上野3
「ううむ。中々、剛君の情報は得られないな」
再び、デパートに向かって歩き始めたルーカス達。
剛を探してはいるが全然見つからない。
一体、彼はどこに行ったのだろう?
「あの居酒屋で子供を見なかったか、聞いてみます?」
美穂は、さっきとは別の居酒屋を指差し言った。
確かに、もう一軒位なら聞いてみても良いかも知れない。
「よし、聞いてみる事にしよう」
ルーカスと美穂、二人は目の前にあった居酒屋の男性店員に剛を見なかったか聞く事にする。
「はい。いらっしゃいませ。何にしようしょう?」
「いや、私達は子供を探しに来たんだ。この子見なかったか?」
ルーカスは写真を店員に見せた。
「うーん。人探しですか。店の中探してみますね」
「いや、子供が一人で居酒屋の中に入るとは考えにくいだろ。この辺りを通りかからなかったか聞きたいだけなんだが……」
「ちょっと、お待ち下さい!」
そう言って店員は店の中へと入ってしまった。
「うーん。先に行きづらいな」
「少し待ちますか」
美穂の言う通り、ルーカスは店員が戻って来るのを待つ事にした。
しばらくして店員が出てくる。
「この人は、違いますかね?」
店員が引き連れてきたのは、四十代くらいのサラリーマン風の男。
明らかに剛ではない。
「いや、写真見たのか!? 五歳位の男の子だぞ。サラリーマンではないか?」
店員が連れて来た謎の男に戸惑うルーカス。
「趣味はゴルフ。スコアは七十切ってます」
謎の男の趣味はゴルフらしい。
「いや、絶対剛君ではないだろう! 連れて来る前に分かってくれ!」
「そうですか……。ちょっと待って下さい! 別の人を連れて来ます!」
そう言って店員は再び店の中へと入っていってしまった。
いや、店の中に居ると思わないから辞めて欲しいのだが。
「どうも〜」
サラリーマン風の男は何故か店に入らずルーカスと美穂に会釈をしている。
いや、気まず! なんで店の中に戻らないの、この人。
気まずい空気が流れる中、店員が新しい人を連れて来た。
「この人じゃないですか?」
店員が連れて来たのは、五十代の頭が剥げている男性。
昼間から酒を飲みまくっているのか顔が真っ赤だ。
「いや、だから五歳位の男の子だって! 明らかに飲んでんじゃん。この人」
「最近、ゲートボール始めました〜」
「知らないよ!」
店員は、また別の人を連れて来てしまった。
「そうっすか。ちょっと待って下さい。今度は、この写真の男の子を連れて来ます!」
そう言って店員は再び店の中へと入っていってしまう。
「あ〜、どうも、私、こういう者です」
「あ〜、有り難うございます。私は、こういうものです」
さっき連れて来たサラリーマン風の男と酔っぱらいの男が店の外で名刺交換をしている。
だからなんで、外に居るの? 中に入らないの?
「この人は、どうですか?」
三人目を連れて来た店員。
彼が連れて来たのは、五十代位のオバァさんだった。
「いや、性別も違うぞ! 五歳位の男の子だって!」
最早、性別も違う人を連れて来た店員。
一体、この人は何がしたいんだ?
「最近の悩みは腰痛です〜」
オバァさんの悩みは腰痛らしい。
いや、知らんがな。
「うーん。店の中に居る人は、店員除いて、これで全員なんですけどね」
「え? お客さん。全員出したのか?」
「そうですね」
「何をやっているんだ? 売り上げとか気にしなくて良いのか?」
店の中の客を全て出してしまった店員。
早く戻してあげた方が良いんじゃないだろうか?
「あれ? 店の中にお客さんが居ない!」
店員は驚きの声を上げている。
いや、出す前に気づけよ。
「ほらほら、店に戻って下さい」
仕方がないのでルーカスと美穂は三人の老人達を店の中に戻してあげる事にした。
「済まない。結構、探したんだが、剛君は見つからなかった」
再び、アメ横に戻って剛の母親に剛が見つから無い事を伝えたルーカス。
「そうですか……あの子、どこいったのかしら、本当」
剛の母親は剛の事が気がかりでしょうがないらしく、ソワソワしている。
うーん。なんとかしてあげたいが……。
「あの、剛君が行きそうな場所、何でも良いから心当たりありませんか?」
ここで美穂が問いかける。
確かに、今は何でも良いから剛の情報が欲しい所だ。
「うーん。あの子が行きそうな場所……あ、そういえば!」
「うん? なんだ?」
「あの子、1980年代のTシャツが欲しいって言ってたわ」
「え? 1980年代のTシャツ?」
「そう、あの子、1980年代に目が無くて」
「また、特殊な趣味をお持ちで……」
とはいえ、剛の情報は手に入った。
1980年代のTシャツ。ルーカス達は、それを探し求めて、Tシャツ屋巡りを開始する。




