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緊急事態

 藤本と別れを告げた後、ルーカスと美穂は表参道の通りを歩いていた。

「告白成功すると良いですね。藤本さん」

「あぁ、そうだな。絶対成功するさ」

 あそこまでやった以上、何とか成功して欲しいものだ。 


 まぁ、それは相手次第だが。

「所で、ルーカスさん。この後って、どうするんです?」

 そろそろ原宿は、周り尽くしたといって良い。

 と、なると、次行く場所は。


「うーん。流石に、そろそろ帰らなければならないな」

 ルーカスは、この日本には、観光ではなく仕事の為にやって来た。

 もう二日も空いている以上、そろそろ帰らなければならない。


 殺し屋も自分の事を狙いに来た。これ以上、何かあっては美穂に迷惑がかかる恐れがある。

「仕事も山積みだろうしな。放っておくのは不味い」

「そうですか……」


 美穂が残念そうに呟く。出来れば美穂とは一緒に居たい。

 だが、この気持ちを伝えても平気だろうか?

「ルーカスさん。あっ……」


 道の何かに躓いたのか美穂が、転けてしまう。

 それを咄嗟に支えるルーカス。二人は思わぬ形で、抱き合う形になってしまった。

「ルーカスさん……」


「美穂……」

 距離が近い。熱が伝わる。

 この気持ちを伝えないと後悔する。ルーカスはそう思った。

「美穂、私は……」


「わ、私、トイレ行ってきます!」

 美穂は、すっと立ち上がり話を遮るように言った。

「あ、この辺にトイレありませんね。探して来ます!」

 そのまま美穂はルーカスの元を去ってしまった。


「はぁ、はぁ、どうしよう……」

 ルーカスの元を去り、裏通りに避難して来た美穂。

 彼女は、今、二つの気持ちで揺れ動いている。


 一つは、このまま、ずっとルーカスと一緒に居たいという思い。

 もう一つはルーカスを困らせてはならないという思い。

 二つの感情の間で美穂は揺れ動いていた。


「だ、駄目です。ルーカスさんはメルベールの王子。私とは一緒になりません」

 美穂は自分に言い聞かせるように言った。

 本心ではルーカスと一緒になりたい彼女だが、それを理性が拒む。


「そうです! ここはルーカスさんの事を、しっかり見送らなくては、負けちゃ駄目です。美穂」

 でも、出来る事なら。出来る事なら。

「いやいやいや。駄目です。駄目ですよ」

 美穂はルーカスと一緒に居たいという気持ちを、隠しルーカスを見送る決意をした。


 そして、踵を返し、ルーカスの元へと向かおうとする。

 その時だった。

「む、むぐぐぐぐ」

 突如として、何者かが、彼女の口元に白い布を強制的に当てた。


 その匂いを嗅ぐと何だか眠い気がする。

「ル、ルーカスさん……」

 そのまま彼女は眠ってしまった。


「むぅ、やはり私は美穂の事が好きなのだろうな」

 ルーカスは思う。やはり自分は美穂の氷が好きだ。

 この想いを彼女に伝えたい。しかし、どうやって?   


「むぅ、どうやって伝えよう?」

 ルーカスは悩んでいた。こんな体験は初めてだ。

「王子〜、見つけましたぞ〜」

 そこに聞き慣れた声が聞こえて来る。


 声がした方を向くと、ビッシュとトーマスが自分に向かって走って来るのが見えた。

「おぉ〜、ビッシュ。二日ぶりだな。どうしてここが分かった?」


「え、SNSを通じてなんとか……、というか王子何をやっておられるのです!」

「何って、日本観光じゃないか」


「日本観光じゃ、ありませんよ! 全く、ホテルを抜け出して、何をやっているのです!」

 ビッシュは明らかに怒っている様子。


 まぁ、した事がした事だからしょうがない事である。

「まぁ、そう怒るな。これからホテルに戻ろうと思っていた所だ」


「公務を放ったらかしにして、どうするおつもりです!」

「そこはビッシュ、君が何とかしてくれ」

「はぁ~、これだから王子は。全く戻りますぞ!」

 ルーカスも、これ以上、公務に穴を開けるのは不味いと考えていた所。


 ここは良いタイミングだ。ホテルに戻ろう。

 しかし──。


「まぁ、待て。美穂に一言挨拶をしてからにしたい」

「美穂? 誰ですか? その人物は?」


「私に日本を案内してくれた女性だよ。私の大切な女性だ」

 別れるにしても美穂には一言お礼を言わなければならない。


 しかし、美穂は一向に帰って来る気配がない。

「しかし遅いな。美穂、何をやっているんだ?」

「スマホにかけてみてはいかがですか?」


 トーマスが言う。確かにスマホにかけてみるのは良い手だ。

「そうだな。かけてみるとしよう」


 ルーカスは聞いていた美穂の連絡先に電話をかける。

「もしもし、ルーカス王子だな」


 美穂のスマホから見知らぬ男性の声が聞こえて来た。

 ん? 誰だ? 一体。


「ん? 君は誰だ?」

「お前の彼女は預かった。もし返して欲しけれは、今から指定する場所に一人で来い」


 男の口調は高圧的で一方的。

 これは美穂に何かあったとしか考えられない。

「おい。美穂は無事なのか?」

「それは、お前次第だ」


 男は一方的に、美穂と会える場所を指定する。

 これは不味い。美穂は誘拐された。

 ルーカスの身体から嫌な汗が吹き出て来た。


「今、指定した場所に絶対に一人で来るんだぞ。分かったな」

「あぁ、分かった……」

 通話は、そこで切れた。

「どうしました? 王子」


「美穂が誘拐された……」

「何? なんですと?」

「済まない。ビッシュ、トーマス、私に協力して欲しい」


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