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地球儀を見つけて

 ルーカスは服を着替えて小屋へと戻った。

「しかし、この小屋、色々あるな」

 

 ルーカスは小屋の中を見回す。  

 小屋の中は色々な物があるが、中は広い。

 人が一人で寝るのには十分なスペースがあり、天井も勿論ある為、雨風は防げる。

 積み重なった物達。ベビーカーや、子供用の玩具がメインで、枯れた観葉植物が置いてあったりもする。

 美穂は、このお屋敷には中学の時に雇われたと言っていた。

 ならば、この積み上がった物達は、恐らく屋敷の主人か、その子供が使っていた物だろうな。

 ルーカスは、そんな事を思う。

 

 む、これは地球儀では無いか。

 ルーカスは、積み上がった物の中から地球儀を見つけ、それを拾った。

「懐かしい。母上は良く私に講義をしてくれていたな」

 ルーカスは昔の事を思い出す。

 ルーカスの母親の願い。それは国境を無くす事。

 国籍による差別を無くし、国境を廃して移動を自由にする。

 勿論リスクのある行為かも知れないが、犬猫が平気で越えられる国境を人間が自由に越えられ無いのは人道の侵害であると母親は言っていた。

 その事を強く言われているうちにルーカスの夢も、また国境を無くす事になっていた。

 いつしか、国境を無くし自由に世界を移動出来る世の中を作ってみせる。

 ルーカスは、そう願っているのだが。


「あれ、ルーカスさん。銭湯から戻ったんですか?」 

 小屋の扉が開けられ美穂が中に入って来た。「あぁ、良い湯だったぞ」 

「それは良かったです」 

「む? それはなんだ?」

 美穂は『ユニクロ』と書かれた袋を手に持っている。

「あぁ、これですか。これはルーカスさんに合う服は無いかと買ってきたんです」

 確かにルーカスは昨晩着替えた服のままだ。

「おぉ、そうか。丁度服がほしいと思っていたんだ。有り難う美穂」

「いえいえ」

 ルーカスは美穂が買って来た服を袋から出してみる。

 

 うーん。これは……

「美穂、これは子供服だぞ……」

 美穂が買って来た服は、どれも兎に角小さい。

 Sサイズなら、まだ着れるが、これは子供服だ。

「あー! すいません。私、間違えて子供服買ってしまいました〜!」

 財布の事と良い皿の事といい、美穂は、どうやら天然?のようだ。

「ま、まぁ、服なら明日買えば良い。気持ちだけでも、有り難う美穂」

「ううう。すいません。ルーカスさん」

 こういうものは気持ちだけでも嬉しいものだ。  

 まぁ服は着れないが。

「あれ? ルーカスさん。それ地球儀じゃないですか?」

 

 美穂はルーカスが横に置いた地球儀が気になった様子。

「小屋の中に、そんな物あったんですね」

「あぁ、これか。そうだ。地球儀だぞ」

 ルーカスは地球儀を手に持ち美穂に見せる。

「美穂、ここには沢山の国が描かれているだろ」

「はい」

「私は、これを無くしたいんだ」

「えぇ!?」

「良いか。美穂。犬や鳥、動物達は平気で、この国境を越えていく。なのに人間だけが国境を越えられ無い。そんなものは間違っているんだ」

「……」

「私は、国境を無くし世界に本当の自由を取り戻す。それが母上の願いでもあり、私の願いだ」

「……」

 美穂はポカーンと口を開けている。

 まぁ、この話をする時は大体、そういうリアクションだ。

 国境を無くすと言っても母親以外は、それは無理だとか不可能だとしか言わない。

 彼女も、また、そんな事を言うだろう。


「ま、まぁ、私が夢を語ると皆、無理だと言う。だから、君も……」

「素晴しいです!」

「え?」

「ルーカスさん。そんな大きな夢を持っている人、私出会った事がありません」

「美穂……」

「いつか叶えましょう。国境を無くして皆、自由になるんです」

 美穂、君は分かってくれるのか。

「有り難う! 美穂。君は分かってくれるのだな!」

 母親以外で。

 初めて、この夢を肯定してくれる人に出会えた。

 ルーカスは、その事がたまらなく嬉しい。

「あの……ルーカスさん」

 夢を肯定され喜ぶルーカス。

 一方の美穂は頬を赤らめている。

 ん? どうしたのだろう? 

 はっ! しまった。   

 ルーカスは興奮のあまり彼女の両手を握ってしまっていた。

 しかも距離が近い。これは美穂が頬を赤らめる理由も分かる。

「あぁ、済まない。直ぐに離す」

 ルーカスは手を離すがドキドキが収まらない。

「いえ、大丈夫です」

 

 美穂はルーカスの事を気づかってくれたのか、当たり障りの無い返事をしてくれた。  

 小屋の中に気まずい沈黙が流れた。

「そうだ。美穂!」

「はい! なんでしょう?」

「明日、私はファミレスに行きたいぞ」

「ファミレスですか?」

「日本のファミレスはレベルが高いと聞いていた。私はそこで朝ご飯が食べたい」

「い、良いじゃないですか。是非食べましょう!」  

 お互い気まずい沈黙が流れないよう声を上げる。

「うむ。では、明日も頼むぞ。美穂」

「はい。分かりました」

 そう言って美穂は小屋を出ていった。

 


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