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第18話 応援とLINEと私


「今週末、部活の大会があるんですけど、お姉ちゃんと見に来てくれませんか?」


 私のスマホに届いたメッセージは日向ひなたの妹、小景こかげからのものだった。


 今日、私は学校で同じことを日向に言われた。どうやらバドミントンの大会があるらしく、応援に来てほしいというものだった。日向は昨日小景に誘われたらしく、ぜひ私もということだった。私は返事をいったん明日に先送りして帰宅していた。


 親友の妹が部活の大会を見に来てほしがっている。なんとも微笑ましいことだ。ただ、私の心は晴れやかではなかった。


 私の気にしすぎであればいいが、小景は純粋な理由で私に近づいたわけではない、と私は思っている。もちろんこれが杞憂で、ただ私が失礼なヤツであったのならそれはそれでいい。


 しかし、考えすぎてしまうだけの理由を私は持っている。小景が持ってなくて私が持っているもの。それは、日向の過去。


 日向は中学の頃、母親から虐待を受けていた。彼女曰く、小景がバドミントンで帰宅が遅いときに限ってそれは行われていたらしいので、小景が知らないのも無理はない。「なぜ日向だけなのか」という当時の私の疑問には、日向は最後まで答えてくれなかった。


 結局、私が知っていることは小景が知りたいことのほんの一部でしかないが、それでも日向にとっては知ってほしくないことだろう。こんなもの、できるなら私も日向も忘れてしまいたいに決まっている。


 それを今になって探られるのは当然いい気はしない。私はいい気がしない程度だが、日向が受けるダメージは私には想像もつかない。そんなことは私がさせない。


 とはいっても、露骨に小景と距離を取るわけにもいかない。それはそれで日向が悲しんでしまう。まずは普通に小景と接しながら、本当に過去の手掛かりとして私を見ているかを確定させる必要がある。もしそうであったとしても距離を取れない以上、ほとんど逃げ場はないけれど、足掻くくらいはできるってものだ。


 理想を言えば、ただの親友の妹として接したい。そのためにも、私はまた探偵ごっこをする必要がある。そうと決まればまずはLINEの返信からだ。


「別に行くのは構わないけど、私、バドミントン詳しくないわよ?」


 拒否はしないものの、積極的に行きたいわけではない状態を遠回しに表現、したつもりだ。するとすぐに小景から返信が届いた。


「お姉ちゃんと同じこと言ってる笑。お姉ちゃんもルール知らないみたいだから、なんとなくでも一緒に盛り上がれる人がほしくて優里先輩誘おうって言ったんだと思う」


 なるほど、小景が大会に誘ったのは日向だけで、私を誘ったのは日向だったのか。となれば少なくとも今回は深く探る必要はなさそうか。


「わかった。日向と行くわ。ルールも多少勉強しておく。それで、()()()って何時からなの?」


 個人競技の部活は、団体戦でレギュラーに選ばれなくても、個人戦の方だけ出場するものだと今日、日向から聞いていた。私はそれゆえの疑問もあって、少し回りくどく確認する。


「開会式のあとすぐなので、10時30分くらいからで、団体戦はその翌週です!先輩そっちも来てくれるんですか?」


 質問の意図を察した小景が答える。やはり小景はかなり鋭い。私が何を聞きたいのかを理解したうえで直接的には答えない。私のこれまでの疑念が、ただの気にしすぎではなくなっていくようだった。


 私の質問の意図はこうだった。「小景は団体戦に出ないのか?」私は出るのだろうと思いながら聞いたが、どうやら当たっていたらしい。


 私の仮定では小景は部内でも実力のあるメンバーだと睨んでいる。仮に小景の実力がまだ大会で勝ち進められるレベルでない場合、すぐに負けてもおかしくない1年目の大会から見に来てほしいとは言いにくいと思ったからだ。もちろんそれでも応援に来てほしい人はたくさんいるだろうが、あの姉妹はまだ関係を修復している途中で、勝てるかどうかも分からない予選の1試合のためだけに1日を使わせようというのは気が引けてしまうはずだと私は考えた。


 そう考えた私の意図を小景はどこまで理解しているかは知らないが。少なくとも小景は団体戦に出ることを暗に伝えるくらいには私のサインを受け取っている。というか純粋にすごいな、入学してまだ大した期間も経っていないというのに。私は感心しつつ小景に返信する。今日はもう十分な成果が得られただろう。


「じゃあ、10時くらいに会場に着くようにする。あとで会場の場所だけ共有しといてくれたら、当日ふたりで迷子にならずに済むわ」

「わかりました!来てくれるの楽しみにしてます!かっこいいとこ見せちゃいますから!」


 そう綴られたメッセージの後にはバドミントンをしている女の子のスタンプが送られてきていた。私はスマホの画面を閉じて椅子に座り直して、先ほどのやり取りを振り返る。そのうえで結論を出すと、小景は私に取り入ろうとしているし、私より上手うわてだということだ。


「はぁ、……週末は楽しみね」

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