゃんも映画の後にいろいろ語りたくて、今は我慢してるはず。だから私は当然の提案をする。
「映画終わったらさ、どっかでゆっくりしながら感想語ろうよ」
「いいね、そんなことするの初めて。すごい楽しみ」
どんどん具体的になっていく映画の日に、私は期待で胸を膨らませていた。




