上野4
「うーん。この店にはTシャツが大量に売っているな」
Tシャツ屋を探し回って上野をウロチョロしていたルーカス達。
彼らは一軒のTシャツ屋へと、たどり着いた。
その店には店先に大量のTシャツがハンガーラックに飾ってあって、店の天井付近にも大量にデザインTシャツが飾ってある。
店の中にもTシャツしか見えないので、まさにTシャツ屋という感じだ。
「美穂、この店に剛君が来てないか聞くとしよう」
「はい」
ルーカスと美穂、二人はTシャツ屋の中へと入る。
そんなに広い店では無い店内は、Tシャツしか売っておらず、Tシャツ専門店という感じ。
その代わり、動物の絵から、英字プリントされたTシャツまで、様々なデザインのTシャツが売っていた。
店内には今の所一人しか従業員はおらず、その男はレジで何やら伝票を書いていた。
話しかけるなら、この男しかいないな。
「あの〜、すみません。ちょっと良いか?」
「はい、なんでしょう?」
「ちょっと聞きたい事があるんだ。男の子を探している。この子なんだが……」
ルーカスは写真を出して男性従業員に見せようとする。
「お客さん。うちはTシャツ屋ですよ。もし聞きたい事があるなら、Tシャツを買ってからにして下さい」
男性従業員は、ルーカスに言った。
なるほど、この店はTシャツを買わないと駄目なのか。
「そ、そうなのか。それは失礼した」
Tシャツを買わないと質問出来ない以上、買うしかないだろう。
ルーカスは店内を見渡し、買っても良いTシャツを探す。
「うーん。どれが良いTシャツなんだ?」
ルーカスは店内を探すが元々、そんなに服には興味はない為、中々買っても良いTシャツが見つからない。
さて、どれにしようか?
「気に入ったデザインとかないんです?」
「うーん。どれも同じに見えるな」
「お客さん。良いTシャツの見分け方、教えましょうか?」
男性店員がルーカスに、言う。
「なに? そんな見分け方あるのか?」
「えぇ、勿論、ありますとも」
正直、どれも同じものに見えるルーカスには願ったり叶ったりの言葉だ。
早速、店員に良いTシャツの見分け方を教わる事にしよう。
「お客さん。良いTシャツってのはね……」
「ふむふむ」
「破り心地が違うんですよ」
「はい?」
「良いTシャツってのは、良い破れ方します。一流のTシャツは一流の破れ方をするんです」
「そ、そうなのか」
正直言って着心地とかデザインに関する事とか、そういう話を聞けると思ったら、まさかの破り心地。
本当に、そうなのか?
戸惑うルーカス。
「Tシャツってのは破る為に存在していると言っても良い。俺はそう思ってます」
「いや、着る為に存在していると思うのだが……」
男性従業員はレジから出て店内のTシャツを見回す。
「なんなら、何枚か破ってみせましょうか?」
「いや、別に良いんだが……」
ルーカスの言った事を無視して、男性従業員は一枚の動物が描かれたTシャツを手にする。
「ふん!」
それを破る男性従業員。
もう着れないぞ。それ。
「このTシャツ駄目ですね。破り心地が、まるでなってない」
「そ、そうなのか……」
「これなら上半身裸の方がマシです」
「いや、それはないと思うぞ」
というか、売り物破って平気なのか?
ルーカスの疑問をよそに男性従業員は、もう一枚、Tシャツを手にする。
今度は見知らぬ男性アーティストが描かれたTシャツ。
「ふん!」
それを破る男性従業員。
あぁ、また売り物が破かれてしまった。
「これは中々ですね。買って行かれます?」
そう言って男性従業員は、ビリビリに破かれたTシャツの半分をルーカスに差し出す。
「いや、要らないぞ!? 誰が着るんだ。そんなの?」
「そうですか。ならば、これはどうですかね?」
そう言って男性従業員は、店に置かれている、また別のTシャツを手に取った。
いや、何枚破るつもりだよ。
今度は英字プリントの文字が描かれたTシャツを手に取り、それを破ろうとする男性従業員。
「ふん! ふーん。ふん!」
しかし、今度のTシャツは中々破れそうにない。
「くそっ! 何故、破れない!」
「いやいや。無理に破らなくて良いぞ!」
「いえ、俺のTシャツ破り道にかけて絶対、破ってみせます!」
「何? Tシャツ破り道って!?」
困惑するルーカスをよそにTシャツを破ろうとする男性従業員。
しかし、Tシャツは中々破れようとしない。
「くそっ! 何故だ。何故破れないんだ!」
男性従業員は顔に血がのぼっているのか顔が紅潮している。
「も、もう辞めてくれ! 倒れてしまうぞ」
「もう少し。もう少し。力を込めれば……」
自分が倒れそうになるもお構いなしに、Tシャツを引き千切ろうとする男性従業員。
誰でも良い、誰か彼を止めてくれ。
「店の商品に何をしているんだい!」
突如として、店の奥から年配の女性店員が現れ、男性従業員の頭を引っ叩く。
その衝撃は凄まじいらしく、男性従業員は思わずTシャツを破るのを止めた。
「かぁちゃん。何をするんだ?」
「何をするんだじゃないよ! 店の商品は破るなって、いつも言ってるだろ!」
どうやら店の商品は、やはり破っては駄目らしい。
それはそうだろ。
「かぁちゃん。違うんだ。これは理想の破りを見つけるTシャツ破り道で……」
「そんな道ないに決まってんだろ。寝ぼけた事言ってないで、とっととTシャツ売りな!」
「あの〜 ちょっと良いか?」
このまま二人の喧嘩を見ていては拉致があかない。
ルーカスは話が通じそうな母親店員に声をかける事にした。
「ん? なんでしょう? お客さん」
「いや、実は人探しをしているんだ。この顔に見覚えはないか?」
ルーカスは母親店員に剛の写真を見せる。
「うーん。この店には来て無いですね〜」
母親店員曰く、剛は、この店には来てはいないらしい。
なるほど、ならば次の店に行こう。
「そうか。有り難う。話しを聞いてくれて」
「この子の事を探してるのかい?」
「そうなんだ。中々見つからなくて」
「それは大変だね〜」
剛を見た事無い以上、この店に長居するつもりは無い。
写真を見せ終えたルーカスは店を出ようとする。
「またの来店、お待ちしています〜」
それを暖かく見守ってくれる母親店員。
「あぁ〜、お客様。一緒にTシャツ破り道、極めましょうよ!」
謎の誘いをしてくる男性店員。
「あんた! Tシャツ破り道なんて無いって言ってるだろ!」
案の定、母親店員に怒られている。
本当に、なんなんだろう? Tシャツ破り道って。




