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秋葉原へ行こう4

「はぁ、はぁ、疲れた。皿洗いも疲れるものだな」

 皿洗い業務を無事に終えたルーカス。 

 彼は店のテーブルに座り、疲れを癒していた。

「お、お疲れ様です。ルーカスさん」

「で? 佐久間さんは、どうなった?」

「中々、試着室から出てきませんね」

 一体、何をやっているのだろう?

「完璧だ! 完璧だよ、このメイド服」

 店の奥から佐久間の声が聞こえて来る。 

「ん? どうやら終わったみたいだぞ」

「ですね」

「見てくれ。ルーカスさん。吉井さん。完璧なメイド服だ。これで僕のスター性を隠せるよ」

 店の奥からルーカス達の前に佐久間が姿を現す。

 彼はサングラスやマスクを被ったまま、メイド服に身を包んでいた。 

 うん。これは……

「変態だな」

「おっと。辛辣な意見。どうも有り難う。でも、これで僕のスター性を完璧に隠せるよ。どうも有り難う」

 確かに、この姿なら彼の事をスターだと思う物は、どこにも居ないだろう。

「しかし、この姿で街中を歩いて平気なのか?」

「この秋葉原にはメイドが沢山いるんだ。一人位、男でメイド服を着てても大丈夫だよ」

「なるほど」

「でも、サングラスとマスクをしてたら不審者感、強いですよ」

「うーむ。そこだね。万が一警察に職務質問されたら厄介だ。一体、どうするか?」

 佐久間の顔は隠さなければならない。

 ルーカスはサングラスとマスク以外の顔を隠す方法を考えてみる。

「そういえば、浅草で、こんな物を買ったぞ」

 ルーカスは丁度、浅草で買った狐の、お面を取り出した。

「これなら顔を隠せるぞ」

「完璧だ! そのお面、ちょっと借りても良いかい?」

 ルーカスは佐久間に狐の奥を手渡した。  

 佐久間が狐のお面を被ったメイド服を着た男性という完全体になってしまう。

「完璧だ! これで僕の事を佐久間聡だと思う者は誰も居ないよ!」

「良かったな。佐久間さん」

「ほ、本当に上手くいくでしょうか?」

 美穂は、この姿の佐久間に少し疑問が残るみたいだが、ルーカスは、これで十分だと思う。

「よし、では、漫画家のサイン会に行こう!」


 店を出た三人は道を通って歩行者天国のある通りへと出た。

 歩行者天国の通りには、ゲームセンター、電化製品屋、外国人免税店など様々な店が立ち並んでいる。 

「そういえば、佐久間さんって何の漫画のサイン会に行くんだ?」

 ルーカスは佐久間に尋ねる。

 そういえば具体的な漫画の名前は聞いていなかった。

「フフン。僕がサイン会に行くのは『つまようじ一本で異世界無双』の漫画家、西村健吾〈にしむら、けんご〉だよ」

「何!? あの、つまようじ一本で異世界無双の人、サイン会を開いているのか?」

「えーっと、なんです? つまようじ一本で異世界無双って?」

「知らないのか? 美穂、つまようじ一本で異世界無双は、その名の通り、つまようじ一本で異世界無双する大人気ファンタジー漫画だぞ!」

「おー、なんという事だ。 吉井さん、君は、あんな名作を知らないなんて、人生の半分は損しているよ」

「え、そんなになんですか?」

 つまようじ一本で異世界無双。それはにゃんにゃん大戦争に匹敵する程の名作と呼ばれている漫画。

 美穂が、まさか、そんな大作を知らないとは。

「さん、つまようじ一本で異世界無双を知らないなんて、逆に何の漫画を知っているんだい?」

「いや、普通にワンピースとかですけど……」

 ワイワイ盛り上がりながら三人は歩を進める。

「で? そのつまようじ一本で異世界無双のサイン会はどこで行われるのだ?」

「ソフマップの八階だよ。今はオノデン前だから、このまま真っ直ぐ道を進んで行けば着くよ」

 佐久間曰く、この道を真っ直ぐ進んで行けば、ソフマップという場所には着くらしい。 

 今の所、周囲に佐久間の正体がバレる感じはしない。

 このまま、その場所に着いてくれれば良いのだが。

「は、しまった。あれは……」

 佐久間が謎の声を上げる。一体、どうしたのだろう?

「どうしたのだ? 佐久間さん」

「ルーカスさんに吉井さん、あれを見てくれ」

 ルーカスは佐久間が指さした方に視線を向けた。

 三人の前に一人の男がいる。

 その男は小柄で頭に髪の毛は無く、首から一眼レフのカメラをぶら下げていた。

「む? あの男がどうかしたのか?」

「あの男は芸能記者、暴露ばくぞうだよ」

「ば、暴露ぼくぞう!?」

「うん? 美穂、どうかしたのか?」

「ルーカスさん。暴露ばくぞうはですね。スクープの為なら手段は選ばないと言われている芸能記者です。あの男の行く所にスクープありと言われ、必ず大騒ぎになるんです」

 どうやら自分達の前にいる男は芸能記者らしい。

「きっと僕が、この秋葉原にいる事を何処からか嗅ぎつけて、この街にやってきたんだ。くっ、どうしよう?」

「そ、その暴露ばくぞうが、どうしたというんだ?」

「ルーカスさん。暴露ばくぞう相手に僕の正体を隠し通すのは難しい。あの男に正体がバレれば必ず騒ぎになってしまうよ」

 それは不味い。折角、ここまで色々やってきたのに、その努力が水の泡になってしまう。

「ならば暴露ばくぞうに気づかれないよう迂回しよう。そうすれば安全だ」

「僕も同じ事を思ってたよ。ルーカスさん」

 暴露ばくぞうに気づかれない為、ルーカス達は迂回しようとした、その時。

「あら? ちょっと宜しいですか?」

 暴露ばくぞうが、こちらに気づいてしまった。

「は、はい? なんだ?」

「突然、すいません。私、こういう者と申します」

 ネッチョリした声で暴露ばくぞうはルーカス達に名刺を渡して来た。

 その名刺には芸能記者、暴露ばくぞうと書かれている。

「む、芸能人記者が私達に何の用だ?」

「いや、すいません。私、今やテレビやインターネットに引っ張りだこの佐久間聡を探しているんです。貴方達、見覚えとかあったりしませんか?」

「み、見覚えないな……」

 ここで背後にいるメイド服を着た男が佐久間聡だとバレれば騒ぎになるのは必須。

 それはなんとしても防ぎたい。

「可笑しいな。確か、この辺にいると聞いて来たんですけどね〜」

「な、何かの間違いないでは無いか。佐久間聡など見なかったぞ」

「うーむ。そうなんですかね〜」

 暴露ばくぞうは首をかしげたまま、中々、この場から離れようとはしてくれない。

 早く、早く、去ってくれ。

「で、では私達は失礼するぞ」

 三人は暴露ばくぞうの元を去ろうとした。が、しかし。

「あの〜、そこのメイド服の男性にも話を伺っても宜しいですか〜?」

 万事休す。暴露ばくぞうは遂に変装している佐久間に声をかけて来た。

「……」

「おや〜、どうかされました?もしも〜し」

 このままでは佐久間の正体がバレてしまう。

 何とかしないと。

「あら、貴方、どこかで見た気が……」

「あ、あれを見ろ!」

 ルーカスは佐久間とは関係無い方を指差し大声を張り上げた。

「鶏が道端に落ちている、焼き鳥を食べているでは無いか〜」

 勿論、そんな光景は無い。これは暴露ばくぞうの視線を反らす作戦だ。

「な、なんだって〜!? 焼き鳥を食う鶏なんて共食いじゃないか! これはスクープだ!」

 幸いな事に暴露ばくぞうはルーカスの嘘に食いついたみたいで彼の指差した方向にカメラを向けている。 

 今がチャンス。逃げるぞ。

「美穂、佐久間さん。走るぞ!」

 ルーカスは走り出す。それに続いて二人も走り出した。

「あ、こら、待ちなさい!」

 三人は暴露ばくぞうから必死に逃げて行く。

 頼む。サイン会に無事にたどり着いてくれ。


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