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第19話 会場に優里と私

 ショッピングモールで小景こかげに部活の大会の応援を頼まれてから1週間、私と、私に付き合わされた優里ゆうりは地域の大きめな体育館に来ていた。たぶんスポーツセンターとかって名前だったはず。

 

 2階の応援席から1階でウォーミングアップをしている選手たちを見下ろす。バドミントンはおろか、スポーツの大会をまともに見たことがない私は、この熱気に少し気圧されてしまう。


 会場は人数に対してスペースが足りないらしく、各学校に少しずつ割り当てられた練習スペースで、選手たちが代わる代わる最低限のアップをこなしていた。ぼんやりとその光景を眺めていると、大会運営のアナウンスが始まった。


「これより各ブロック第一試合から開始していきます。名前を呼ばれた選手は各ブロック受付までお越しください」

「予選Aブロック――」


 どうやら始まったらしい。聞いていた話では、小景はA/B/C/Dの4ブロックのうち、Bブロックとのことだった。各ブロックでベスト8まで決めて、その後ダブルスも同様にベスト8まで絞られる。そこまで残れば2日目に勝ち進むことができるらしい。


「やっと始まるわね。ルール、ちょっとくらい調べてきた?」

「ほんとにちょっとだけね、1ゲーム21点で2ゲーム先取ってことくらいは分かる」

「ほんとにちょっとじゃない」


 なんて雑談を交わしながら小景を探す。4ブロックに分かれていると言ってもかなりの数の選手がいる中でひとりを見つけ出すのはかなり骨が折れる。私が探すのに苦労していると横にいた優里から提案が飛んできた。


「この状態で探すのは無理そうね。妹からトーナメント表とかってもらってる?」

「うん、一応写真だけ送ってもらったよ」

「じゃあ、開始時間にあたりをつけましょ。私もなめてたわ、この人数の中から探すのはきついわ」


 そう言って優里は私のスマホのトーナメント表をのぞき込んだ。「林 小景」。赤で丸が付けられている箇所を見ながら優里は言う。


「トーナメント表の端から呼ばれてるんだったらまだ少し時間がかかりそうね、1試合がどんくらいかかるかだけ見てから、少し休憩しておきましょ」


 そう言われて改めてトーナメント表を見る。赤い丸はBブロックの右側にある。確かに左から消化していっているのならそこそこ時間がかかるだろう。


「そうだね、正直この熱気で私はもうバテちゃいそうだよ」

「それはもうちょっと体力をつけた方がいいんじゃない?」


◇ ◇ ◇


 Bブロックの選手全員の中から小景を探すことを諦めて、1時間が経とうとしていた。


「日向、私、少し下に行ってトーナメントの進行状況見てくるわ」

「え、じゃあ私も一緒行くよ」

「そう、じゃあ行きましょっか」


 1階の会場の入り口にはでかでかと印刷されたトーナメント表が貼ってあり、それぞれの進行状況が運営の人の手作業で随時更新されていた。肝心のBブロックはというと、1回戦はまだ25%くらいしか進んでいなかった。それもそうだ、トーナメントなんだから1回戦が1番試合数が多い。


「この様子じゃ追加で1時間くらいかしらね」

「うわ~蒸しあがっちゃう」


 そう、私は初めて知ったんだけど、6月の日中の体育館は死ぬほど暑い。先にこっちが熱中症になってしまうんじゃないかと思うくらい。どうやってこれからを乗り切ろうかと考えていると、後ろから声をかけられた。


「お姉ちゃん!」


 振り返ると、ユニフォームを着た小景がそこにいた。


「小景じゃん、試合まだ先でしょ?ここ結構暑いね。水分補給はしっかりしなきゃだよ」

「……ほかにも言うことあるでしょ?」


 そう言って小景は両腕を広げる。何のことか分からないでいると横から優里に肘打ちされる。


「服」


 言われて慌てて全身を見る。赤のユニフォームに黒のスカートみたいなボトム。髪は普段通り高めにまとめられている。さっきから暑さのことで頭がいっぱいで、小景のユニフォーム姿が目に入っていなかった。


「確かにかわいいし涼しそう、ボトムもスカートみたいになってるのとか特にかわいい」


 それを聞いた小景は満足したのか、広げていた腕をおろして続ける。


「試合はもうちょっと先になるかな。それまで暑さに耐えられないんだったら外の日陰の方が涼しいかも。近くにコンビニあるみたいだしそっちに1回避難しちゃってもいいかも」

「限界が来たらそうするよ」

「参加者側が言うのも変だけど、倒れないようにね。あと優里先輩。今日は来てくれてありがとうございます」

「えぇ、小景さんこそ頑張ってね」

「任せてください」


 そんな会話をしていると小景の視線が私たちの後ろに向かった。かと思うと、


「やばっ、先輩いるじゃん。じゃあ私行くね!また後で!」


 そう告げて走り去っていった。なんというか、運動部は元気があるな。大会なんだからそれもそうか。


「で、どうする?いったん外にでも出る?」

「そうだね、少し休憩がてらコンビニ行こっか。飲み物欲しくなってきちゃった」


 私たちは会場をいったん後にしてコンビニに向かうことにした。スポーツセンターからコンビニまでの道のりには、同じ考えの人がちらほらいて、私たちもその流れに逆らわないように歩く。


「ねぇ、1つ聞いてもいい?」


 優里が珍しく私に何かを聞きたい様子だった。優里が私に何かを聞いてくることなんてめったにない。少し状況を飲み込めないでいたけど、私は「何?」とだけ返す。


「私はこの前、結果だけ聞いて深くは追及しなかった。いずれ考えていればわかると思ったから。でも、いくら考えてもわからなかった。だからもう、直接聞いてしまうことにするわ」


 これまた珍しく回りくどい優里の話を黙って聞いていた。そして優里が意を決して私に尋ねた。


「何が()()()()で日向と妹は仲直りすることになったの?」

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