上野5
「うーん。色々なTシャツ屋を周ってはみたんだが中々見つから無いな」
再び、アメ横に戻って来た二人は剛の母親と再開し、今の剛探しの進捗状況を報告する。
正直言って、剛探しは、あまり上手く行ってはいない。
剛は、どこに行ってしまったんだ?
「そうですか。あの子、本当にどこに行ってしまったのかしら?」
「お母さん。剛君が行きそうな場所、他に心当たりありませんか?」
美穂が再び、剛の母親に問いかける。
「うーん。あ、そういえば!」
剛の母親は何か思い出したらしい。
「あの子、1980年代のスニーカーが欲しいって言ってたわ!」
「え? また1980年代か?」
「そう。あの子、1980年代に目が無くて」
相変わらず変わった趣味をお持ちの剛。
ルーカス達は1980年代のスニーカーを探して店を周る事にした。
「うーん。1980年代のスニーカーが売っていそうな場所は、ここしか無いな」
ルーカスと美穂、二人は一軒の靴屋の前に立っていた。
その店は店の看板がくすんでいて、中の靴達もなんだか古く見える。
もし1980年代のスニーカーがあるとしたら、ここくらいだろう。
「早速中に入ってみましょう!」
ルーカスと美穂、二人は中古の靴が売っていそうな靴屋の中に入る。
店内は、そこそこ広く、店の壁一面に靴が飾ってある。
しかし、やはり古さは隠しきれず、所々店の壁が汚れている。
ここに剛は来たのだろうか?
「すいませ〜ん! 誰かいるか?」
ルーカスは店内は、いないかと声をあげた。
「はーい。なんでしょうか?」
店の中から六十代位の老人が出て来た。
性別は男。腰が曲がっていて、杖を付きながら歩いている。
顔の辺りには白髪の髭が生えていて、まるでサンタクロースみたいだった。
「お客さん。なんでしょう?」
「済まない。男の子を探しているんだが、見なかったか?」
「はい? なんですか?」
老人店員は、耳が遠いらしく、ルーカスの声は届いていない。
これは不味い。もっと、声を張り上げないと。
「済まない! 男の子を探しているんだ。この写真の顔の子供を見なかったか?」
「はい? 舐められる革靴を探している? お客さん。変わった趣味をお持ちだ」
「違う。そんな物は探していない! 私達が探しているのは男の子だ!」
「舐められる革靴? お客さん。変わった人だね〜」
「私の話を聞いているのか!?」
その後も何回問いかけても、舐められる革靴と勘違いされてしまう。
いや、舐められる革靴ってなんだよ?
「違う。探しているのは革靴では無い男の子だ!」
「舐められる革靴ね。こっちだよ」
え? 舐められる革靴あるの?
「この棚、全部、舐められる革靴だよ」
老人店員が案内した棚には、びっしりと革靴が置かれている。
「いや、こんなに舐められる革靴があるのか!
? 本当に舐められるのか?」
「あぁ、舐められるとも。例えば、これ」
老人店員は棚から一足の靴を下ろした。
「これはストロベリー味。舐めるとイチゴの味がするね」
「ストロベリー味!? そんな革靴聞いた事ないぞ」
「後、レモン味とチョコレート味なんてのもあるよ」
「凄い品揃えだ……」
舐められる革靴。少し気になってきたが、今は、そんな物を探している訳では無い。
早く、剛について聞かないと。
「剛君っていう男の子を探しているんだ。見覚えないか?」
「ブルーベリー味? お客さん通だね〜」
「いや、どういう耳をしているんだ? あんたは!?」
この老人店員に、聞くだけ無駄なのか?
「君、後がつかえているんだ。聞きたい事が終わったなら変わってくれないか?」
ルーカスが頑張って老人店員に剛の事を聞き出そうとしている時。
背後から声がした。
後ろを振り返ると、そこに居たのは、三十代の紳士風の男。
どうやら、この人も老人店員に聞きたい事があるらしい。
「あー、済まない。お先どうぞ」
老人店員に剛の事を聞き出すのは、もう少しかかりそうだ。
そう思ったルーカスは紳士風の男に順番を譲る。
「店員さん。舐める事の出来る革靴はあるかな?」
紳士風の男性は、老人店員に、そう問いかける。
え? この人、舐める事の出来る革靴探してんの?
まさかの人物の登場に困惑するルーカス。
「はい。こちらの棚、全部が、それだよ。何する?」
老人店員は棚のある場所を紹介する。
「ウイスキーに浸したイチゴ味場はあるかな?」
そんな味あるか。
「はい。こちらになるよ」
え? あるの?
まさかのウイスキーに浸したイチゴ味の革靴があった。
「おぉ、これだ。私が探していたのは、これだ」
お目当ての革靴を見つけて紳士風の男は喜びの表情を見せている。
「これを彼女にプレゼントしてプロポーズするんだ」
辞めといた方が良いぞ。絶対。
「はい。五千円になります」
紳士風の男は老人店員に金を払い店を出て行ってしまった。
ルーカスは聞き取りを再開する。
「ふむ。店員さん。剛君という男の子を探しているんだ。心当たりは……」
「ワインに浸したバナナ味だね。この靴になるよ」
「いや違うぞ!? どんな耳をしているんだ?」
「結局、あの、お爺さんはなにも知らなかったな」
三度、アメ横に戻って来たルーカスと美穂。
結局、あの老人店員は剛について何も知らなかった。
まぁ、仕方ない。次だ。次。
「あ、剛君の、お母さん」
ルーカス達と別れて一人剛を探していた、剛の母親がルーカス達と合流する。
ルーカスは、剛の母親に現状を報告した。
「そうですか。あの子、本当にどこに行ったのかしら……」
剛の母親の表情が更に暗くなった気がした。
そろそろ剛を見つけないと。
「お母さん。他に剛君が行きそうな場所ありませんか?」
美穂が剛の母親に問いかける。
「あ、そういえば……」
剛の母親は、また何か思い出したらしい。
「あの子、1980年代の帽子を探していたわ」
「また、1980年代ですか……」




