表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まだ名もなき怪物達 第3部ー断翼の誓ー  作者: HANA


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/23

第12話 静かな兆し


ーーー三年後。


朝の空気は変わらないけれど、足音の速さが違う。

「現場、第二ポイントへ展開。先行は白石」

低い声が無線から迷いなく飛ぶ。

「了解」

白石が即答する。

「律、後方カバー。単独判断するな」

「はい」

間髪入れず返る。

無線のやり取りは短い。

必要なことだけそれで足りている。


「全員、帰すぞ」


最後に一言、それだけで動きが揃う。

三年前にはなかった統率だった。

任務は、数分で終わった。

無駄もなく、怪我人もいない。

橘には蓮に似てきたなと言われた蒼真。

あいつと一緒にしないでくれ。と言ったら笑われた。


「……現状終了。第一、撤収」

短い指示が飛ぶだけで全員が動く。



国家特殊武装機関【黎明】

第一特務遊撃隊

隊長 神代蒼真

副隊長 白石悠斗

隊員 雨宮恒一

隊員 朝倉奏

隊員 久我律



本部へ戻り、帰還報告をすると白石だけ総統室に呼び止められた。

「副隊長、なんかしたんすか?」

奏が興味深々で蒼真に尋ねた。

「知らねぇ」

「ほんとすか?雨宮さんはなんか知ってますか?」

「……知らん」

えーと奏が残念そうな顔をした。

「そんな事より、お前の報告書だけ毎回戻ってくるのはなんでだよ」

仕事を増やすんじゃねぇと蒼真が奏の頭をぺしっと叩いた。

それを見た律が笑う。

「朝倉先輩って昔からそうですよね」

「律が優秀で助かるわ〜」


蒼真と律が奏弄りをするのは、もはや日常だった。

27歳になっても奏は奏のままで朝は蒼真に突撃しては落とされている。

そんなやり取りが部隊を明るくしてくれているのも蒼真はわかって付き合っている。

白石の軽口、雨宮の謎の観察行動、奏の明るさ、律の真面目さが隊長と本部特別執行官となっていた蒼真の忙しさを支えてくれている。


もちろん、麗華も。

3年前、籍を入れたが特に何も変化はなかった。

元々、蒼真が居候していたが、ちゃんとする。と蒼真は本部近くに家を購入、いつでも呼び出しに対応出来る形を取った。


そして…蓮。

時々、連絡は取るけど大した事は話さない。

特にお互いの近況報告すらしない。

別に仲良くないし。


隊室に戻ると各部隊からの報告書、申請書が机の上に上がっている。

その1枚1枚を的確に捌く。

「あ〜終わんねぇ…マジでもう帰りたい」

「隊長って現場と事務の振り幅ヤバいですよね」

コーヒーを差し入れしながら律が話し掛けた。

「そもそも、書類嫌いだ。あ、律、今日の判断は良かったけど、3秒遅い」

受け取ったコーヒーを飲みながら蒼真が話し、書類へと視線を戻した。

「はいっ」

その時、隊室の扉が開き、白石が戻って来た。


「副隊長、お疲れ様でーす。って……」

奏は何の呼び出しですか?と目を輝かせているようだが、最後は言葉に詰まった。

「奏、ウザっ」

白石はいつもの軽口だな

「ねぇー神代隊長?」

「その呼び方やめて欲しいっす」

「じゃあ、神代」

「はい?」


「黒瀬、戻るぞ」


書類に目を走らせていた蒼真の目が止まった。

書類からようやく顔をあげると、扉を閉める蓮の姿。


「……よぉ」

「……おぅ」

たったそれだけ。

待ってたも待たせたもいらない。

全部、分かってるから。


「全くお前らは…で、黒瀬が第一に復帰に伴い、副隊長任命、俺は平隊員に戻りまーす!以上、報告ね!」

「いや、報告軽ぅ!」

第一特務遊撃隊のみんなが笑った。


「まぁーお手柔らかに頼むわ、隊長様」

ニヤッと蓮が笑った。

「やっぱ1回死ねや、副隊長様」

蒼真もニヤッと蓮に笑いかける。




ーガチャ。

「失礼します」

凛とした声が響いた。

「隊長、この申請書お願いします」

書類を持った麗華だった。


「了解。…終わったの?」

「うん、ここで待つね」

「分かった」

蒼真に申請書を渡すと、麗華は蒼真の席の後ろにある椅子へ腰掛ける。

ここ最近、麗華の方が仕事が早く終わる事が多く、こうして待ってくれている。


「隊長、これ確認お願いしま——」

「後」

奏が報告書を持ってきたが蒼真は即切りだ。

「冷たっ!!」

これもいつも通り。

そんなやり取りを見ながら麗華は手に持っていた炭酸飲料をあけた。


プシュッ、と軽い音がり、シュワ、と泡が弾ける。

一口。

迷いなく飲む麗華に書類を捌いていた白石の手が止まった。


「……」

視線だけ動かし、麗華を見る。

もう一口、また飲む。

普通のただの炭酸。

それだけのはず。


「……珍しいな」

ぽつりと落ちる声。

麗華は視線だけ向ける。

「何が」

「炭酸、あまり飲まないじゃん」

「そう?」

軽い返事をするとまた一口飲む麗華。


白石は数秒だけ考えたが何も言わなかった。

「……いや」

だが、視線は一瞬だけ細くなった。


そんな麗華の横で蒼真は炭酸飲料を見つめていた。

「それうまいの?」

「普通」

「一口くれ」

勝手に手を伸ばし、もらおうとする。

「やめなさい」

ピシャッと麗華に手を叩かれたり

「ケチ」

いつものやり取り。


白石はそれを見て、ふっと息を吐いた。

「……気のせい、か…」

「……?」

副隊長の引き継ぎで隣に腰掛ける蓮にだけ聞こえる声だった。

蓮も何も言わずただ、一瞬だけ麗華へ視線を向けると蒼真が思い出したように蓮を呼ぶ。


「ぁ、蓮」

「なんだ」

「お前、あれもう入れたのか?」


あれ…第一特務遊撃隊に戻る際の条件として提示された物の事か…。


「生体反応デバイスの事か」


「そう」

蒼真が真っ直ぐにこちらを見ていた。

入れてなきゃ、現場には連れていかないという目をしている。

「当然」

「ならいいや」


第一特務遊撃隊の隊室に炭酸の泡だけが、静かに弾けていた。







ー生体反応デバイス導入についてー


蓮の滑落時、GPSの位置情報がズレていて蒼真は吹雪の中、必死に探しました。

その経験から生体反応デバイスの発案、導入を蒼真は立案し、すでに幹部となっていた葛城の協力の元、第一特務遊撃隊と第二特務遊撃隊にはデバイスの埋め込みが必須となりました。

デバイスは鎖骨付近に埋め込まれました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ