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ルーカスを探して(ビッシュとトーマスの冒険)3

「全く、お前、やれば出来るでは無いか」

 トーマスの活躍もあって何とかチラシを配り終えたビッシュ達。

 彼らは、その事を報告する為、玄秀の元に向かっていた。

「いや、しかし、私の技は、敵を殲滅する為にあるもの。あのような使い方は、ちょっと」

 しかし、トーマスは納得してはいない様子。

 全く、頭の固い奴だ。

 二人は浅草にあるパチンコ屋の中へと入って行く。

 ここで待ち合わせするよう玄秀と約束をしていたのだ。

「う、うるさ」

 パチンコ屋の中はパチンコの玉の騒音で、かなりのうるささ。

 早く玄秀を見つけ、外に出よう。

 ビッシュは玄秀のいる台を探す。

「ビッシュ殿、あそこです」

 丁度、店の最奥の台で玄秀がパチンコを打っている。  

 ビッシュは彼に声をかけた。

「玄秀、チラシ配り終えたぞ」

「あぁん! チラシ寿司がなんだって?」

「チラシ寿司では無い。チラシ配りだ!」  

「チラシ寿司?」

「ええい! 外に出ろ! ここじゃ話が通じんわ!」


「いや〜、すまね。玉が出るからつい夢中になっちまった」

 このままじゃ拉致があかないと店を出た三人。

「全く、チラシ配りなら終えたぞ。早く王子の居た場所を吐け」

「それなんだがよ。もう一つ、頼み事を頼まれてくれるか?」

「はい?」

「お前さんのお連れの男。名前はなんてんだ?」

「トーマスだ」

「じゃあ、トーマス、俺のステージの前座を頼まれてくれねーか」

「はい?」

 玄秀の突然の提案にトーマスは困惑の表情を浮かべている。

 しかし玄秀は話を続けた。

「いやぁ、さっきの屋根の上に登るパフォーマンス。俺も外野で見てたんだが、凄いな。あれ。あれを是非、俺のステージの前座でやって欲しいんだ」

「しかし、私の技は敵を殲滅する為に……」 「頼む! ほんの少しで良いんだ。あんたのパフォーマンス披露してくれ!」

 玄秀はトーマスに手を合わせ頭を下げた。

 うーん。これは、この男、この依頼を引き受けるまで下がるつもりはなさそうだな。

 そう感じ取ったビッシュは。

「では、トーマスがパフォーマンスを披露したら、王子の場所を教えてくれるのだな」   

「ビッシュ殿!」

「なーに、トーマス。さっきと同じ事をすれば良いだけだ。簡単だろ」

「しかし……」

「これも王子を見つける為だ。頼まれてやってくれ」

 トーマスは何か言いたげのように言葉を発しようとする。

 しかし、王子を見つけるという任務を出されれば彼も断りきれないのだろう。

「くっ、分かりました……」

 渋々といった感じで、彼は小声で答えた。

「よし! そうと決まれば話は早いぞ。浅草東洋館に来てくれ」

 

 浅草東洋館。落語や漫才など様々な演目が開かれている、昔ながらの歴史ある劇場。

 時には行列も出来る、この館は現在、玄秀の落語の演目見たさに満杯の客が入っている。

 客層は玄秀と同じ年齢層と年配客が多く、若者は、全くいない。

 お客さん達は玄秀の落語が、まだ始まっていない為、お喋りやリラックスした表情を見せている。

 中にはなんで入って来たかも分から無い、寝ている客まで居た。

 このお客さん達に玄秀の落語を更に盛り上げる為、エンジンをかける前座を披露するのが今回のトーマスの役目だ。

「ビッシュ殿、これはなんです?」

 舞台袖にて。 

 巨大な釣り竿みたいな道具の先端に、ビッシュはくす玉を取り付けていた。

「これはな。トーマス、お主が最後に蹴り上げる事で、くす玉の文字が見える仕組みになっておるんじゃ」

「はぁ」

「儂がこれを舞台袖から吊り上げる。お主は最後に、これを蹴れ」

「ちなみに文字はなんて書いてるんですか?」「祝ハッピーニューイヤーじゃ」

「今、日本は六月ですが……」

「細かい事を言うな。兎に角、最後は、これを蹴れ。分かったな」

「わ、分かりました……」

 トーマスは、まだ自分が舞台に出る事に納得いってないのか、言葉に覇気がない。

「トーマス、ここまで来たら覚悟を決めろ。これも王子を見つける為じゃ」

「えぇ、分かってます」

「すいません。トーマスさん。出番でーす」

 スタッフに出番だと言われたトーマス。

 彼は、はぁと、ため息をつき舞台袖から舞台上に上がった。

「行け。 トーマス、お主なら大丈夫じゃ」

 ビッシュは舞台上に上がったトーマスの事を片隅を飲んで見守っている。

 一方、客席は、トーマスが舞台に上がった事で喋るのをやめて、じっと彼の事を見ている。

 音楽が鳴った。トーマスのパフォーマンスが始まる。  

 彼は音楽が鳴ると同時にバク宙を披露。   そして、仲見世通りで見せたように何回転も回転し始めた。  

 観客席から「うぉー」と歓声が上がる。

 そしてトーマスは舞台の下手に移動。

 そして彼は上手に向かって、バク宙で移動を始めた。

 更に熱狂し声を上げる観客達。

「あの芸人やるな」

 舞台袖にいた他の落語達もトーマスの事を褒め称えている。

 ビッシュは、このパフォーマンスを黙って見ている訳には行かない。

 彼は巨大な釣り竿のような物を舞台袖から舞台上に向かって吊り上げた。

 釣り竿の高さは高く、くす玉の位置は天井付近まで上がっている。

 果たして、このくす玉をトーマスは蹴れるのか?

 観客達も、くす玉に気づいて視線を向ける者もいた。

 いよいよトーマスのパフォーマンスはフィナーレを迎える。  

 彼は地面を蹴って跳んだ。

 そして空中一回転。そして──。

 パカーン。

 トーマスの蹴りは見事、くす玉に命中。 

 くす玉から『祝ハッピーニューイヤー』の文字が現れた。

「うぉー、すげー!」

「最高ー!」

 湧き上がる観客達。パフォーマンスは大成功を収めた。



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