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上野6


「うーん。1980年代の帽子、あるとしたら、ここだな」

 1980年代の帽子を探して、一軒の帽子屋へと、たどり着いたルーカスと美穂。

 その店の店先には、ハット系やハンチング系まで、様々な帽子が並んでいる。  

「入ってみましょうか」

「あぁ」

 ルーカスと美穂、二人は店に入り、店員を呼んだ。

「はい。なんでしょう?」

 店の奥から、帽子を深く被り、小声の女性店員が出てきた。

 引っ込み思案なのかルーカスや美穂とも目を合わせない。

「あの、男の子を探しているんだが、この写真の男の子を見なかったか?」

 ルーカスは女性店員に、写真を見せ問いかける。

「え? ナンパですか?」

「いや、違う。ナンパでは無い。男の子を探しているだけだが!?」

「こ、困ります。私、勤務中ですよ」

「いや、ナンパではないぞ!? どんな勘違いだ?」

 どうやら女性店員はルーカスをナンパだと勘違いしたらしい。

 いや、どんな勘違いだよ。

「困ります。私、彼氏いるんですよ」

「いや、だからナンパでは無い! 私達は、男の子を探しているんだ!」

「とかいって、質問に答えたら、ホテルに連れて行くつもりでしょ。私、それくらい分かりますから」

「いや、どういう思考回路をしているんだ? 私達は、ナンパではないぞ」

 その後も押し問答をくり返すが、女性店員はルーカスがナンパだと思って譲らない。

 一体、どうやったら、自分がナンパじゃないと思って貰えるんだ?

「雪さん。ちょっと宜しいでしょうか?」 

 女性店員への誤解を解く作業をルーカスが頑張っている中で。

 彼の背後から声がした。

 振り返って見てみると、そこには、先程靴屋で舐められるスニーカーを買った紳士風の男が立っている。

「あ、貴方は、藤四郎さん」

 紳士風の男の言葉に女性店員が答える。

 どうやら雪さんとは、この女性店員の事らしい。

 少し邪魔かな。

 そう思ったルーカスは道を開けた。

「藤四郎さん。何故、ここに?」

「雪さん。私は今日、貴方にプロポーズをしにきました」

「え?」

「この革靴、結婚指輪の代わりです。受け取って下さい」

 紳士風の男は、革靴を女性店員に差し出す。

 なんでプロポーズに革靴なんだろう?

「貴方に、この靴を履いてもらって私は、それを毎日舐めたい。そう思って買いました」

 え? 気持ちわる!

「雪さん。お願いです。私と結婚して下さい!」

「藤四郎さん……。 いいんですか? 私、帽子屋ですよ。貴方は不動産会社勤務。あまりにも不釣り合いです」

 いや、帽子屋、卑下し過ぎだろ。

「関係ありません! 愛があれば!」

「私が帽子屋だと分かれば、貴方は家から勘当されかねない。それでも本当に良いんですか?」

 え? なんで、そんな帽子屋に、あたり強いの?

「関係ありません。愛さえあれば!」

 紳士風の男は、女性店員への愛を貫くつもりだ。

 果たして、女性店員の答えは?

「藤四郎さん。お願いします」

「雪さん……」

 晴れて結ばれた二人。これは、めでたい。めでたいぞ。

「雪さん。一生愛し続けます」

「有り難う。藤四郎さん」

 めでたく結ばれ、二人は抱き合う。

 それを暖かく見守るルーカス。

 いや、見守っている場合ではない。

 剛について聞かないと。

「あの〜、男の子を探しているんだが、見なかったか?」

「雪さん。一生愛し続けます」

「有り難う藤四郎さん」

「駄目だ。二人だけの世界に入っている……」

 このままでは剛について聞く事は出来ない。

 さて、どうしよう?  

「ルーカスさん! あれ見て下さい」

 店の外にいた美穂が、左の方を指差している。

 ん?一体、なんだ?

 気になったルーカスは、外に出て彼女が指差している方を確認した。

「あれ。剛君じゃないですか?」

 彼女の指差している方には男の子がいた。  ルーカスは写真を確認。

 確かに、あの子は、剛君の顔に、そっくりだった。

「おぉ! 美穂、あの子が剛君だ。間違いない」

「話しかけましょう!」

 ルーカスと美穂、二人は帽子屋を後にして剛に声をかけようと彼に近づく。

 しかし、剛は知らないサングラスをかけた男と喋っていた。

 あの男は一体誰だ?

「えー、本当に1980年代の玩具があるんですか?」

 剛がサングラスの男に言う。

「あぁ、そうだ。だから、おじさんと一緒に来よう」

 そう言ってサングラスの男は剛の手を引っ張る。

 ルーカスの心の中で嫌な予感がした。

「あれは、誘拐ではないか?」

 剛の母親曰く、彼女は離婚していて、一人で子供を育てているらしい。

 という事は、今、剛の手を引っ張っている男は完全に見知らぬ男性じゃないか?

「ルーカスさん。一応剛君の知り合いって可能性もあります。慎重に声をかけましょう」

 美穂の言う通りだ。

 ルーカスは、少し離れた場所にいるサングラスの男に声をかけた。

「あの、済まない。ちょっと良いか? その男の子、母親が探しているんだ。話を聞かせて……」

「!」

 ルーカスの声を聞いた途端、サングラスの男の表情に焦りの色が見えた。

 そして、次の瞬間。剛を抱えて走り出す。


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