秋葉原へ行こう2
「ふむ。次は、ヨドバシカメラに行ってみるか……」
書泉ブックタワーを出たルーカスは、そんな事を言う。
「え? でも家電製品とか買って大丈夫なんですか? ルーカスさん」
「うーん? いや、私は家電製品を見るだけだ。見るのも結構楽しいからな。あれ」
「あぁ、分かります。楽しいですよね」
流石に家電製品は買ってもメルベールに持ち帰る手段がない。
しかし、家電製品は見るだけでも楽しい。 ルーカスはヨドバシカメラに向かおうとする。
「む、あれはなんだ?」
ルーカスの視線の先に一人の音がいる。
その男は身長が高くマスクをしていて、サングラスをかけたまま、周りを気にしているのかキョロキョロと周りを見ていた。
しかし、その男は何か他の人達と違う気がする。
なんというか、オーラが違うというか。
兎に角、隠れたがっている見た目と違って、なんだか目立つのだ。
「あの男の人、どこかで見た気が……」
美穂が言う。彼は恐らく芸能人ではないか。
そう思うようなオーラを彼は放っていた。
「はっ、君達!」
男がルーカス達に気づいた。そして、ルーカス達に近づいてくる。
「君達、僕の事、誰か分からないよね?」
男が尋ねてきた。正直言って誰かは分からない。
ルーカスは、そう返事をしようとしたのだが……。
「あー!この人、佐久間、聡〈さくま、さとる〉じゃないですか!」
美穂は男の正体に気づいたようだった。
「佐久間、聡? 誰だ? それは?」
「ルーカスさん。佐久間、聡は、今、日本で大人気のスターですよ。YouTubeのチャンネル登録者数は二千万を越え、テレビでも引っ張りだこの大スターです!」
「そ、そうなのか?」
「はい。YouTube動画の『パラシュート無しでスカイダイビングしてみた』がバズりにバズって今、若者に大人気のスターなんです」
「パラシュート無しでスカイダイビングなんてして大丈夫なのか?」
言われてみるとどこかで見た気がしないでもない。
しかし、YouTube登録者数二千万人とは凄い数字だな。
「あー、やはり僕のスター性は、隠しきれないんだ〜!」
一方の佐久間は、うなだれて地面に倒れ込んだ。
「ど、どうしたんだ? 佐久間さん」
「大丈夫ですか?」
「そう、君達の言う通り、僕は今、日本で知らない人は居ない程の大スター、それが問題なんだ」
「な、何故だ?」
「実は僕、ある漫画の大ファンでね。その漫画を書いている漫画家さんの、サイン会が、この秋葉原で開かれると聞いて、どうしてもサインが欲しくてやってきたんだ」
「べ、別に良いではないか?」
「それが問題なんだよ!」
佐久間は立ち上がり言う。
「良いかい?僕は、大スターだ。もし正体がバレたら、きっと人だかりが出来てしまう。そうなったらサイン会に行けなくなってしまうんだ」
「そうなのか? 美穂」
「え、えぇ、佐久間さんの行く所には何時も、ファンで人だかりが出来てしまうというのは間違いないと思います」
「な、なるほど」
「僕のファンが押しかけてしまったら、漫画家さんにも迷惑がかかる。だから僕は、サインを貰うまでは正体がバレる訳には行かないんだ」
「ほう」
「でも僕の溢れ出すスター性のせいで変装が効かない。あぁ、一体僕はどうしたら良いんだ!」
確かに、美穂は変装していても佐久間の正体を見破っていた。
どうやら本人は本当に困っている様子。
うーん。どうしたら良いだろう?
「美穂、この辺りに服を買える場所は無いか?」
「え? 確かヨドバシの七階にユニクロがあったはずです」
「うーむ。先ずは、そこに行ってみるというのは、どうだろうか?」
「え? 僕の正体がバレないよう、変装、手伝ってくれるのかい?」
「ま、まぁ、困っている人は見過ごせないし……」
「有り難う! 恩に着るよ」
佐久間はルーカスと、握手を交わす。
「君、名前は?」
「ルーカスだ」
「有り難う、ルーカス。さぁ変装に行こう!」
ヨドバシカメラカメラのエスカレーターを登ってルーカス達は七階へと、たどり着いた。
ヨドバシカメラの七階はフロアの大半が服屋で様々な洋服が置いてあった。
ここなら何か良い服装が見つかるかも知れない。
ルーカスは、そう思った。
「う〜ん。変装に必要な服、変装に必要な服……」
ルーカスと美穂、二人は変装に何か役立ちそうな服を見繕って、それを佐久間に渡す。
「これなんかどうだ?」
「有り難う。着てみるよ」
佐久間は服を受け取り、試着室の中に入った。
「うーん。これじゃ駄目だね。僕のスター性を隠しきれない」
結構厚手の服を渡したが、それでも佐久間のスター性を隠しきれはしないみたいだ。
「こっちはどうです?」
美穂が服を渡す。佐久間が試着室に入り服を着替えた。
チャックのシャツにジーンズ。テレビで見たオタクみたいな格好だ。
しかし、そこは一流スター。オタクみたいな格好をしても結構イケてる。
「駄目だ。やはり僕が、こういうのを着てみても、そういうファッションになっちゃうよ」
「うーむ。では、これを着てみては、どうだろうか?」
ルーカスはダウンジャケットを佐久間に手渡した。
「ダウンジャケットですか? 六月に暑くないですか?」
「美穂、しかし、もう、これしかないぞ」
「分かった、着てみよう」
佐久間はダウンジャケットを着て見る事にした。
「どうだ? 佐久間さん」
「うーん。僕のスター性を隠すんだったら、もう少しダウンジャケットがいるかな……」
「何? その上から、まだ着るのか?」
「もう少し持って来てはくれないか?」
佐久間が言っているのでは仕方ない。
ルーカスはダウンジャケットを三枚位持ってくる事にした。
「持って来たぞ。佐久間さん」
「うん。有り難う」
佐久間はダウンジャケットを受け取り、それに着替えて出てくる。
出てきた佐久間は、三枚のダウンジャケットを重ね着していた。
うん。これは、ただのモンスターだ。
「どうだい? これは結構、僕のスター性を隠せているとは思わんだけど」
「モコモコし過ぎだろ。流石に三枚はやり過ぎだ……」
「く、これでも駄目なのか……」
中々、佐久間のスター性を隠す服装が見つからない。
うーん。どうしよう。
「は、あの服だ!」
佐久間は何か自分のスター性を隠す事の出来る服を発見したみたいだ。
「佐久間さん。どの服だ?」
「あの服だよ。あの服」




