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白い部屋と黒い過去  作者: 士ロ田
隠蔽と開示
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第28話 梅雨の教室に優里と私

 大会に出た小景こかげの応援に行った翌週の水曜日。6月の窓の外には雨模様が広がっていた。せっかくのお昼休みといっても、こうも雨続きだと教室の空気も暗く沈んでしまうものだ。まだまだ週の折り返し。そんな現実から逃げるために、私は意味もなくスマホを開く。小景とのトーク欄を開いて、小景からの最後のメッセージを改めて確認する。


「別に気にしなくていいよ~。どうせ団体戦じゃお姉ちゃんの目線を独り占めできないし」


 今週末は小景のバドミントンの団体戦がある。当然応援に行こうと思っていたんだけど、バイトのシフトが入ってしまっていて行けなくなってしまった、ということを昨日の夜に私が謝ったときの返事がこれだった。寝る前に送ったのか、かなり遅い時間に返信が届いていて、私が確認したのは今日の朝になってからだった。


 そういえば小景は、団体戦に出ることを遠回しにしか教えてくれていなかった。おかげで優里ゆうりに言われるまで、私は個人戦しか出ないものだと思っていた。最近の小景はどこか含みのある言い方をすることが多い気がする。なんて考えていると、どこからか教室に帰ってきた優里が視界の端に映った。私は席を立ち優里のもとへ向かう。


「優里、どこ行ってたの?」

「ん?えぇ、ちょっと図書室にね。新しい本でも借りようかと思って」

「え~それなら私も誘ってよ~」

「悪かったわね。……ちょっといろいろあったのよ」


 何かを隠したような間に、私は少しもやっとしてしまう。そりゃあ優里のすべてを知らないと気が済まないという訳ではないんだけど、隠されたことが分かってしまうと、どうもやり場のない気持ちになる。私の不機嫌を感じ取ったのか、優里は無理やり話題を切り替えた。


「そういえば日向。妹の団体戦行けないらしいわね」

「……うん、バイト入っちゃってね。まぁでも小景は小景であんまり気にしてなさそうだったからよかった」

「そう。でもあの感じだとチームとしては負けても、個人では負けなさそうね」


 優里は何かを隠そうとするとき、いつもすぐにボロを出す。中学生のバレンタインでチョコを交換したときも。


「これ優里の手作り?」

「違うわよ!市販のやつ」

「え~私のやつは手作りなのに」


 なんて会話をしたすぐあとに。私の「そういえば、湯煎って結構難しくてさ」という話に対して。


「わかるわ、私も一回ぼろぼろになっちゃったもん。あんまり混ぜすぎるのはよくなかったらしいわ」


 てな感じで乗ってくるくらいには隠し通すのが下手だった。もちろんそのときは少し泳がせてから指摘して、恥ずかしがって開き直る優里を満喫した。


 今回もそうだ。前よりは露骨じゃないけどボロは出してる。そもそも優里は優しすぎるし素直すぎるからそういうことに向いていない。少しだけ探りを入れてみる。


「優里はどうして私が小景の大会に行かないことを知ってるの?」

「そ、それはもちろんあんたの妹から聞いたからよ」

「私が知らない間に小景と仲良くなってたんだ。ちょっとフクザツ」

「別にそこまでじゃないわよ」

「それもなんか嫌かも」

「じゃあどうすればいいのよ。そもそもあの子の話題は日向ばっかりよ」

「あれ?そうなの?」

「この間、おんなじ本買ったんでしょ?全然集中できないからコツを教えてだの、このしおり可愛いでしょだの、日向の話ばっかり」

「そうなんだ、なんか恥ずかしいな」

「それで昨日もあんたの話。バイトなら仕方ないだの、他の先輩たちを応援されるくらいならむしろ良かっただのいろいろ言ってたわ」


 以降も優里の口から語られる小景の話は全部私につながっていた。友人の妹から延々姉の話を聞かされるというのも、申し訳なくなってきた。


「ごめんね、優里」

「え?どうしたのよ急に」

「いや、小景がそんなに懐いているとは思わなくて。しかも私の話ばっかりなんて」

「まあ、別に日向が謝ることじゃないわよ」

「何か私が優里にしてあげられることはない?」


 優里への申し訳なさで、いつの間にか隠し事を探る気が無くなっていた私は、優里にせめてもの埋め合わせをしようと提案した。


「いや、べつにそんな……って思ったけど、ひとつあるわ」

「なになに?私にできることなら何なりと」

「今度またうちに泊まりに来てよ。前泊まったときは、ほらあまりいい思い出じゃなかったでしょ?」

「ううん、そんなことないよ。でも分かった。いつにしよっか?」

「それならどうせ月末にはテストが始まるから、そんときにしない?勉強会も兼ねてってことで」

「うん、わかった。じゃあ楽しみにしてる。他は誰か呼んだりするの?」

「ううん、日向だけがいい」

「……分かった」


 お泊まり会の約束を取り付けていると、昼休み終わりの5分前を告げるチャイムが鳴った。私は席を立ち、優里に軽く別れを告げる。


「お泊まり会でしたいこといっぱい考えとくね」

「そんなに張り切らなくても、どうせ半分は勉強よ。まぁでも、晩御飯くらいは食べたいもの考えといて」

「もう言っていい?」

「もう決まってるの?すっごい大変なのは勘弁してよね」


 私は昔を思い出しながら優里にリクエストをする。


「カレーが食べたい。茄子が入っているやつ」

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